ヒャッハー、虹龍の肉はオレ様のもの! 限界突破の神狩りバトル!
ウチ、アイル。
ライバルKの登場で、料理魂に火がついた女。
孔明特製の魔導馬車は、霊獣・饕餮の領域を離れ、蜀の都・成都を目指してジャングルを爆走しとる。
馬車は揺れまくるけど、ラボ内の器具は、魔力のおかげでピクリともせえへん。
でも、ウチの心臓は揺れっぱなしやった。
「ちくしょう、あの『K』ってやつ……ウチの獲物を横取りしただけやない。神罰のエキスに、ウチと同じ可能性を見出しとった!」
手に持ったビンの「神罰のエキス」は、光を反射し、七色に輝いとる。
「あの饕餮の恍惚とした表情は忘れられへん。ウチの極上の逸品と、全く同じ次元の快楽をヤツは与えてた。でも、オリジナルはウチや。あのKの顔面をヘシ折って、証明したる」
ウチは、次の決戦のレシピを考え始めた。
トーナメントはすぐに始まる。
残された時間は少ない。
「アイル、落ち着くでござる」
関羽が団扇をパタパタとあおぎながら、ウチの横に座った。
「その『K』のレシピが貴殿のものと酷似しているのは、偶然ではないやもしれぬ」
「え、どういうことや?」
関羽は顎髭を撫で、静かに言った。
「神罰の灯茸の毒の理を理解し、調理技術と結びつけられる者は、この世に二人と存在しない。そして、その理論を唯一、体系化できたのが、孔明様だ」
「まさか、Kは孔明の弟子……!?」
驚きすぎて、思わず声が震えた。
「定かではないでござる。しかし、孔明様の研究成果が流出した可能性は否定できぬ。貴殿は、その知識の原点と戦うことになるやもしれぬ」
「……上等やん。たとえ孔明の最高傑作が相手でも、ウチは負けへん」
目を閉じ、全身の神経を研ぎ澄ませる。
神罰のエキスは、毒性ゆえに即座に理性を破壊する。
だが、究極の料理は、理性を破壊した後、魂に訴えかける優しさを残さなアカン。
あのKの料理には、"愛"が足りひん!
ウチはすぐに、馬車内のラボを荒らし始めた。
食材、香辛料、調味料をぶちまけ、新たなレシピのヒントを探す。
そのとき、運転席から張飛の爆音が響いた。
「ヒャッハー! 料理人、見ろ! 最高の獲物を見つけたぞ!」
張飛が指差す先、馬車は広大な平原のど真ん中に差し掛かっていた。
そして、その遥か彼方には、巨大な七色の龍が、稲妻のように大地を滑空していた。
「なんや、あれは……!?」
関羽の優雅な表情が、一瞬だけ消えた。
「あれこそ、伝説の『虹龍』。孔明様ですらその存在を否定しておった、万物に勝る幻の具材でござる……」
鑑定:天変地異獣。ニックネーム:虹龍。
特記事項:滅多に現れないが、その肉は万病を癒やし、食べた者はパンピーから神へと転生すると伝えられている。
張飛は興奮のあまり、全身を虹色に輝かせ、車体を傾けた。
「ヒャッハー! 料理人! ライバルKをブッ倒すには、神の肉が必要だろ!? 神罰のエキスと虹龍の肉。この組み合わせで、ヤツの鼻っ柱を完全にへし折ってやれ!」
「待て、張飛! あれを獲るのは命懸けで……!」
関羽の静止を聞かず、魔導馬車は猛烈な唸りを上げ、伝説の獲物――虹龍めがけて、さらに加速していくのだった。
「……しゃーないな。究極の料理人として、最高の獲物をゲットしたる!」
新たな目標を胸に、ウチの瞳はメラメラと燃え上がった。
極上の肉を求め、一行はレアモンスターを目指して爆走するんやで!
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