【古の調理術】炎帝、禁断のダイナマイト玉を食らう!
ウチ、アイル。
潜入捜査の初仕事が、地獄の料理対決なんて、誰が想像できたやろか。
『カッカッカッ。スキルオーバーオーバークロックの時間は残り1分です。急ぎなさい』
ドクロスマホの不気味な声が、脳内に響く。
ウチの体感ではまだ3分も経ってないのに、あと55秒で、このドS料理長を黙らせなあかんのか!
目の前には、巨大なネギと、見るからに毒々しい色の魔界タコ足 (マカイオクトパス)。
表面には、小さなトゲトゲがびっしり生えとる。
炎帝のゴウは、ウチが手に取った食材を見て、高笑いをしよった。
「その毒タコを調理するのか? 毒消しを怠れば、皇族はおろか、お前自身が即死だぞ! それを調理できるのは、この宮廷で私だけだ!」
「ふっふっふ、甘いわ!」
ウチは大阪人やで? タコ焼きに命を懸けるんや!
包丁を握りしめ、スキルを全開にする。
『超高速・関西おばちゃんカッティング!』
見えへんスピードでタコ足を切り刻んでいく。
トゲトゲの部分だけを正確に、ネギもみじん切りを超えた「フワフワ切り」に。
「……まさか……滅んだはずの……『"ジャンクフード錬金術"』……!?」
ゴウの目が、驚きで見開かれた。
ウチの動きが、この世界のどこかで失われた、常識外れの秘術と重なったような、異様な空気が流れる。
『裏技・猛毒を旨味に変える秘術 (アイル式)』!
ドクロスマホのアプリでこっそり錬成した、「ソースの神が宿った究極の粉」をタコ足に振りかけた。一瞬で、タコの毒々しい色が、食欲をそそる赤色に変化する。
そして、ウチは巨大な中華鍋に油を投入。
ジュウジュウと音を立てるやいなや、タコ足を丸くまとめて鍋に放り込んだ。
ジューッ!
鍋が唸りを上げると、ゴウが反射的にコンロの火力を最大にした。
真っ赤な炎とは似ても似つかない、禍々しい緑色の怪しい蒸気が噴き上がる。
「これは……タコ焼き…か? いや、ただの玉ではない、爆弾だ!」
子龍が、メイド隊の制服に着替えて、冷静に状況を分析する。
『カッカッカッ。タイムアップです。あとは、ご自分の実力で乗り切りなさい』
スマホのドクロが消え、急に力が抜けた。
ウチは、熱々の「魔界タコ足ダイナマイト玉」を皿に盛りつけ、最後に特製ソースをかけた。
見た目は、巨大なタコ焼き、中身は爆弾。
「完成や! 世界を救ったウチの勢いで吹き飛ばしたるわ!」
ゴウに皿を突き出し、腹の中で決意する。
(ここで勝てば、ウチは毒見役ではなく、正式な料理人としてこの厨房の奥まで入れる! 犯人の手がかりは、このドロドロした厨房の裏側にあるはずや!)
ゴウは、包丁をテーブルに突き刺したまま、無言でウチの料理を凝視した。
そして、その巨大な指を伸ばし、ダイナマイト玉を鷲掴みにする。
「食うぞ、女」
ゴウが、その巨大な口に「ダイナマイト玉」を放り込んだ瞬間、玉の表面から、まるで導火線に火が付いたかのように、赤黒い火花が散った!
ゴウの顔が、緑に変わった。
爆死のフラグは、まだ折れてへん!
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