【爆死フラグ乱立】厨房の主はドSな料理長! まさかの『毒味役』から『料理対決』へ
ウチ、アイル。
極悪非道な地獄の厨房に連れてこられた女。
子龍に「ここが貴様の墓場だ」と言われた直後、目の前の巨大な扉が、ズドンッと地鳴りを上げて開いた。
内部は、血と硝煙の匂い――ではなく、スパイスと油がぶつかり合う、炎と爆音の戦場の匂い。
「お前が新しい『毒味役』か?」
厨房のど真ん中に、人がおった。
白いコック帽を深々と被り、体格は張飛に勝るとも劣らない。
顔には大きなバッテンの傷。
蜀の料理長、名を『炎帝のゴウ』。
目つきがヤバい。
包丁の研ぎ方を知ってる者の目や。
ウチは即座に悟った。
こいつ、『食戟』系の漫画から迷い込んできたキャラや!
「毒味役ちゃうわ! 腕を買われた料理人や! ウチ、『世界最強のフードファイター』やで!」
ドクロスマホが耳元で「カッカッカッ。嘘乙」と低く嘲笑した。
シカトや。
炎帝のゴウは、鼻で笑った。
「そのペラペラなファッションで、この戦場に立てると思うのか? ここに並ぶ食材は、すべて皇族の命を繋ぐものだ。お前のような『バグ』が触れれば、すべてが台無しになる!」
お玉で頭どついたろか!
ゴウは巨大な中華鍋をコンロに叩きつけ、グォォォ!と地響きをさせた。
その瞬間、コンロの炎が三メートル以上噴き上がり、ウチのセーラー服の襟元が焦げたような気がした。
「そもそも、毒味役は爆死前提の業務だ。こないだ来た奴は、一晩で顔が緑になって死んだ。その次は、皇帝陛下への忠誠心を見せると言いながら、『即死級の猛毒キノコ』入りスープを飲んで一発昇天だ!」
「ちょ、ちょっと待って! ウチは料理しにきたんや!」
子龍が冷たい視線を投げた。
「残念だが、ここは戦場。料理長の指図は、軍令と同じだ」
「それに、『料理の腕前』とやらが、本当に使えるのか、この場で証明してもらう」
ゴウの目がギラリと光った。
子龍の背後では、お抱えメイド隊員たちが全員、微動だにせず無表情で敬礼した後、子龍が「フフッ」と意味深に笑う。
「料理対決だ。もし負けたら……お前は、この厨房の残飯係だ」
ウチは、ドクロスマホを握りしめた。
脳内で、『最強だった頃の料理スキル』が、ポンコツの体にオーバークロックしていくのがわかる。
「上等や! 関西人が、味には妥協せぇへんの知らんのか!」
ウチは、テーブルに並んだ食材に飛びついた。
見たこともない異世界の魔物肉、猛毒を持つ薬草、そして、やたらデカいネギ!
ま、なんとかなるやろ!
まずは、得意の『魔界タコ足 (マカイオクトパス)・ダイナマイト玉! ~アイル特製ソース添え~』で、このドS料理長を黙らせたろ!
孔明の嫁として、世界の命運を賭けて、『フードファイト』が始まる!
爆死か、勝利か。
運命は、鉄板の上で決まるんやで!
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