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第93話:ヴィジャヤ(クイニョン)の戦い

――1人称side――

 

 さて、甘寧らがストゥントレン首長を誅殺(?)し、兀突骨の元に罠だという情報を届けようと決めたところ。当の兀突骨は何の憂いもなくヴィジャヤ(クイニョン)に進軍していた。

 

「当に破竹の勢いだな」

 

「何ですか? 破竹の勢いって」

 

「あれ? 知らないか?」

 

 そう言えばあの諺は三国志の最後の晋と呉の話だったな。そりゃ知らないか。

 

「いや、何でもない。ところで賈詡(かく)、今情勢はどうなっているんだ?」

 

「数分ごとにどうなってるか聞くなんて、戦況がそんなに気になるんですか?」

 

「まぁな。で?」

 

「はぁ……。さっきと変わりませんよ。呂布殿は押していますし、馬超張遼隊も押しています。歩兵も順調に制圧しているようですしね」

 

「藤甲兵部隊は?」


「取り敢えず部隊長達が居ないので待機させてます」

 

「あぁ、土安と奚泥か」

 

「はい。二人共今進乗(箇旧)で兀没卒殿の喪に服してますからね」

 

 そうなのである。孟脩の首を彼らに運ばせた後、自分でやる暇がなかったので彼らに葬儀や喪に服すことを代わりにお願いしたのだ。え? 俺と布岳は喪に服したくないのか、だって? 俺等は喪に服すくらいならもっと建設的な行動を選ぶよ。

 

「そうだな、賈詡(かく)。陣形についての復習代わりに、今の自陣が取ってる戦略を教えてくれないか?」

 

「……今は勉強中、ですよ?」

 

「まぁ復習も勉強じゃないか。よろしく頼むよ」

 

 先程から馬の上に揺れながら兵法や陣の指揮方法等を叩き込まれていた俺は、そろそろ嫌気が差していた。陣の真ん中で学び続けるよりも最前線で気を紛らわしたいと考えて必死に提案する。


「はぁ……仕方ないですね……。なら復習ということで前線の様子を見に行きますか」

 

「よしっ!」

 

「……なんですか?」

 

「い、いや……何にも?」

 

「そうですか」

 

 白けた目で賈詡(かく)がこっちを見る。だが今更行かないという選択肢は無い。俺は前線に遊びに行くぞ!

 

 そんなこんなで前線に到達した俺だったのだが、何も楽しくなかった。寧ろ退屈なまである。何処も押してて手伝う必要もないし、敵は殆ど抵抗もせずに逃げ始める。いや、ピンチになってないのは良い事なんだよ?でもね、その、何というか、張り合いが無いとつまんないというか……。

 

「おう、義弟殿!」

 

 そんな中、馬超が兀突骨に気付いて単騎駆けつけて来る。

 

「義兄殿、何がありましたか?」

 

「いや、ちょっと気になってな……」

 

「とは?」

 

「いや、余りにも敵に手応えが無いから、何か図られているんじゃないか……とか……」


「大丈夫だと思いますが……?」

 

「いや、ただの勘だ。気にしないでくれ。俺は再び敵の方に向かうから。指揮をよろしくな!」

 

「勿論ですよ」

 

 馬超は単なる脳筋とも違う、なんかキラキラしたオーラが出てるからつい敬語になってしまう。まぁ義兄だし大丈夫だよね!()


 だが実際に戦っている将が敵に図られていると感じたのは大きな物だ。実際、賈詡(かく)は先程から眉間に皺を寄せて動かない。南蛮での戦いに碌な計略は要らないだろうと簡単に攻め寄せたが、少し浅はかではあったかもしれない。


「……これは、不味いかもしれませんね」

 

「もし図られているとしたら対応できないな」

 

「考えられる策としては誘い込んでからの奇襲でしょうか。丁度私達首脳陣が川を渡りきった今が最適な時でしょうね」


 その言葉が終わるまでもなく、陣の後方に敵の部隊が現れる。

 

「ほう、北の部隊が鈎行、南の部隊が雁形ですか。これは難しいですね」

 

「……ここは鉄桶での撤退が正解か?」

 

「そうですね、被害を減らして速く動くならそれでしょう」

 

 賈詡(かく)が覚悟を決めたように頷く。それに対して兀突骨は悔しそうに叫んだ。

 

「くそっ、何故見抜けなかったんだ。もう少し気をつけていれば……!」

 

「いえ、警戒していなかった私の責任でもあります。ここは潔く撤退しましょう」

 

「くっ……撤退命令だ! 全軍撤退せよ! 出来る限り被害を減らして戻るんだ!」

 

「御意」

 

 兀突骨の指示を聞いて賈詡(かく)が各軍に通達をする。完全に包囲され、一度占拠したヴィジャヤ(クイニョン)は手放すしか無さそうだった。

 

「……私がお護りします」

 

 慌てて撤退の準備を整えていると張遼が手勢を引き連れてやってきた。こういう時は非常に頼もしいと思える将である。まぁ普通なら歩兵を率いる甘寧とかに頼むんだが、甘寧は今居ないし騎兵で逃げる方が速いからな……。龐徳(ほうとく)隊は今久しぶりに馬超隊と行動しても良いと言ったから、今更呼び寄せるわけにもいかない。というか馬超や呂布が敵に突撃したりしないように龐徳(ほうとく)には宥める役割を担ってほしい。撤退したいのに突撃するとか呂布辺りが如何にもやりそうだ。いや南蛮で強い奴とか求めないでくれよ……。普通に考えて(史実で)中華史上最強とか言われるアンタに勝てる奴居ないでしょ……。


「取り敢えず撤退だ!」

 

 漸く陣まで組み終えたことを確認した俺は自隊と張遼隊の撤退を指示した。今回はそれぞれの将で撤退する予定だ。分散突撃によって敵の包囲網の処理を追い付かなくさせるという作戦である。なんかコンピューターのdoss攻撃みたいだな()

 

 何はともあれ、兀突骨軍は撤退することになったのである。幸か不幸か、彼らの行く手にとある将が待ち構えているとも知らずに……。

咳と痰だけいつまでも止まりませんね…。次の更新までには治るでしょうか。


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