追放された元荷物持ち、神の加護で最強を手に入れる
ウチの名はアイル。
やるときはやるで。
洛陽、王城前の広場。
白き鎧を纏った聖騎士たちが整然と並び、張り詰めた空気が周囲を包んでいた。聖騎士団 《ムーンライトセレナーデ》――その名の通り、月光のような威厳を放ちながら、鋼の剣を手にして立っていた。
中でも、聖騎士長ヴァレンティアはひときわ異彩を放っていた。長い金髪を風に揺らし、鋭い眼光は獲物を捉える獣のようだ。彼女が放つ圧力は、まるで神々の意志そのもの。
「聖なる力を授かりし者よ、異教徒を討ち果たすべし!」
雷鳴のような声が響き渡り、聖騎士たちは一斉に足を踏み出す。鎧が擦れる音を響かせ、神の加護を得た者の力を誇示しながら、戦いの場を整えていく。
ウチは、その姿をじっと見つめ、息を呑んだ。一糸乱れぬ動きは、ただの脅しではない。確かな実力の表れだ。地獄耳スキルが捉えたのは、ヴァレンティアの心の声だった。
『元荷物持ち…この状況をどうするつもりだ?』
その声は、冷静な表情とは裏腹に、迷いと不安をにじませていた。それでも、今、ウチが選ぶべき行動はただひとつ。
「女神の力を使うときやな」
そう呟き、スマホを取り出し、空を見上げる。この力を使うのは最終手段。それは、自分自身がこの世界の『神』に近づくことでもあったからだ。
「行くで――」
ウチの言葉が響くと、スマホが宙を舞い、ひときわ強く輝き始める。空気が熱を帯び、耳鳴りが響き、周囲の音が遠のいていく。それは、もはやただの道具ではない。人の力を超えた、神の力が宿る瞬間だった。
「神命変化、エラウィンの聖刻」
光が空を貫き、ウチの体は眩い光に包まれる。背中からは金色の翼が生え、髪はまるで天使のように舞い上がる。神そのものへと姿を変え、その圧倒的な気配を周囲に広げていく。
その力に耐えきれず、聖騎士たちは次々と膝をついていく。震える手から剣がこぼれ落ち、顔は恐怖に歪んでいた。
「崇高なる神の前に……!」
彼らの口から漏れたのは、祈りの言葉だった。戦う意思を持つ者は、もう一人もいない。彼らが信仰する神の力を、目の前で体現されたことへの、絶対的な畏怖そのものだった。
「……よっしゃ、完璧やな」
ウチは内心で小さくガッツポーズをした。スマホにそっと声をかける。
「な、エンデヴァー。今ならグッズ売れそうちゃう?」
『今、この場でグッズの商談を始めるのはリスクが高いです。それよりも、この状況を利用して交渉を優位に進めるべきかと』
「なんでやねん。……ま、せやな」
ウチは肩をすくめ、ひれ伏すヴァレンティアに視線を向けた。
「さてと、話は聞いてもらえそうやな。次はウチのターンや」
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