神罰のエキス、暴走! 試練の舞台で響く、孔明の嘆き
ウチ、アイル。
料理の魔神、爆誕。
調理台の上で燃え盛る麻婆豆腐は、すでに食材の姿を留めていなかった。
炎は真紅から七色へと変化し、周囲の調理台を焼き焦がし、結界を激しく揺るがしている。
「ヒャッハー! 見ろ、義兄! ありゃ料理じゃねえ! 宇宙創造のビッグバンだぜ!」
観客席の張飛はハイテンションゲージが振り切れ、虹色の光を放ちながら、結界にぶつかりそうな勢いで咆哮しとる。
関羽は団扇を構え、ウチを見据えていたが、その表情には緊張の色が滲んでいた。
隣のライバルKは、炎を一瞥し、鼻で笑う。
「フン。派手なだけの愚かな混沌だ。それが貴様の限界か、アイル。その熱すぎる愛は、すぐに自己崩壊するぞ」
Kはそう言い放ち、紫色の『悪魔の香』のエキスを、自身の調理中の料理に投入した。
その瞬間、闘技場全体が凍りついたようなオーラに包まれる。
歓喜で満たされていた観客席の武将たちが、一斉に虚ろな、幸福に満ちた表情に変わった。
「あかん! これは、魂の自殺や!」
Kの料理は、理性を破壊するだけでなく、意志そのものまで溶解させとる。
ウチは、最後のスパイス――「慈愛の創造」を表現するために用意した、神罰のエキスに手を伸ばした。
虹龍から学んだ純粋な理を、このエキスに宿らせるんや!
全身の麻辣熱を集中させ、神罰のエキスを収めたビンを握りしめる。
グオォォォ!
ビンの中で七色の光が渦を巻き、エキスが激しく膨張した。
「うわあああ! くそっ、純度が足りひん!」
エキスは暴走し、ビンの中で脈動を繰り返す。
その時、観客席の最上段から、孔明の嘆きの声がこだました。
「それは違うぞ! 超えるべきは―― アイルを縛る、その『愛』の 未熟さ でござる!」
Kは微笑を浮かべ、孔明の嘆きを一蹴した。
「残念だったな、アイル。究極の料理は、静寂と孤高の中でのみ生まれる。そして、貴様は今、その愛という名の枷に足を取られている」
パキィン!
神罰のエキスが、ウチの手の中で限界を迎えた!
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