神肉(虹龍)が放つ七色の湯気――推しライブの楽屋の匂いに、張飛が恍惚とした表情で溶ける
ウチ、アイル。
宇宙を感じる女。
孔明特製の魔導馬車は、轟音を上げる魔導戦車と化していた。
限界突破のハイテンションに達した張飛は、七色の光を放つ虹龍をロックオンし、アクセルを完全に踏み込んでいる。
「ヒャッハー! 料理人、見やがれ! ありゃ神の肉だ! オレ様が仕留めて、テメェの究極のレシピの具材にしてやるぜ!」
張飛の全身から噴き出す虹色のオーラが、馬車をまるでジェット機のように加速させる。
ジャングルを抜け、広大な平原を爆走する馬車は、虹龍の巨大な影を追い続けていた。
「待つでござる、張飛! 虹龍は、存在そのものが天変地異を引き起こす! 下手に近づけば、馬車ごと塵になるでござるよ!」
関羽は冷静さを保ちながらも、団扇を構え、即座に戦闘態勢をとった。
ウチはラボから身を乗り出し、初めて見る伝説の獲物を瞳に焼き付けた。
なんや、あのデカさ……!
ただのモンスターとちゃう。
あれはもう、世界そのものや!
虹龍の鱗は、光を受けて七色に瞬き、尾を振るたびに大地に稲妻を走らせる。
その美しさは、畏怖を抱かせる芸術品やった。
張飛の猛烈な加速により、馬車は一気に虹龍の真下へと接近する。
上空を滑空する龍が、平原に巨大な闇を落とした。
「喰らえ! オレ様の怒りの一撃を!」
張飛が蛇矛を振り上げ、魔導馬車の屋根を突き破って、虹龍の腹めがけて突き立てた――その瞬間!
虹龍が、口から七色の蒸気を噴き出した。
それは、毒でも火炎でもなく、世界を構成する原初のスパイスの匂いだった。
「うわあああ! なんや、この匂いは!」
蒸気を受けたウチは、全身が痺れるような、強烈な味覚の衝撃に襲われた。
その匂いは、以前抽出した神罰のエキスに酷似している。
いや、それよりも遥かに純粋で、全てを内包する究極の理。
あかん、これや!
Kのレシピに"愛"が足りひんなら、ウチのレシピに必要なのは、この匂いの純粋さや!
張飛の手が止まり、 恍惚とした表情で七色の蒸気を顔面に浴びる。
「な、なんだこの味は……! 推しライブの楽屋の匂い……いや、宇宙の果てのグルーヴだ! 身体が溶ける!」
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