表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/147

スマホと関西弁とカマボコがあれば、ホンマに世界は救える!

 ウチの名はアイル。

 酒と気まぐれを愛する、ちょっと破天荒はてんこうな女や。

 《レッドライオン》のギルドマスター、エドワードと聖騎士長ヴァレンティアの視線が、孔明の使者に突き刺さる。酒場とは思えぬ張り詰めた空気が流れていた。


「洛陽の攻略に力を貸すか――それとも見て見ぬふりをするか。軍師殿からの依頼は、この二つです」


「……はぁ?」


 ウチはスマホを開く。地図に映る洛陽城は二重の壁で囲まれ、外壁に傭兵、内側に庶民の街、さらに奥に王城。守られるのは王だけ。民は、えさや。


「……クソやな」


 吐き捨てると、使者の声が冷たく響く。


「庶民はおとりにすぎません。洛陽が蹂躙じゅうりんされても、内城さえ残れば問題ありません」


 酒場がざわめく。ヴァレンティアの目が揺れ、拳が微かに震える。


「民を犠牲ぎせいにして笑うなど、断じて許されぬ!」


 エドワードも低く唸り、カウンターを拳で叩きつける。


「フザけんな……! てめぇらの都合で街を地獄に沈めていいわけあるか!」


 あの軍師なら、ほんまにやる。

 袁紹を討つためなら、民はこまにすぎん。


 スマホが点滅する。『真実の心』アプリが映すのは、袁紹の黒、曹操の野望、孔明の計算――誰もが自分の正義だけを振りかざす。


 カマボコをひとかじり、ウチは椅子を蹴る。

 逃げれば楽や。でも誰かが見捨てられ、最後はノーパン勇者が横取りする。


「――ウチは孔明の策に乗る」


「アイル!?」


 エドワードの声が震える。


「民を犠牲にする作戦だぞ!」

「わかっとる!」


 酒場が一瞬静まり返る。視線も空気も、すべてウチに集中する。


「ウチが行く。街を好き放題にさせへん。放っといたら、最後はぜんぶ『曹操のおかげ』にされる」


 ヴァレンティアは息を呑み、やがて小さく笑った。


「なるほど……“策に乗る”とは、孔明殿ごと利用するということか」


 ウチはスマホを胸に押し当て、深く息を吸う。

 守るのは酒場、そして街。戦を終わらせる以外に道はない。


 ドアに手をかけ、口元を吊り上げた。


「ほんまの英雄は――ウチや」


 夜明け前の冷たい風が酒場を通り抜け、窓の外では街の影が長く伸びる。

 ウチは息を整え、口元を吊り上げた。

 心臓の鼓動こどうが耳の奥で響く。

 張り詰めた空気の向こう――戦いは、もう動き出していた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ