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神になって聖騎士団を配下にしました〜ついでに酒場も城にしたった〜

 ウチの名はアイル。

 今日のツッコミは、まずまずのキレ味や。

「……あんたら、ウチのこと『元荷物持ち』って見下しとったやろ?」


 神々しい光が放たれると、声はその輝きに乗るように場に広がった。


 先ほどまで酒場で「あほくさ」とか言っていた女とは思えん威圧感いあつかんが、空間を支配していく。


 聖騎士たちは一斉に頭を垂れ、よろいを鳴らしながら震えた。

 ヴァレンティアもひざをついたまま、顔を上げられない。


(いやー……マジで効くやん、これ。世界を救うついでに、自分の価値も上げとこ。貧乏根性が染みついとるんやから、仕方ないやろ!)


 宙に浮かぶスマホがピコッと光り、文字を映し出す。


『女神の加護「真実の心」発動中。現在のあなたのステータスは「神」。

交渉成功率は99%。ただし、残り1%は――おでんへの異常な執着によるものです』


「なんでやねん! そこ掘り返すなや!」


 心の中で全力ツッコミしながら、金色の翼を広げる。


 羽ばたき一つで風が巻き起こり、聖騎士たちの震えがさらに強まった。


 ヴァレンティアがおそるおそる顔を上げる。

 その瞳には畏怖いふと同時に、一筋の希望が宿っていた。


「アイル様……あなた様は、まさか……」


「様付けはやめろ。ゾワゾワするわ」


 ウチはピシャリとさえぎった。

 神になっても、ウチはウチや。


「あんたらの神ってわけやない。せやけど――この力で洛陽や世界をめちゃくちゃにする気もあらへん」


「地獄耳」スキルが、彼女の心の声を拾う。


『この方は……本当に、民を……?』


「ああ、そうや。ウチは《レッドライオン》の酒場を城にする。

そのために、この街ごと守るんや。

あんたらが王のためだけに剣を振るうなら――ウチは民のために立つ!」


 金色の指先で、ヴァレンティアのあごを持ち上げる。


「聖騎士団 《ムーンライトセレナーデ》。

ウチの配下になれ。

民を守るために、一緒に戦え」


 その言葉に、ヴァレンティアの心が揺れた。


 ――王の命令に背けば、裏切り者となる。

 だが民を見捨てれば、聖騎士である意味を失う。


 長い葛藤かっとうの末に諦めていた理想を、目の前の存在があっさり言葉にしたのだ。


 彼女の瞳がうるみ、肩が小さく揺れた。


「……っ! もしこれが夢なら、どうか覚めないでください……!」


 ヴァレンティアは嗚咽おえつこらえ、深くこうべれた。


「聖騎士団 《ムーンライトセレナーデ》……この命、あなたに捧げます!」


 ウチはゆるりと口角を上げ、軽く片手を差し伸べた。


「ほな、これで正式に仲間や。――頼りにしてんで」


 俗っぽい笑みを浮かべながらも、不思議と威厳いげんが宿る。


 その瞬間、宙に浮かぶスマホがピコッと光った。


『おめでとうございます。聖騎士団 《ムーンライトセレナーデ》を配下に入れました。

これであなたは「神」を名乗ることができます』


「ウチ、神になったんか……。で、このモード、いつまで保つん?」


『残り時間は、ご自身の神々しさへの自覚度と、スマホのバッテリー残量に依存します』


「……そんな不安定な神あるかい!」


 そのやり取りを、呂布りょふ董卓とうたく呆然ぼうぜんと見つめていた。


 董卓は、思わずふとった胸を押さえた。

 ――これが……神威か。


 呂布は、初めて自分以外にひれ伏す衝動しょうどうを覚え、奥歯を強くめた。


 二人の猛将もうしょうですら、戦意を忘れ武器を下ろす。


 だがその瞳の奥には、畏怖いふと同時に説明のつかぬ奇妙な色――

 「神」と呼ぶべき存在への戸惑いが浮かんでいた。


 次に彼らがどんな決断を下すのか、誰にも分からない。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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