最強証明へ! 因縁のライバルKと再会
ウチ、アイル。
ドキドキが止まらへん。
一行は、英雄たちを祀る霊廟、武侯祠の広場へと向かった。
広大な敷地の一角には、巨大な闘技場が設営されている。
それが、「異世界料理トーナメント御前試合」の会場だった。
観客席はすでに人で埋め尽くされ、武将たちと料理人たちが興奮と殺気を放っている。
ウチは、その熱狂の中心に足を踏み入れ、体内の麻辣衝動が跳ね上がるのを感じた。
「うわぁ……これが異世界のガチバトルか!」
張飛は、ステージ上に張られた七色の結界を見て、虹色の瞳をさらに輝かせた。
「あの結界は、料理がもたらすハイテンションや毒性を制御するためのもの。決勝では、限界ギリギリの激突が予想されるでござる」
関羽が説明していると、観客席の通路から、聞き覚えのある涼やかな声が聞こえてきた。
「ふむ、この熱気。毒の理を理解する愚者たちも、続々と集っているな」
ウチの身体が、電流に打たれたように硬直した。
この声と、背後から漂う冷たい香りの気配を、忘れるはずがない。
霊獣・饕餮の肉を奪い去った男。
振り向くと、茶色の革ジャンと帽子を身に着けたライバルKが、愛用の調理ケースを片手に、余裕の笑みを浮かべていた。
「てめぇ!」
ウチは反射的に、腰に下げた神罰のエキスを収めたビンに手をやった。
「ククッ……再会だ、アイル。貴様が、まさかこんな辺境の都で、私と同じ次元のレシピを手にしているとはな」
Kは帽子を傾けて鼻で笑った。
その手には、七色の光を放つ液体が収められたビン。
以前の神罰のエキスに似ているが、さらに研ぎ澄まされた純粋な悪意を感じた。
「ほう? そのビン、純度が上がったようだ。だが、貴様の『神罰のエキス』は、まだ愛と毒の混沌に過ぎん。私のレシピは、すでに『悪魔の純粋な香』へと昇華している」
Kの言葉が、ウチの脳を冷たく貫く。
張飛が興奮で全身を震わせ、蛇矛を握りしめた。
「おい、義兄! オレ様のハイテンションゲージが警告音を鳴らしているぞ! あいつの放つ匂い、最高のステージの裏側の匂いだ!」
関羽は静かに団扇を閉じ、警戒心を最大にした。
「アイル。聞くでござる。この男、Kの料理には、虹龍の蒸気と似た『究極の理』を感じる。我々は、孔明様の思惑通り、この男と対決させられる運命にあるやもしれぬ」
「そんなもん、知るか! 悪魔の香だろうが、創造の理だろうが、ウチの料理で全部ねじ伏せたる! K、テメェの鼻をヘシ折って、ウチが最強やと証明したるだけや!」
全身から、成都の麻辣熱にも負けない闘志の炎が噴き上がった。
闘技場の鐘が、ゴォンと鳴り響く。
『料理人どもよ! 異世界料理トーナメント御前試合、これより予選を開始する!』
美食の熱狂の中で、ライバルKとの因縁の対決が、今、幕を開けたんや!
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