第6話:哀牢王
中平6年(西暦189年)11月
俺は雲南(昆明)の哀牢王さんの屋敷にいる。連日とても友好的な扱いをされるのだが、一向に離してくれない。早く洛陽行かないと董卓のせいで洛陽燃え落ちるのになぁ……。
「なぁ兀突骨殿、今後も我が昆明国と良い付き合いをしましょう」
「ハハハ……」
さっきから哀牢王が喜ばしげにバシバシと背中を叩いてくる。普通に痛いから止めて欲しい。
ただ、実は哀牢王さんが此処まで圧をかけてくる理由はある。滇の雍闓が盛んに勢力を広げているのだ。既に昆明にも数回侵入したらしく、その時に烏戈国が助けないと幾ら昆明国といえども征服される恐れがあるらしい。あれ、雍闓って孟獲の前任者みたいな人だよね? 前任者というか、孟獲の前に一番力を持ってたって人だよね? ヤバくね?
結局、哀牢王さんとは取り敢えず綿織物や綾錦等を烏戈国に売るという条件で支援を約束することにした。どうやら烏戈国には特産品と言える物が殆ど無いらしく、ほぼ全ての品物が不足しているらしいのだ。その上で衣食住の内の衣を手に入れられる事は大きな助けになるだろう。いや、そう考えると烏戈国にも特産品は有ったな。藤甲兵という常識を超えた軍事力()
「いやぁ、有り難い。ついでに幾らか綾錦を朝貢用に差し上げますので、どうぞお納め下さい」
「いや、そんな……。有り難く頂くことにしますが……」
そうやって和やかに語りながら、兀突骨は隙かさず鑑定からの複写でスキルを奪おうとした。だが、どうやら哀牢王さん、マトモなスキルを持っていないようで……ん? 反撃? なんか知らないスキルだな。よし、複写、発動!
"複写に失敗しました"
はぁ……? そもそも失敗とか有るの? コレ。少なくとも前作では確率じゃなかった筈なんだが……。取り敢えずもっかいだ、複写!
"複写に失敗しました"
くそ、何故だ……。いや複写を使ったのは今回が最初だけど、幾ら何でも失敗の確率高すぎないか? コレ一回使うのに結構労力かかるのよ。何ていうか……集中力的な? 少なくとも無限に使えそうな物では無いっぽいし、前作で暴れすぎたせいで修正でも受けたのかもしれない。ともかくこのままだと埒が開かないので、直接聞き出す事にする。
「あの、哀牢王殿。なんか特殊な肉を食べたことはありますか?」
「ハッハッハ、兀突骨殿の食いっぷりはここ昆明まで響いておりますぞ?」
いや兀突骨何やっとんねん。
「いや、あの……」
「しかしそうですなぁ、特殊な肉、といいますと駱駝肉を巂から仕入れたぐらいですぞ。ただ今は在庫がなくて…良ければ巂の高定殿に紹介いたしましょう」
「ありがとうございます」
なるほど、ラクダ肉を食べれば手に入るのか。紹介状を書いてくれるらしいし、お言葉に甘えることにしよう。
こうして、哀牢王から新たな情報を得た兀突骨は次の目的地へ――更に北へと向かうことになったのであった。
歴史考証などは真面目にやっていく予定です。何かおかしいな、と感じた時はどんどん意見くださって大丈夫です。
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なお、過去地名(現代地名)を地名のデフォルト表記として採用しております。雲南(昆明)とは哀牢王率いる昆明国の中心都市の名前が雲南、その都市の現代地名が昆明だという意味です。この国(部族?)だけ地名に関しての呼称が少し紛らわしくなっている事についてはご了承下さい。何卒よろしくお願いします。
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