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元荷物持ち、黄金の巻物で天下を蹂躙せよ!

 ウチの名はアイル。

 ひかりものに弱い頂き女子。

 孔明の使者が差し出したのは、黄金の巻物だった。その重みに、思わずアイルの心が揺れる。


「これは軍師殿からあなたへの、友情の証しです」


 友情……その言葉に、口元がわずかに歪む。


(そんなもん、とっくの昔に捨てた。仲間ごっこなんて、もううんざりやで)


 しかし、黄金の輝きは無視できなかった。


「……ねぇ。それで、報酬はなんぼ?」


 一瞬、孔明の使者がたじろぐ。


「そ、それは……まずは仕事の内容を」


「先に金の額を言わんと、仕事の話はせぇへん」


 背後でギルドマスターのエドワードが冷たい視線を送り、聖騎士長ヴァレンティアも驚きを隠せない。


「……勇者パーティーの元荷物持ちは、金のために動くのか」


(無いと生きていけへんやんか)


 スマホが淡々と解析結果を表示する。


「交渉術を解析しました。現在、あなたは完全に優位な立場です」


 アイルは腕を組み、堂々と答えた。


「わかった。今回は特別や、そっちの条件を聞いたるわ」

「ただし、一つ約束して。仕事が終わったら絶対に二度と関わらんこと。そして報酬は、この酒場にあるもの全部や」


 ざわめくマスターたち。エドワードは顔色を変え、ヴァレンティアも目を見開く。


「なんや、あかんのか? じゃ、話は無しや」


 きびすを返そうとするアイルの前に、孔明の使者が慌てて一歩踏み出した。


「お待ちください! その条件で、お受けします!」


 アイルは小さくガッツポーズ。


(よっしゃ! この酒場はウチの城や。もう誰にも追放されへん……)


 こうして、自分の居場所を守るため、戦場へ足を踏み入れることになる。そして、行く手には、全裸で世界を救ったと勘違いするノーパン勇者、曹操孟徳そうそうもうとくの姿があった。


「洛陽の勇者……今度こそ、覚えておきな」


 アイルは静かにつぶやく。


「この世界は、あんたみたいなドヤ顔勇者や、孔明みたいな天才の玩具ちゃうんやで」


 その瞬間、スマホの画面が更新された。


「新たなクエスト:洛陽城を陥落せよ――この戦場の主役は、あんたや!」

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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