表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

147/170

孔明会計でお願いします

 ウチ、アイル。

 お一人様で打ち上げや。

 最高級のお店で、オーダーを通した。


『桃園の誓い』 特選肉まん。

『赤壁の炎上』 麻辣火鍋マーラーひなべ

『三顧の礼』 フルコースに、トドメは『無双の呂布』 馬肉ステーキ。


 照明は薄暗く、静かで豪華ごうかな内装は、ウチの煮えたぎる怒りとは正反対やった。

 テーブルを一人で占領し、孔明から受け取った高級酒を一気にグラスに注ぐ。


「ええか、ドクロ」

 

 ウチはスマホを持ち上げ、光る目玉をにらみ返した。


「……もう蜀と関わらん。孔明の策なんか、知るか。

 ほんま、誰のために鍋を煮てたんやろな、ウチ」


『かっかっかっ! マスター、ご冗談を! 今の貴女、まるでフライパンの上のステーキですよ!

 ジューッと魂が焼けて、香ばしいくらいに熱い! そんな状態で最高の食材を逃すなんて、料理人として前代未聞です!』


「最高の食材? アイツらは、ウチを道具として試しただけや!」


 グラスを叩きつけると、静寂がひび割れるように音が走った。


「お前は相棒やろ? 逃げるのを手伝え!」


 ドクロスマホの目がチカチカと不規則な青い光を放ち始めた。


『……マスター。貴女はすでにこの世界の法則を食らい尽くし、その一部となってしまった。逃げられませんよ』


「なんやて?」


『逃げることは、貴女の料理魂が最も嫌う「自由の放棄」です! 貴女が「自由」を求める限り、「次の法則」という名の食材が、貴女をこの世界に引き戻す!』


「アホぬかせ! そんな呪いメニュー、誰が注文したんや!」


 ウチはテーブルを蹴り上げ、ドクロスマホをつかんで立ち上がった。


「電源、永遠に切ったるわ。二度と目ぇ覚まさんようにな」


『おやめなさい!』


 ドクロスマホが、初めて悲鳴を思わせる高い電子音を上げた。


 残りの酒を一気に飲み干した。


「わかった。元気でな!」


 ウチはドクロスマホを置いて、外へ駆け出した。

 もちろん、お会計は蜀に回してもらうのは忘れてへん。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ