【神王の絶対領域】灼熱の麻婆豆腐 vs. 理不尽な運命
ウチ、アイル。
この冷えた体を、もう一度燃やしたるわ。
霊草の鎖はウチの魂のオーラを吸い取り、全身を冷やし続けとる。
でも、屈辱と怒りだけは、心臓の奥で煮えたぎる麻辣のように、沸騰しとった。
「ふざけんな! ウチの料理は、誰かの奴隷になるために作ってるんやない! 自由に作り、心を満たすために存在しとるんや!」
玉座に座る神王は、ウチの怒りの咆哮を前にしても、微動だにせえへん。
その瞳は冷たく、ウチの存在をただの「食料」として品定めしとった。
「その『自由』とやらが、貴様をこの場に連れてきたのだ。ゴッドミシェロンよ。貴様の料理は、我々神々にとって最も都合の良い『救済の毒』となる。理性を破壊せず、意志を奪わず、ただ永遠の至福を約束する。これ以上の『完璧な貢物』はない」
神王が、悠然と手を掲げた。
「神廷護衛隊。奴に料理をさせよ。さあ、我に永遠の糧を捧げるのだ」
甲冑を纏った護衛隊のリーダーが、ゆっくりとウチに近づいてくる。
その全身からは、霊草の鎖と同じ、魂を凍らせる冷たい神威が放たれとった。
「やめろぉ!」
全身の力を振り絞り、鎖から引きはがされた片腕を、虚空へと伸ばしたんや。
『警告! マスター! 極度のプレッシャーと怒りが、料理魂を限界まで高めています! このままでは、魂の崩壊を引き起こします!』
ドクロスマホが、悲鳴に近い電子音をあげる。
しかし、ウチの瞳は、すでに極限の熱狂に支配されとった。
「貢物にする? なめとんか! お前らが司る『理不尽な運命』なんか、この麻婆豆腐で全部、焼き尽くしたるわ!」
その瞬間、鎖に吸い取られ冷却されていたはずの体から、過去最大級の、灼熱のオーラが噴き出した。
全身の毛穴という毛穴から、麻辣の炎が吹き上がり、霊草の鎖を焼き切り始めた。
ジジジジジ……パチィン!
鎖が弾け飛び、ウチは解放された。
玉座に座る神王の顔から、初めて冷徹な笑みが消えた。
「馬鹿な……霊草の鎖を、熱で断ち切っただと!?」
ウチは、炎に包まれた両手を虚空で合わせた。
そこに、調理道具も食材もない。
あるのは、「神王への怒り」と「料理魂」だけ。
グオォォォォオオオ!
怒りと共に解放された料理魂が、空間の理をねじ曲げる。
虚無の空間から、炎を纏った真紅の中華鍋が顕現し、その中には、煮えたぎる真紅の麻婆豆腐が、今まさに完成したかのように出現した。
『ゴッドミシェロン・怒りの創作!!』
神王めがけて、ウチは渾身の灼熱ブレスを、麻婆豆腐ごと吐き出した。
「神王だろうが、理不尽だろうが関係ない! ウチの料理は、誰にも支配させへん!」
炎の塊が、豪華絢爛な謁見の間を溶かし尽くしながら、玉座の神王に迫る――!
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