第8話:巂入国
「お前が兀突骨か。なるほど」
「ハハハ……」
あの一隊が巂の端くれ? とんでもない。なんと高定さん御一行だった。交渉しなかったら死んでたよ、社会的に。
「ふむ……哀牢王殿からの紹介状もあるのか。ん? 何だ? 駱駝肉が欲しいのか?」
白い目で見られたけど気にしないことにしよう。そう、スキルのためスキルのため。
「まぁ駱駝肉なら丁度居るし、御馳走してやろう」
駱駝肉が居る……? あぁ、今から捌くのか。豪快な人達だなぁ。
「ありがとうございます。そう言えば、ついでと言ってはなんですが豚肉をどこかから仕入れることはできませんか?」
「お前は肉屋かなんかなのか? まぁ豚肉はもうちょい北に行かないと仕入れられないぞ? 残念だがウチにはない」
なんかさっきからこの人の態度鼻に付くなぁ。まあ全く国交無い国の次期頭領とかどうでもいいか。そこら辺は蛮族だな。……人のこと言えないけど。
さてこの人、記憶によると雍闓に従ったけど諸葛亮の調略に掛かって雍闓を殺した人じゃなかったっけ? 頭領が暗殺されちゃったからその後孟獲が頭領として出てくるんだよね、確か。あんまり仲良くする必要はないかな(適当)
それはさて置き、また宴である。たったの半刻(約1時間)程で宴の準備が整ったのは驚いたよ。宴しなれてるな。流石遊牧民(偏見)
「兀突骨殿はこの後、どこに向かうつもりで?」
宴が始まってからしばらくして高定さんに話しかけられた。駱駝肉? 食ったよ。勿論反撃は習得済みである。ところで呼び方が変わってるけど、宴が始まったらちょっと俺の立場が上がったらしい。なんで?
「あぁ、成都と長安を経由して洛陽に向かうつもりです」
まぁ洛陽は燃えるから長安で旅が終わると思うけどね()
「そうですか、ならこちらを持っていって下さい。おおい、誰か来い! 葡萄酒を持ってきてくれ!」
ん? 葡萄酒? これはもしかしなくてもこの世界に来て初めての酒が飲めるのでは? 今までの宴では12歳だからと酒を飲ませてもらえなかったりしたけど、此処で遂に……?
「こちらが葡萄酒です。朝貢用に持って行って下さい。あ、こちらで現物を飲むこともできますぜ?」
うおおおおおおお! ワインだぁぁぁ!
こうして酒にありついて飲んでいた俺だったのだが……
"特殊状態異常 酩酊 が付与されます"
「あぁ?」
"ステータスが再統合されます"
「なんだぁ?」
"暫くの間判断力が低下します"
「何言ってんだ? こいつ」
「どうかしましたかい? 兀突骨殿」
「え? あぁいや、なんか見えた気がして……」
「飲み過ぎでしょう。こちらでどうぞ寝て下さい。私も寝させてもらいます」
「お、おお、ありがとうございます」
なんか丁寧だな、こっちが素か?
なんだかんだあったけど、その後は其々に別れて寝ることになった。お決まりのように寝込みを襲われたり……はしなかったよ。てっきり夜討ちを掛けられるのかと思ったんだけどね。高定さんは思ったよりマトモな人物だったらしい。
こうして、俺は何事もなく(?)朝を迎えたのであった。
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