【覚醒】悪魔の純粋な香 vs. 慈愛の創造(コスモス)
闘技場の鐘が鳴り響き、会場は歓声と武将たちの咆哮で一気に沸騰した。
『料理人どもよ! 予選のテーマは、「百人が歓喜し、千人が失神する、限界突破の創作料理」である!』
武侯祠の広大な闘技場。
中央に巨大な調理台が設営され、周囲に百人分の調理スペースが並ぶ。
ウチは、中央に近い場所に立った。
興奮と闘志で全身の毛穴が開くのを感じる。
「ヒャッハー! 始まったぜ、料理人! オレ様の胃袋が、宇宙の始まりを告げているぞ!」
張飛が観客席で絶叫した。
ウチが調理スペースに入ると、すぐに冷たい気配を感じた。
それは、隣の料理人たちを圧倒する、空間の軋みを伴うものだ。
ライバルK。
あの野郎、ウチのすぐ近くに陣取りやがったな!
静かに調理ケースを開けている。
その手つきは優雅というより、まるで時空を操るかのごとく、一切の無駄がない。
Kは調理台にビンを置いた。
深淵を映す鈍い紫色の液体が中にあり、周囲の光をすべて吸い込んでいた。
「ふむ、予選か。私にとって、ここは辺境の愚者どもの実験場に過ぎん。アイル。貴様の愛と毒の混沌が、私の『悪魔の純粋な香』にどれほど耐えられるか、理性を残せるか、見せてもらうぞ」
Kの傲慢な言葉が響いた。
直後、紫色のビンから極微の靄が立ち上る。周囲の料理人たちの表情が、一瞬で虚ろな快楽に歪んだ。
これは、嗅いだ者の「意志」だけを溶解させる香だ。
悪魔の香が、ウチの脳を冷たく貫く。
以前なら即座に毒に引き込まれていたはずや。
ただ怒りに支配されていた。
でも、今は違うで。
虹龍の七色の蒸気が教えてくれた、「純粋な創造の理」がウチの麻辣衝動と融合した。
この悪魔の香の「破壊の理」のさらに奥。
慈愛の光を嗅ぎ分けられる!
ウチは、全身の麻辣熱を爆発させ、Kに向かって言い放った。
「上等や! あんたの悪魔の香は、確かに純粋かもな。でも、純粋すぎると、優しさがゼロになるねん! 究極の料理は、愛と毒、そして魂を救う新たな進化がないと、ウチの宇宙は満足せえへん!」
神罰のエキスを取り出す代わりに、究極のスパイスセットを調理台に叩きつけた。
「ウチのレシピは、もう混沌やない。あの七色の理が導く、愛と創造のスパイスや!」
ウチの視線は、Kが持つ紫色の液体から離れた。
自身の調理台の中央に置かれた、光を放つような透明な香辛料へと移る。
それは、まだ誰も知らへん、究極の創造の原点だった。
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