第37話:下手人
「呂玲綺殿!?」
「はっ……! 父上が危なそうだからつい……!」
董卓の身体には十字戦檄が深々と刺さっている。想定外の方向からの飛び道具は流石に対応できなかったらしく、董卓は馬車の上で絶命していた。
「呂玲綺……。心配してくれたのは嬉しいのだが、真剣勝負に割り込むんじゃないと何度も言っているではないか」
「ご、ごめんなさい……」
困ったように眉を下げる呂布と、悪い事をしてしまったように俯く呂玲綺。未だに事態が飲み込めていない者も含め、いつも何してんだよとこの場のほぼ全員が思ったことはご愛嬌である。
「あぁ、董卓のような豪傑と次は何時出会えるのだろうか。本当に強い奴だった」
呂布がそう感傷に浸っていたのも束の間。
「と、云うわけで貂蝉よ」
「はい。呂布様」
「邪魔者も居なくなったことだし、正式に妻になってくれないか?」
り、呂布さん?
「えぇ、良いですよ! 喜んで!」
え、あの、貂蝉さんもどうしたんですか? 皆の前でプロポーズを始めるの止めてくれませんか? 何なら直ぐ側に董卓の屍が残ってますよ? ねぇ?
そんな心の叫びも虚しく、呂布は貂蝉と一緒に屋敷の中に入って行ってしまった。勿論皆は呆れ顔である。あ、李粛だけは失神してるな。てかあんた、さっきは起きてなかった? いつ失神したんだ?
――3人称side――
真っ白い宮殿の広間である男が手紙を広げていた。
「ふむ……李儒の奴、董卓暗殺を防ごうとしてるのか。董卓暗殺を防ぐのは無駄なんだけどなぁ。どうせ最後は王允と呂布に殺されるんだから」
男は退屈そうに手紙を丸め、徐ろにそれに火を点ける。
「まぁそんなもんか。流石にこのままダラダラしているのも不味いだろうし、俺もそろそろ動かないと。ん? いや、それでもいいのか? うーん……。でも、せっかくなら世界統一とかやってみたいよな。どうしよっかなぁ……」
一人で疑問を提起して、一人でそれを解決する。傍から見たら明らかに変人だが、それを指摘する人間は居ない。男が支離滅裂な独り言を呟いていると、部屋に衛兵が入って来た。
「陛下、ご命令の準備が完了致しました」
「え、なんか命令とか言ったっけ?」
「陛下自ら国内の美しい女性を集めるように仰っておりませんでしたか?」
「あぁ、そうだったそうだった。今行くよ」
衛兵に連れられて、男が部屋の外へ出る。男の去った後の玉座では先程男が読んでいた手紙が燃え尽きようとしていた。
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