ゴッドミシェロン、逃走会計!! ―― そして追いつく『蜀の法則』
ウチ、アイル。
逃走開始や!
「電源、永遠に切ったるわ!」
テーブルにドクロスマホを叩きつけ、踵を返した。
最高級の中華レストランの豪華な扉を蹴破り、夜の蜀の都大路へ飛び出す!
『逃げることは、「自由の放棄」です!』
背後から、ドクロスマホのけたたましい警告音が追ってくる。
その電子音は、もはや「追いかけてくる食材」の悲鳴に聞こえた。
「ほっとけ! ウチの自由は、誰の法則にも縛られへんのや!」
アスファルト(っぽい石畳)を蹴って走る!
全身は疲労困憊やけど、心は軽い。
もう孔明の策略に付き合う必要はない。
「孔明会計でお願いします!」と、でっかく叫んどいた。
店員が「孔明様? どなたで?」と戸惑う顔が目に浮かぶが、知ったこっちゃない。
自由! 自由とは、すなわち無銭飲食の権利や!
夜風を切り裂きながら路地へ曲がった瞬間、体内の麻辣熱が、急激に冷え込み始めた。
「なんや……この冷たさは!?」
全身に鳥肌が立つ。
これは、神王を倒した時に感じた、あの『運命の法則』の残滓と似ている。
路地の奥から、白い光を放つ何かが、音もなく滑るように近づいてきた。
それは、まるで白銀に輝く中華包丁。
いや、ちゃう!
重厚な甲冑を纏った「神廷護衛隊」のリーダーが、さっき炭化したはずの装甲を新品にして、ウチの前に立ち塞がっとる!
「ゴッドミシェロン。お逃げになるのは、神王への『不義』。そして、お会計は『未済』でございます」
冷たい声が、夜気に響く。
「な、なんでお前がここに! さっき、炭になったやろ!」
「神王は解放されましたが、この世界の『理不尽な法則』は、まだ完全に消滅してはおりません。貴女が食らい尽くした『法則の残滓』が、この護衛隊を動かしています」
そして、リーダーはウチの前に、静かに、一枚の伝票を差し出した。
「お食事代、合計:一億五千万両。お支払い、もしくは『次の法則』と戦うまで、この地から『逃走する自由』は永久に凍結されます」
「一億五千万!? 肉まんひとつで三十万両とか、どうなっとんねん!」
ウチの心臓が止まりそうになった。
『桃園の誓い』肉まんから、『無双の呂布』ステーキまで! 孔明のフルコースが、こんな法外な価格やったとは!
「ふざけんな! 孔明が払う言うとったやろ!」
「軍師孔明様は、この伝票に『お支払いは、ゴッドミシェロン様の次の料理魂によって。ただし、逃走した場合は、この世界の法則が回収する』と、但し書きを残されております」
ニヤリ、と護衛隊リーダーが氷のように冷たい笑みを浮かべた。
「つまり、逃げれば逃げるほど、貴女の自由を締め上げる。それが、孔明様の『第三の理:傲慢にして純粋な飢えの回収法則』でございます」
ドクロスマホの警告が、脳内でリフレインする。
『逃げることは、貴女の料理魂が最も嫌う「自由の放棄」です!』
「くそっ、孔明めぇぇぇええ!」
怒りのあまり、全身から、灼熱の麻辣オーラが噴き出した!
「わかった、上等や!」
その場にあった石畳を素手で叩き割り、炎に包まれた虚空の包丁を構える。
「ウチは料理人や! 借金は料理で返す! そして、誰もウチの自由を縛ることはできへん!」
「さあ、護衛隊リーダー! その借金回収の甲冑ごと、まとめて『食らう』たるわ!」
孔明の策にハマったことへの怒り。
一億五千万両という借金のプレッシャー。
そして、次の強大な法則を求める、飢え!
その全てが混ざり合い、ウチは、次の獲物を求める灼熱の狩人になった。
ウチの『自由』は、『理不尽な運命』を、食材にして、さらにデカくなるんや!
麻辣の炎が夜空を焦がす!
ゴッドミシェロンの、命を懸けた借金返済の戦いが、今、始まる――!
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