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第5話:宴と肉

「叔父上、周辺国にナメられなくなるので漢への使者を立てた方がいいと思います」


 翌朝、朝飯を食べたあとに首領屋敷に行って申し立てをしたら叔父さんがびっくりした顔をしていた。「お前敬語使えたのか?」ってどう思われてたんだ、兀突骨。


 だがそんな失礼な驚き方をしながらも、叔父さんは上洛を許可してくれた。上洛する必要はあまり感じないが、見聞を広められるなら行ってきてもいいらしい。意外と常識人である。見送る前に宴までしてくれるというらしいから、好意を有り難く受けることにした。


 そうして俺は数日間ゆっくりと過ごし、出発する前に宴に……参加しようとした訳だが、それまでにツッコみたい事が一つだけある。この国に米は無いのか? 朝も昼も肉だらけの食事を出されたのだ。この分だと宴も肉だらけかもしれない。流石の俺も肉だけで宴を終える気にはなれない。麦も米も無いとかちょっとおかしいだろこの国。


「いや、それは兀突骨様が肉だけ食べてればいいと以前仰ったからでございます」


 つい口に出して言ったら布岳さんにツッコまれた。兀突骨……。


 しかし、そんな兀突骨の選択があながち間違っていたわけでは無いらしい。今朝兎肉を食べたら何故かスキルに回避が追加されたというアナウンスが出たのである。まぁ飽くまでも結果的に間違っていないだけで人間としては間違えている気がするが、それは気にしないことにする。


 試しに空中を押してステータスを開くと、どうやら昨夜食べた牛肉で突進スキル、昼に食べた鶏肉で激戦スキルが手に入っていたとのことだ。今作のゲームシステムだと、肉を食べるとスキルが手に入るのか? スキル関係の話はシステム絡みだろうし、一体どんな仕様だよ。明らかにおかしいのに、開発中に誰も疑問を呈さなかったのか?


 そんな事を気にしていると、遂にその夜に宴が行われた。俺の漢への朝貢をお祝いしてとか言ってたけど、皆それぞれ好き勝手に飲んでいる。そう、お酒だ。俺は未成年だっていうことで飲ませてもらえなかった。皆酔っ払って凄く上機嫌になっているのを見ると、酒が飲みたかったからお祝いしているようにしか見えない。というか絶対に酒が飲みたかっただけだろ。


 まぁ気にしても仕方がないので、何も考えずに宴を楽しむことにする。宴の主人公(の筈)である俺は端の方で一人寂しく色んな種類の肉を食べ比べしていた。多分主役の概念は崩壊していると思う。肉もそれなりに美味しいのは良いのだが、フォークもナイフも何なら箸すら使わずに手掴みで食べるしか無いので、食べ方は完全に蛮族のそれだ。その癖、近くまでやって来る他の大人には「豪快に肉を食べているな」と褒められたのだから解せない。皆さんマナーって知ってます……?


 ともあれ、宴で色々な肉を口にすることが出来た俺は、様々なスキルを手に入れることが出来た。他の大人達には「何故わざわざ色んな種類の肉を集めたのか」って怪訝な顔をされたけど、経験を積むためって答えたら甚く感心されたから大丈夫だろう。嘘は吐いてないし。え? スキルが欲しかっただけだって? ソンナコトナイヨ。


 取り敢えず、宴の成果の確認だ。鰐肉で『急襲』、蛙肉で『盾壁』、犬肉で『不屈』、羊肉で『正気』、馬肉で『突撃』、鹿肉で『鉄蹄』、熊肉で『烈甲』、猪肉で『捨て身』、蛇肉で『剛殺』、以上9種のスキルをゲットした。豚肉はと言うと、南蛮には生息してないとのことで手に入らなかったらしい。どこかで食べれることを願おう。ちなみに不発だった肉もある。魚肉はともかく、猫肉、虫の肉とか……オエェ。


 まぁ、こんな宴も良い思い出である。転生してきたばかりの俺だが、こうして宴を開いてもらえるくらいには、俺もこの世界に馴染んで来たと言えるだろう。最初こそ混乱したものの、自分を無条件に信頼してくれる親族や仲間が居るというのもそう悪くはない。宴を通して賑やかに、それでいて烏戈(うか)国の皆との別れを惜しみつつ、俺は洛陽に向かうことになったのであった。

お肉を食べると強くなる、不思議な世界です。


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