第18話:ば、馬雲騄さん?
蔡邕の娘。それはかの有名な蔡文姫である。のちに曹操の要求で失われた父蔡邕の蔵書400編余りを復元した際、誤字脱字は一字もなかったと言われる逸話のある程の才女だ。ちなみに兀突骨が蔡邕という名前を聞いた時に記憶の片隅に忘れてきたちょっと引っ掛かる点というのはこの人である。少なくとも未来ではゲーム等の影響も有って娘の方が蔡邕の名前の数十倍は有名であろう。
「だからなんでそんな人と結婚する話になるんだよおおお!」
「兀突骨様。私は一回蔡文姫殿に会って来ましたが、そんなに悪いお方じゃなかったですよ?」
「馬雲騄は蔡文姫殿みたいに他の人が来てもいいの?」
「まぁ3人程なら」
「なら!? え、もしかして俺のこと嫌いになった?」
「違いますよ? 殿方は面目の為に形だけでも妾を取ることはありますもの。しかも兀突骨様は次期頭領。きっと妾が必要なんじゃないかと思っておりましたし……」
サラッと正妻宣言はしていく馬雲騄。むしろその豪胆さに敬服するよ。
「いや、でもなぁ……」
「もっとしっかりして下さい、仮にも男なのですから」
今仮にもって言った!? 仮にもって! 俺は馬雲騄に男判定されてないってこと!? そう言い出しかけたが馬雲騄の目付きがちょっと怖いので黙る。そう言えば馬雲騄って武芸者なんだよな。この前も屋敷の庭で薙刀を振るっている所を見た。もし俺が逆らったらアレで一刀両断されてしまう未来が見える。だから逆らわない。うん、単純明快。
「うーん……じ、じゃあ取り敢えず蔡文姫殿に会ってから考えようか。馬雲騄もそれでいいだろ?」
「私は蔡文姫殿に会わずに決めても気にしませんが?」
「俺が気にするんだよ!」
思わず大声でツッコんでしまった。馬雲騄は兀突骨が中々結論を出さないことにイライラしていたようでちょっと睨んできたが、幸いな事に何かされたりはしなかった。それにしてもウチの妻は大雑把すぎてホントに困る。
ブックマーク、☆ポイント、感想での応援ありがとうございます。




