第7話:それでも旅は続いていく
――3人称side――
「なぁ、兀突骨の奴、随分頭良くなってないか?」
「数年前の藤甲兵にはドキッとさせられたが……もしかしたら皮被ってただけかもしれないな」
「だが、急に都に行くなんて何がしたいんだ? 今都が大変なことになってるのを知らないんじゃないだろうし」
「いや、アイツのことだから本当に知らないだけかも……」
「いずれにせよ気をつけなければ。奴が新しい南蛮王なのかもしれん」
「俺は雍闓の奴が南蛮王になると踏んでたんだがなぁ」
兀突骨が去ったあと、雲南(昆明)の屋敷ではひたすら議論が交わされたと言う。
――1人称side――
「兀突骨様、仰った場所を部下に調査させたところ、鉱床が見つかりました」
上洛に付いてこさせていた布岳さんが報告してきた。俺が言ったところとはベトナムと中国の国境付近にあるシンクエン鉱床。銅や金が取れる烏戈国内最大の鉱山だろう。
「して、取れた銅や金はいかがいたしますか?」
「そうだな、銅は亜鉛と混ぜて合金に、金は装飾品に。金の装飾品を交州に売れば利益が出るだろう。それと足りない分の鉄は昆明国から仕入れてくれ」
「銅と亜鉛を、ですか? ふむ……分かりました、部下にやらせてみましょう」
よし、Goo●le先生によると、これで丹銅という装備に活用しやすい金属が手に入るはずだ。ありがとう●oogle先生。
「そう言えばあの件はどうなっている?」
「あぁ、例の件ですか。その件については現在準備を進めております」
「そうか、あれはいずれ蜀や呉に高く売りつけるつもりだから準備しておくように」
「蜀はともかく呉、ですか?」
「あぁ、孫堅の所だ」
「あ、孫堅のところですか。ですが、それなら袁術のところに売りつけたほうが良いのでは?」
「まぁ準備しておけ」
「……御意」
何だか納得してなさそうな顔してたがすまんな、そこは知識なんだ。え? どの件だって? 秘密だよ、ヒ・ミ・ツ!
なにはともあれ、俺は巂の勢力範囲に入った……筈なのだが、都市どころか村一つ見つからない。昆明国は村の寄せ集めみたいだったからすぐに行けたんだけどなぁ……。
「伝令です。北に5町ほど行った所に武装した一隊が!」
「そうですか。兀突骨様、私が先に蹴散らして来ましょうか?」
いや物騒だなおい。
「いや、巂は遊牧国家だと言うし、その端くれの可能性がある。交渉を試みよう」
「御意」
次の瞬間、音もなく布岳さんが姿を消す。なんかこの人、ウチ御用達の忍者みたいになってきてないか?