魂を救う料理―― ゴッドミシェロンの覚醒
ウチ、アイル。
こんなところで終わられへん。
パキィン!
神罰のエキスが砕け散り、七色の毒の液体がウチの顔面に飛び散った。
視界は、混沌に染まった。
「ふむ、これで終わりか、アイル。実に見苦しい敗北だったな」
Kは優雅に調理を続けながら、勝利を確信した。
七色の液体を浴びたウチは、全身から力が抜け落ちていくのを感じた。
あかん、もう立てへん……!
魂が溶解し、理性が快楽の波に飲まれ、虚ろな幸福へと沈んでいく。
その時、頭の中に孔明の嘆きが響き渡った。
『アイルを縛る、その『愛』の 未熟さでござる!』
未熟さ……?
誰かのために、誰かに勝つために、誰かに認められるために――
そうや。
ウチの「愛」は、常に誰かとの関係性に依存していた。
ライバルKの存在、張飛の食欲、孔明の期待。
その一つでも欠けると、ウチの料理は不安定になる。
それは、究極の料理人として、誰かを救う神の料理にはなり得へん!
「枷……。ホンマに、そうやったんやな」
ウチは、七色の毒に濡れた指を、静かに調理台の上のスパイス「究極の創造の原点」と触れさせた。
次の瞬間、全身から、麻辣の熱気でも、毒の快楽でもない、純粋な白いオーラが噴き出した。
ただ、全てを許し、満たし、創造する光。
真の『慈愛』の目覚め!
七色の結界を破壊するほどの炎を吐き出した直後やけど、料理魂は、永遠の静寂のように穏やかやった。
ウチは、Kに向かって笑った。
「あんたの料理は、理性を破壊して意志を奪う。でも、ウチの料理は、意志を失った者に、もう一度生きる喜びを与えるんや」
全身を包んでいたオーラが、一瞬にして「愛と創造の炎」へと変化した。
炎の色は、真紅でも七色でもなく、全ての色彩を内包した、虹色の白。
グォオオオオオ!
割れたビンから飛び散った七色のエキスが、ウチの炎に触れると、純粋な創造のエッセンスへと変質していく。
その純化されたエキスを、調理中の麻婆豆腐へと優しく振りかけた。
『ミシェロンシェフ・エクストリームモードから、ミシェロンシェフ・慈愛モードへ移行します!』
ドクロスマホの電子音声が、闘技場全体に宣告された。
「ヒャッハー! 見ろ、義兄! 慈愛だと!? オレ様の食欲に目覚める時間がきたぜ!」
張飛は、Kの料理で虚ろな幸福に沈んでいたにもかかわらず、その白い慈愛の香に触れた途端、瞳に熱狂的な光を取り戻した。
巨大な観客席が、雪解けのように一斉にざわめいた。
彼らは今、理性を破壊する「静寂の幸福」から、自らの意志で歓喜する「生きた喜び」へと解放された。
「ウチの料理は、あんたの『静寂と孤高』を超える。愛は、縛りやない。全てを許し、統合する力や!」
ゴッドミシェロンになったウチの本気を舐めんなよ!
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