任務の裏ミッション――神殺しの毒は爆弾の陽動
ウチ、アイル。
嫌なフラグが立った女。
神様を毒殺するための食材調達って、冷静に考えたら完全にブラックな初仕事やん。
しかも、子龍のウインク一つで、宮廷の最重要エリアへのフリーパスを手に入れた。
相棒が爆炎将軍・張飛とミラクル聖少女・ゆかりんこと関羽。
両手に華……いや、両手に地雷や。
「なんだか知らねえが、このオレ様が弁当運びだと!? 屈辱だ!」
張飛は蛇矛を床に突いて不満タラタラや。
関羽が長い髭をしなやかに撫でながらウチを一瞥した。
「神殺しの食材調達、いったい何を狙うのかね。下手に動けば、我らが共犯と見なされるでござるよ」
「ふっふっふ。子龍は『宮廷の最も深い場所』って言うとった。まずは、一番ヤバそうな宝物庫の第三隔壁からや!」
ウチはドクロスマホの地図を起動した。
画面が淡く光り、ピンがくる。
『最もアクセス困難:帝国宝物庫・第三隔壁』
分厚い扉の前には土人形の衛兵が数十体。
張飛は力任せに突っ込もうとしたが、関羽がピシャリと手を上げた。
「待て。我々の使命は調達であり、強奪ではない。律令に従い、権限を使え」
ウチが巻物を掲げると、土人形たちは無言で道を開けた。
内部は、カチカチに乾ききった空気。
「――うわっ」
魔導金属の焦げた匂いに硫黄が混じった鼻を刺す臭気――セレブ小屋の燃えカスと同じや!
関羽はチラリとこちらを見て、すぐに目を逸らした。
「何を騒ぐ。それは万年草だ。古来、興奮剤の原料に使われる」
――と、冷たい声で言い切った。
棚には、子龍の言う劇薬の材料、巨大な琥珀の塊が並んどる。
その琥珀を固定する台座の隅に、見覚えのある黒い塊――粘土がへばりついとる。
ウチは、こっそりドクロスマホの鑑定アプリを起動。
指先で粘土をこすり取り、画面にかざす。
鑑定:封印粘土。
用途:高圧縮魔力封印材。
特記事項:高熱溶解痕、火薬残留物(高濃度)。
「……やっぱり」
心臓が激しく脈打つ。
犯人は、この宝物庫から材料を持ち出し、……爆弾を作ったんや!
この食材調達の任務は、爆破犯の証拠を握り、真犯人を特定するための陽動!
そのとき、後ろで張飛が、琥珀の塊を一口かじっていた。
顔が、一瞬で虹色に光り、白目をむく。
「……うまい。濃厚な魔力の塊だ。これ喰うたら神様も倒せるわ! オレ様へのおかわりは自由か?」
アホか!
お前が先に死んでまうやろ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




