第12話:韓遂に捕まる
無事に漢中を出た俺はそのまま長安に……は行かなかった。いや、行けなかった。ちなみに厳顔さんは和気藹々と張魯の討伐に行った。討伐ってなんだろう()
「おい、面を上げろ」
そして今俺はお縄に引っ捕らえられている。あれ? この場面この前も見たぞ?
「はぁ…」
「見たところ南蛮の人なようだが……。なぜ捕まえたんだ?」
「はっ、南蛮人がここにいて怪しかったのと厳顔と共にいるところが確認されており、このまま長安に向かおうとしていたので董卓の援軍だと思いまして……」
怪しかったのとっていう理由ホントに酷いな。
「そうか。なぁお前、名は何という?」
「あっ、兀突骨と申します」
「兀突骨か。良ければ儂の部下にならないか?」
「韓遂様!」
「まぁ待て、本当に奴らの手先なのかは分からないんだろう?」
「それはそうですが……」
そう、俺の前の上座に座ってるのは韓遂である。ちなみに少し奥には馬騰も居るらしい。韓遂が捨て身くらいしか騎兵基礎スキル以外に持ってなかったのはもう確認した。
「で、どうなんだ?」
「すみません。非常に有り難い話なのですが小生、とある国の頭領をやっておりまして易々と他人の元で働く訳には行かぬのです」
「ほぉ? 俺の部下にならないなら、ここで切り捨ててもいいんだぞ?」
「一々死ぬことを恐れていたら頭領など務まりませぬ。殺りたければどうぞ一息に」
「ははっ、良い心掛けだ。ならば……」
「やめろっ!」
「あん? 何だ馬騰、文句あんのか?」
「韓遂殿は血の気が多くて困る。まさか本気で殺す気だったのではあるまいな?」
「はぁ……冗談だよ冗談。ったく、興が醒めちったぜ」
……よかったぁぁぁ。ガチで殺されるかとおもったぁ。実は馬騰さんが途中で止めてくれると踏んであそこまで言ったんだけどね。死にたくはないよ。
「改めて、私の名前は馬騰と申す。彼は韓遂、気性が荒くて少し驚かせてしまったかもしれない。申し訳ない」
「いやいや、そんな、別に私の考えを語らせて頂いただけですし…。それにしても少し語りすぎました。お詫び申し上げます」
「か、顔を上げてくれ!そんな遜る必要は無いんだ。恐らく貴方は我々と同じような境遇なのだろうし……」
「そうですか……。それでは改めて、私は烏戈国の次期頭領の兀突骨です。新たに即位しました少帝や献帝に挨拶をする次いでに、見聞を広げようと考えまして長安を通り洛陽へ向かおうと考えております」
「ふむ……皇帝陛下に挨拶か。ならばそうだな、次いでにウチの愚息と娘を貰ってってくれないか」
……え?今何つった?えっと……息子と娘を貰ってくれと?
「いやぁ、ウチの愚息は中々言うことを聞かなくて、韓遂殿と過ごさせてたところそれに似て荒い気性になってしまってねぇ…。言ってしまうと実は手が付けられないんだ。丁度諸国を旅したいとか言ってるしほぼ董卓の成すがままにされているような皇帝陛下にわざわざ挨拶しにいく貴方にあげれば間違いは無いと思ってね」
……え?
「え、えっと……その……息子って馬超殿ですよね……?」
「おぉ、よく知ってるねぇ。そう、ウチの愚息は馬超というんだ」
「あの、で、娘とは……?」
「ん? あぁ、その件なんだけどね、私が涼州に残ってるのはほぼ自分の身勝手なんだ。今は権威も形骸化しちゃったけどそれでも皇帝陛下に仕えたいっていうね。でもそれに娘を巻き込むのは忍びないと思って嫁入り先を探してたんだ。元々馬超と一緒に何処かに嫁がせる予定だったしこの際仲良くする証ってことで貰ってくれないかい?」
……え?えええええええ!?
「あ、あの、む、娘さんってどこに……」
「あ、すぐそこに居ると思うよ。おおい、馬雲騄」
「はい、如何致しましたか? お父様」
うわぁぁぁぁぁぁぁ!? なんか来たぁ!? 翠の服を来て艷やかな黒髪をしている美女。髪は肩より先にまで掛かっており、俗に言う黒髪ロングの様相を呈している。また、スレンダーな体型をしており、それでも鎧のような物を身に着けている所からしてそこそこ腕は立つようだ。にこりと笑ったその顔に一瞬見惚れてしまったが、それどころでは無い。
え、どうすんの……? マジでどうすんの? 確か馬雲騄って趙雲の妻だと言われる人だよね? まさかそんな人が兀突骨の妻になるの? え? なんか違くね?
「この方、南蛮から来た兀突骨殿というのだがどうだ、この方に嫁がないか?」
「この殿方と、ですか?」
いやいや、ね? いやほら、馬雲騄さん困ってるじゃん、やめてあげよ? ね? 馬騰さん? 馬騰さーん?
「分かりました。殿方として申し分ない人であるようですし、私はこの方に嫁ごうと思います」
「おぉ、賛成してくれるのか。ならこれで話を進めたいのだがよろしいかな? 兀突骨殿」
えええええええ!? いやいや、え? いいの? マジで? いや、嬉しいんだけどさ、兀突骨気持ち悪いとか言われなくて良かったけどさ、え? いや、決してイヤとかじゃないんだよ? 綺麗な人だし、別に悪い話じゃないんだけどね? 意味分かんないだけなんだよ? ガチで嫁いでくんの? 大丈夫? この時代の結婚って皆こうなの? なんかおかしくない?
「兀突骨殿?」
「え、あぁ、はい」
「それではそれで話を進めましょう。誰か、明日までに婚礼の準備を勧めておけ!」
「御意」
「それでは兀突骨様、これからどうぞよろしくお願い致します」
「え、えっと、こ、こちらこそよろしくお願いします」
……なんでこうなった?
こうして、困惑の波に呑まれる中、兀突骨の婚礼が決まった。
ちょっと唐突かもしれませんが、一応設定を伝えておきます。
兀突骨はよくあるゲームみたいなアホ顔ではなく、割とちゃんとした顔をしています。キャラクリの時の「おっさん顔」は知性など一切なく過ごしたと仮定した場合の顔なので、身嗜みなどをちゃんと整えて上京を目指している主人公はちゃんと(ある程度)カッコいいです。
それに加えて、南蛮から上京する人なんて滅多になく、かつ脳筋の血筋で筋肉は付いているので、頼り甲斐のある男性、くらいにはなってると思って貰って大丈夫です。まぁ、馬騰にはこれとはまた別に思惑はあるんですけども。まぁ、そんな感じでご容赦いただければ幸いです。
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