ハイになってどないすんねん! 孔明馬車暴走&団扇武神スカイダイブ
ウチ、アイル。
魔導馬車の運転をマスターしたと思ったら、瘴気に突っ込んだ女。
馬車はものすごい勢いで荒れ地を突っ切った。
さすが「想いを強く持てば応える」という孔明のファンシー馬車。
運転は簡単やったけど、そのぶん振動がエグい。
どれくらい走ったやろか。
周囲の空気が一変した。
熱い。
そして、ドロドロに濃い、甘ったるい匂いがする。
「うわっ、なんやこれ……喉が焼けそうや!」
ドクロスマホが警告音を鳴らす。
鑑定:南中瘴気。
特記事項:生命体の中枢神経を麻痺させる毒性あり。微量の魔力が含まれており、気分がハイになる副作用を伴う。
「張飛は琥珀でハイになっとるんやで!? これ以上ハイになってどないすんねん!」
馬車は、まるで巨大な煮込み料理の鍋の中に突っ込んだみたいに、緑色と黄色の湯気で覆われた。
視界が効かへん。
「しゃーない。一旦止めるか……って、止まれへん!」
ウチの運転に対する「想い」が強すぎたせいか、馬車が完全に暴走モードに突入してもた!
そのとき、瘴気の霧を切り裂いて、巨大な影が馬車の前に躍り出た。
「誰だ! この南中の聖域を乱すバカは!」
響き渡ったのは、地鳴りのごとく太い声。
慌てて馬車を急停止させようとしたが、時すでに遅し。
ドンッ! という衝撃と共に、馬車は何かを跳ね飛ばした。
「あああああ! 人、轢いてもたやんけ!」
急ブレーキで馬車が止まると、目の前に立っていたのは、肌が褐色で、獣の毛皮を纏った巨漢。
片手で馬車の車輪を支えながら、地面に踏ん張っとる。
関羽が言ってた、魔物より面倒な猛将……まさか、コイツか!
南蛮王・孟獲!
あの頃とウチの姿が違う。
どうやら、気付いていないらしい。
「女か。お前、祝融の飛刀がどれだけ恐ろしく貴重か、分かっているのか!」
足元には、魔導馬車が跳ね飛ばした投げナイフが数本、散乱していた。
「ひ、ひえええ……」
「問答無用! この無礼者、毒の泉に沈めてくれる!」
孟獲が片手で馬車を持ち上げようとした、その瞬間――。
「ウオオオオオオオオッ!!」
虹色の光と共に、空から張飛が降ってきた。
「オレ様の馬車に手ぇ出すな! にゃんにゃんデコレーション野郎!」
張飛の蛇矛が、猛将の頭上めがけて振り下ろされる!
その背中には、団扇を持った関羽がしがみついている!
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