飲みすぎ注意報発令! 神廷護衛隊、ただいま包囲中!
ウチ、アイル。
こんなん呑まなやってられんわ。
蜀、成都。
闘技場の興奮と、孔明の壮大な策の衝撃が冷めやらぬ夜。
孔明の用意した豪華な控え室を飛び出し、夜の成都の屋台街へと潜り込んだ。
派手なオーラを封印し、フード付きのマントで顔を隠す。
「大将、一番キツいのをくれ!」
ウチは屋台の隅に座り込み、目の前に置かれた巨大な竹筒に入った酒を一気にあおった。
「おい、スマホ。お前、ほんまにウチの相棒か? さっきから孔明の策にビビッて、『無理ゲー』とか弱音ばっかりやないか!」
ドクロスマホの目が青く光り、低音の電子音声が響く。
『かっかっかっ! ご冗談を、マスター! ビビッてなんかおりませんよ! 私は最高のデータとカオスを愛するドクロ! 孔明の策なんて、貴女の最高のエンディングのための導入ムービーに過ぎません! さあ、もっと荒れて! もっと酒を! そして、最高の毒餌になって! かっかっかっ!』
「やかましいわ! 総入れ歯にしたろか!」
竹筒の酒を飲み干し、深く息を吐き出した。
熱い吐息は、冷たい夜の空気に麻辣の香りを広げる。
「誰かのための料理人なんか、もう辞めや。ウチが、自分の料理で世界を変えたる! 孔明だろうが、神殺しだろうが、麻婆豆腐で魂を救ったるわ!」
大将にお愛想をして、千鳥足の帰り道。
「さすがに吞みすぎや!」
ウチは、夜の帳が下りた路地裏を、フードを深く被って歩いとった。
体内の料理魂が、まだ収まらへん。
「孔明のヤツ……ほんまに許せへん。ウチを試した? ふざけるな。アイツの策に乗るくらいなら、いっそKの『神を食らう者』のところに乗り込んだる……」
思考に沈んでいる、その時。
背後から、複数の人影が、殺気を放ちながらウチを取り囲んだ。
宮廷の武将とは違う、暗く重い鎧を纏い、顔を布で隠している。
「何や、テメェら!」
ウチは反射的に、腰の神罰のエキスに手をかける。
集団のリーダーらしき男が、冷たい声で言い放った。
「探したぞ、ゴッドミシェロン。宮廷での噂は本当だったようだな。貴様のその『神の理』を司る料理は、我々『神廷護衛隊』が厳重に管理する。大人しく捕縛されよ!」
「フン! ウチの料理の炎は、誰にも消させへんのや!」
全身から、酒気のこもったオーラが噴き出す。
リーダーが手を振ると、集団が一斉に奇妙な鎖を投げてきたんや。
鉄ではなく、霊的な毒を持つ薬草で作られた鎖。
オーラに触れた瞬間、バチバチ! と音を立て、ウチの魂を吸収し始めた。
「くっ……この鎖! 力が抜けていく!」
『警告! 警告! マスター、その鎖は命を奪う力を宿しています! 大ピンチだ! かっかっかっ! 面白いことになってきましたよ!』
スマホが軽薄に笑う中、ウチは体勢を崩した。
リーダーは勝利を確信し、冷徹に言い放った。
「抵抗するな。貴様は、宮廷の『神々への貢物』となるのだ。我らが王の、永遠の糧としてな!」
ウチの視界が、一瞬で闇に覆われた。
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