スカイハイ・ドラゴンキャッスル――不老不死の法則と空っぽの鍋
「うわぁ……ほんまに城やんけ! しかも、めっちゃゴージャスやん!」
ウチは、一億五千万両の借金を忘れ、思わず歓声を上げた。
巨大な黒曜石と青銅でできた天空竜宮城――スカイハイ・ドラゴンキャッスル。
その周りには、金色の神威の輪が光を放っとる。
孔明龍は、夜空に静止したまま、前方を見つめた。
『この天空竜宮城は、かつて「不老不死の法則」を巡って争った東方の神々が築いた浮遊要塞です。今は無人ですが、その法則の残滓が、極めて強固な自律防衛システムを稼働させています』
「不老不死の法則やと? めんどくさいの持っとるな」
『その防衛システムは、「生命」を持ち、法則を乱す者を自動的に感知し、塵芥に変えます。不用意に侵入すれば、たちまち消滅でしょう』
孔明はそこで言葉を切った。
ウチの背筋に、冷たい汗が流れる。
でも、顔はむしろ、料理人特有の狩りの興奮で歪んだ。
「じゃあ、この要塞を避けて、遠回りするんか? そんな悠長な借金返済ツアー、ウチにはできへんぞ!」
『フフフ。ご安心くだされ。この要塞には、貴女だけが通れる道がある』
孔明龍は、その巨大な頭で要塞の正面の門を指し示す。
「どういうことや……?」
『要塞の防衛システムは、「不老不死」という「永遠の生命」を維持する法則に基づいて構築されています。つまり、「生命」を持つ存在にしか反応しない』
孔明は続けた。
『貴女は今、神王の法則を食らい尽くしたことで、その神威が極限まで消耗し、「空っぽの鍋」と化した。この世界の法則から見れば、「無」、あるいは「法則の穴」と認識される』
「なるほど……神威に反応するんか!」
胸の奥で、カチリと何かが嵌る音がした。
『貴女の神威を極限まで抑え込み、「空っぽの器」として侵入しなされ。要塞は貴女を単なる「法則のノイズ」として見過ごすでしょう。そこには神々が残した伝説の厨具があるはず』
「面白そうやんけ!」
ウチは即座にペガサスから飛び降り、夜空に浮かぶ城塞の門に向かって滑空を始めた。
「待て、ゴッドミシェロン!」
孔明の静かな声が、夜空に響いた。
『城内には、「不老不死」の法則を護る者が、必ずおります。奴らは、貴女の「飢餓」を「食料」と認識するでしょう。ドクロスマホのナビゲートを使いなさい』
「フン! 上等や!」
因縁のあるドクロスマホを受けとった。
「ウチの借金と飢えを、甘く見るな! 最高の獲物のためなら、要塞の法則だろうが、護り手だろうが、全部、ウチの鍋で食らい尽くしたるわ!」
神威の熱をすっかり抑え込んで、空っぽになった。
そのまま、要塞の門へ向かって、音一つ立てんと滑り込んだんや。
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