ヒャッハー! 最高の獲物で乾杯! 南蛮王が料理人に捧げる夜
ウチ、アイル。
神罰の灯茸をゲットや!
「よし、これで帰れる……! 晩御飯は、すきやきパーティーやで!」
青白く光る神罰の灯茸を手に、思わずガッツポーズ。
ウチの心の中では、もう肉と野菜が踊り狂っとる。
「ヒャッハー! すきやきだとぉ!? よし、俺様が最高の具材を調達してやろう!」
孟獲は相変わらずギラッギラ。
食い物への執念は、瘴気もハイテンションも関係ないらしい。
「よし、帰るでおじゃる!」
関羽が腰から一枚の札を取り出した。
繊細な魔法陣が描かれた、孔明特製の転送札やった。
「え、これって……一瞬で帰れるやつやん!?」
ウチは驚愕した。
「さよう。岩塩鉱の入り口までは馬車で行ったが、危険な内部への立ち入りは、この札を使うよう孔明様から厳命されたでおじゃる」
関羽はひらひらと札を空中に掲げる。
「な、なんでそれを先に言わへんかったんや!?」
「……移動は、旅の醍醐味でござる。それに、張飛は暴走モードだったゆえ、もし事前に知っていれば、この札を使ってライブの最前列にワープしようと試みたやもしれぬ」
関羽は、張飛の背中を団扇でパタパタと叩く。
「おい、義兄! オレ様の推しライブの秘密をバラすんじゃねぇ!」
張飛がハッとした表情で関羽を睨む。
「……もしかして、さっきの落書きまで、転送でこれたんと違うか?」
岩塩の壁にあった『愛と感動のライブ会場』という孔明の道標を思い出した。
沈黙が流れる。
関羽はスーッと目を逸らし、団扇で口元を隠す。
「……推しは、時に理性を失わせるもの。詳細を聞くのは野暮でござる、アイル」
張飛は顔を真っ赤にして、蛇矛を地面に突き刺した。
「ち、ちげーよ! 今、脳内でライブ中だ!」
「もうええわ! ツッコミが三人おらな、間に合わん!」
叫んだその瞬間、転送札が強い光を放ち、四人を包み込んだ。
気づくと、一行は南中の巨大なテントの中に転送されていた。
外は、すっかり夜。
「おや、もう転送されたのか。流石は孔明様の札でござる」
関羽が周囲を見渡す。
「ヒャッハー! 待ちに待った夜だぜ、料理人! 今宵は、わが孟獲が最高の獲物と料理でおもてなししてやろう!」
広大な南中のジャングルを背景に、篝火がいくつも焚かれ、見たこともない珍しい果物や、ウチの顔より大きな肉塊が並んどった。
「うわぁ……ド迫力やな!」
「さて、アイル。すきやきパーティーも良いが、まずはこの南蛮の恵みを味わってくれ!」
孟獲は、豪快に炙られた巨大な肉を差し出す。
一目で分かる、極上の獲物やった。
「負けへんで! 孟獲がゲットした最高の具材に、魔法ぶち込んだる!」
張飛と関羽も酒樽を抱え、夜の祝宴の仕込みを始めた。
こうして激動の岩塩鉱探検は終わり、ウチらの旅は――賑やかな宴へと続いていったんや。
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