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第28話:李粛説得

――3人称side――

 

「これはこれは李粛殿。いかが致した?」

 

 ここは王允(おういん)の屋敷。李粛が王允(おういん)と対談している。

 

「……実は先程どこかの者に襲われまして。すんでの所で助っ人が入ったからいいものの、さもなくばこの首が飛んでおりました」

 

「なっ……! 怪我が無いようで何よりですが……。その助っ人とは誰で?」

 

「分かりませぬ。ただ、布岳と言えば分かる人には伝わると言っておりました。王允(おういん)殿は何か心当たりが……?」

 

「ふむ……。李粛殿。今日は何の用で?」

 

「はは、これはまた露骨に話題を逸らしましたな。まぁそうですな、実は今日は董卓(とうたく)様の命令で参ったのです。王允(おういん)殿に養女の貂蝉(ちょうせん)殿をお連れして登城せよ、とのことです。兀突骨(ごつとつこつ)という奴が董卓(とうたく)様に提案した案で、どうやら其奴が貂蝉(ちょうせん)殿の美貌に関する噂を知ったものかと……」

 

「なるほど……。さすれば……」

 

「おお、李粛殿ではないか!」


 李粛と王允(おういん)が話してる中、奥の部屋から呂布が現れる。李粛とは旧知の仲であり、珍しく王允(おういん)宅へ訪問してきた事に機嫌が良さそうである。

 

「おお、呂布殿。いらっしゃったか」

 

「おうよ。今日はどうしたんだ?」

 

「実は……」

 

「ちょっ、ちょっと李粛殿、お待ち下され。実は兀突骨(ごつとつこつ)について話が有るのだが、向こうで話せないだろうか?」

 

王允(おういん)殿。呂布殿にも聞いていただいては?」

 

「なんだ? 兀突骨(ごつとつこつ)殿についてのことか? アイツは今登城しているって聞いたが?」

 

「呂布殿……?」

 

兀突骨(ごつとつこつ)殿はなかなか骨のある奴だぞ。天下について語り合う上で不足のない男だ」

 

「なっ……!」


 想定外の呂布の発言に、李粛が固まる。李粛の中では、兀突骨(ごつとつこつ)董卓(とうたく)の味方をする身元のしれない成り上がり者でしか無かった。それが呂布に接触したというのだから、董卓(とうたく)の毒牙が既に此方にまで伸びてきていると判断しても仕方がない。


 ちなみに、兀突骨(ごつとつこつ)と呂布はちょくちょく会って天下を語っている。兀突骨(ごつとつこつ)が呂布の信頼を得て懐柔するために行っている事であり、また史実の知識をどれくらい頼りに出来るのか兀突骨(ごつとつこつ)が測るために行っている事でもある。

 

「まぁまぁ李粛殿、ちょっと向こうへ」

 

「あ、あぁ……」

 

 困惑する李粛に対し、王允(おういん)が眉を下げながら宥めてこの場を離れさせようとする。呂布に隠して進めている事を呂布の前で暴露されては適わない。一先ず呂布と李粛を離れさせようとした所に、聞き慣れた声が遠くから聞こえてきた。

 

「ち、ちょっと待てぇー!」



 

――1人称side――

 

 馬を走らせてると李粛さんが見つからないまま王允(おういん)さんの屋敷が見えてきてしまった。馬に乗ったまま部屋に突入するのは論外なので、急いで厩に馬を留める。手遅れじゃなければいいなぁ。

 

 走行しているうちに王允(おういん)さんの屋敷の客殿に辿り着いた。中からは呂布の誇らしげな声が微かに聞こえてくる。……大丈夫か?もし李粛と呂布が会話していたら相当にマズい。俺は大声を上げて、部屋の中に飛び込んだ。

 

「ち、ちょっと待てぇー!」

 

「なっ、ご、兀突骨(ごつとつこつ)!?」

 

「お、兀突骨(ごつとつこつ)殿。丁度いい所に来たではないか!李粛殿が先程から兀突骨(ごつとつこつ)殿を探しているようだったぞ!」

 

「呂布殿、頼むからもう喋らないでくれ。ややこしくなるから……」

 

 大声を上げて部屋に入ると李粛さん、呂布さん、王允(おういん)さんで三者三様の反応をしてくれて面白い。

 

「取り敢えず李粛殿。向こうで少し話しましょう。司徒殿は後ほど」

 

「あぁ、分かった」

 

「え、え?」

 

 なんか納得してなさそうな人が居るけど引っ張って会談しよう()

 

「それで、李粛殿」

 

「ご、ごごご、兀突骨(ごつとつこつ)! な、何しに来た! お前は王允(おういん)殿を陥れようとしているのだろう! お、王允(おういん)殿! どうゆうつもりで!?」

 

「落ち着いてくだされ、李粛殿。私は敵ではありませぬ」

 

「は?」

 

「私は司徒殿の計画に協力している身。加担することはあろうとも、害することはございません」

 

「……何の話だ?」

 

「実は司徒殿はとある計画を進めております。呂布と董卓(とうたく)を仲違いさせるのがその計画です」

 

「ほぉ?」

 

「その過程で養女である貂蝉(ちょうせん)殿に一役買っていただくのです」

 

貂蝉(ちょうせん)殿は呂布殿と懇意だと聞くが?」

 

「では、そんな貂蝉(ちょうせん)殿に董卓(とうたく)が手を出したらどうなるでしょうか?」

 

「っ……!」

 

「というわけで、私は董卓(とうたく)への情報撹乱を担当しています。先程李粛殿を守った布岳というのは私の部下です。襲ってきたのは董卓(とうたく)の部下だというのですが何か心当たりはありませんか?」

 

「……」

 

 どうやら一応信頼してくれたようで李粛の瞳が揺れ動いている。きっと李粛自身にも董卓(とうたく)に忌み嫌われているという自覚があるんだろう。

 

 李粛といえば呂布を董卓(とうたく)軍に引き込んだものの、その後に董卓(とうたく)に忌み嫌われるようになったという人である。孫堅などの反董卓(とうたく)連合軍との戦いでは汜水関で3回ほど撃退したのにも関わらずあまり評価されなかった。まぁ4回目で資金絞って突破されたんだけどね()

 

「……まぁいいだろう。お前が王允(おういん)殿の仲間なのは分かった。で、その話を私にしてどうするつもりだ?」

 

「話が早いですね。つまるところ、李粛殿が呂布殿に本当のことを言わないようにするためです」

 

「それでは呂布殿が不幸になるだけだろう!」

 

「いえ、呂布殿の顔をお立てした上の計画なのです。貂蝉(ちょうせん)殿の心は既に呂布殿に奪われております。計画でも実際に董卓(とうたく)貂蝉(ちょうせん)殿を結ばせることはせずに、呂布殿に貂蝉(ちょうせん)殿が結ばれるようにしております。厳夫人にも話を通しておりますし、気を揉むことはありません」

 

「……。はぁ、まぁそういうことにしておこう。董卓(とうたく)に疎まれているのは本当の話だ。その話に乗ることで私にも旨味があるかもしれないからな。呂布殿に本当のことを言わない、そういうことでいいんだな?」

 

「はい。あ、心配でしたら午後に貂蝉(ちょうせん)殿と面会しますので同席なされては如何でしょう?」

 

「……そういうことにしよう」

 

 良かった、なんとか李粛を説得できたようだ。後は午後に貂蝉(ちょうせん)と会談するだけ!大丈夫……か? 大丈夫だよな、多分……。

アンケートの結果、初出の人名のみルビ振りという意見が多かったので、試験的に初出以外ルビ振り無しへと戻…そうと思ったのですが、割と量が多いので、暫くルビ振り有りとルビ振り無しが混同することになると思います。何卒ご容赦下さい。ご意見が有りましたら遠慮せずお知らせ頂けますと幸いです。


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