「ヒロインに手ぇ出すな!」 虹色デコトラ、一撃必殺
ウチ、アイル。
冒険が、ようやく終わりに近づく。
虹色に輝く張飛――もとい、デコトラ毘沙門天の光を頼りに、岩塩鉱のクレバスを進む。
「あかーん、この光、目が痛すぎて、逆に酔いそうや! 関羽、団扇で虹色の光、ちょっと弱めてくれへん!?」
関羽は宙に浮かんだまま、張飛をパタパタあおぐ。
その様子はまるで夜の遊覧船の船長や。
「推しの輝きは遮るものではないでござる。それに、この瘴気は、この光でなければ貫けぬ」
孟獲は、口に咥えた肉巻きの切れ端をカチカチと噛み砕く。
虹色の光を浴びても全く動じひん。
さすが南蛮王。
「ヒャッハー! 光が強すぎると、飯がよく見えねぇじゃねえか!」
お前は食い物しか見えてへんやろ?
そのとき、張飛が突然、暴走モードから一瞬だけ冷静になる。
虹色の輝きがピタリと止まった。
「……オイ、アイル。何かいるぜ」
張飛が蛇矛を構えた先、洞窟の最深部に巨大な空間が開けていた。
血晶石の巨大な柱が立ち並び、天井からは塩の結晶がシャンデリアみたいにぶら下がっとる。
中央には、青白く光る巨大なキノコ――これが目的の「神罰の灯茸」や。
「あったで!」
駆け寄ろうとした瞬間、柱の陰からゴゴォ! と地を這う音が響いた。
巨大な影が、灯茸を守るように現れる。
人の形をしとるけど、全身が分厚い岩塩と血晶石の塊で覆われた――岩の魔神やった。
鑑定:終末の守護者。ニックネーム、岩男。
特記事項:南中の毒を体内に圧縮している。触れるだけで即死。
デカいやん!
岩男は巨大な拳を振り上げ、ウチらを一閃で叩き潰そうとする。
「邪魔だ! キンキラ岩頭はごめんだぜ!」
琥珀の残像を宿した張飛が、再び全身を最高輝度の虹色に光らせ、爆笑した。
「ヒロインに手ぇ出したら、オレ様が許さねぇ! デコトラ毘沙門天、緊急出航じゃあ!」
張飛は蛇矛を放り捨て、岩の魔神めがけて体当たりした。
ドオオオオオオオオオン!
光速を超える神像アタックが、守護者の胸の岩盤に直撃。
圧縮された毒を体内に抱えた岩の魔神は、光と熱量に耐えきれず、内部から爆発四散した。
岩塩と血晶石の破片が豪雨のごとく降り注ぐ中、張飛はケロッと着地。
背中にしがみついた関羽も、破片ひとつ当たらず安定しとる。
「ナイスランでござる、張飛。やはり、貴殿の突貫力は、この世の全てを粉砕する」
「ま、まさか、体当たりでボスを倒すなんて……」
ウチは茫然自失で、岩男の残骸を踏み越え、青白く光る「神罰の灯茸」にたどり着いた。
「よし、これで帰れる……! 晩御飯は、すきやきパーティーやで」
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