味変を極めろ! ハイパーシェフ、ビンビンになる
ウチ、アイル。
南蛮王・孟獲を肴に酒を飲む女。
南中の夜は、瘴気が濃いせいで星は見えへんけど、篝火の熱と、孟獲が持ってきた巨大な肉を炙る匂いで、最高の宴会場やった。
「料理人! 食え! これは血晶石の山の近くにいる、猛毒の芋虫を食って育った、甘露の猪肉だ!」
「ヒャッハー! 毒を食ってるのに美味いんかい! ええやん!」
酔った勢いで孟獲と張飛が互いの武勇伝を語り始めた。
武神同士が食い物で意気投合してんの、ホンマ笑えるわ。
そんなカオスな宴の中で、関羽だけは静かに、火を囲んで座っとる。
アイテムボックスから取り出し、テーブルの隅に置いた、青白く光る神罰の灯茸をじっと見つめていた。
関羽は真剣な眼差しでウチに語りかけた。
「アイル。その灯茸について、重要な役割を伝えねばならぬ」
「え、どういうこと? これ、神殺しの毒やろ?」
「組み合わせる食材で効果が激変するでござる。おっと、これ以上は……」
関羽はそこで言葉を切った。
その表情から、この灯茸がただの毒ではなく、使い方次第で制御不能な兵器になり得ることを悟った。
遠くから、張飛のけたたましい笑い声が聞こえる。
「オイ! 義兄! 南蛮王が最高の美酒を持ってきてくれたぞ! 推しのライブの話を聞かせてやる!」
関羽はすぐにいつもの表情に戻り、団扇をパッと開いて立ち上がった。
「推しは、時に理性を失わせるもの。最高のライブ談義は外せぬでござる」
関羽が去った後、ウチは独り、闇夜に光る灯茸を見つめ続けた。
閃いたわ。
毒が味変する。
その理こそが、最高のスパイスになる。
ビンビンになったウチを誰も止められへん。
「くっそー! やるで! ミシェロンシェフを目指して、神殺しのレシピを進化させたる」
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