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第122話:その頃歩兵部隊達は

 その頃、益州軍の陣では大急ぎで歩兵が叩き起こされていた。

 

「敵襲だ! 敵襲だぞ!」

 

 混乱が蔓延る中で皆それぞれ装備を整える。上官の指示に従って陣中の広場に集まった彼らはそこそこ位の高い将軍から指示を出されていた。

 

「皆に告ぐ。現在敵による夜襲が行われている。だが我々が練った策の通りに事が進めば陣中まで敵がやって来ることは無いだろう。今回、皆には万が一敵が来た時にも対応できるようにとの配慮から集まってもらった。恐らく動かなくてもいいのだろうが、周囲を常に警戒しておくように。過剰な警戒は要らないと言えど最小限の護りは整えておけ」


「「「はっ」」」


 夜襲と聞いて皆の表情が曇る。斯く言うこの将軍自身も不安を感じているのだから無理もない。だが将軍や上官が不安げにすれば混乱は広がる。彼らは精一杯気丈に振る舞いながら、更に上からの続報と指示を待っていたのだった。



 

 では、その更に上とかいう奴は今何をしているのだろうか。彼らは幕舎の中で至急作戦の打ち合わせをしていた。歩兵を率いる彼らが今やることは無い。当に人事尽くして天命を待つ心境であった。

 

「取り敢えず現在の作戦はこうです」

 

 幕舎の中で賈詡(かく)が地図を広げる。余りにも詳細すぎる地図に諸将達は息を呑むものの、今はそれどころではないので特に言及したりすることは無かった。

 

「まず、既に確認されている敵兵として敵陣の中に居る歩兵、城から突撃してきた騎兵、自陣後方より襲撃してきた騎兵の三軍が挙げられます。恐らくですが残る一方にも敵の騎兵や歩兵が伏せられているでしょう。私達が撤退する時に殲滅する腹積もりなのかと」

 

 淡々と説明を進めていく。この中で今喋って場を乱すような無能は居らず、皆静かに賈詡(かく)の次の言葉を待っていた。

 

「そこで我々は現在動いていないこの伏兵以外の兵に対応し、各個撃破することに決めました。城からの騎兵には馬騰(ばとう)殿、後方からのには韓遂殿、正面には兀突骨様の藤甲兵及び龐徳(ほうとく)殿や高順殿の歩兵部隊を主として対応して貰っており、呂布殿や張遼殿、馬超殿がそれぞれ遊軍として補佐に就いています。数では現在負けているものの、我が軍には大将様より貸し与えて頂いた物が有るので不安に思う必要はないかと」


 それを聞いて一人の将が手を挙げる。

 

「……賈詡(かく)殿の主人は兀突骨殿であると聞きましたが大将とは兀突骨殿の事でしょうか?」

 

「まさか。劉璋様ですよ」

 

 実は貸し与えてもらったという秘密兵器は兀突骨が開発した物なのだが、その様子はおくびにも出さない。劉璋には実績が必要だし、この場で不敬等と難癖を付けられても面倒だからだ。


「ともかく、必要以上に悲観することはありません。既に策は立ちました。残りは吉報を待つのみです」

 

「「「了解です」」」

 

 かつての上司に応る李傕(りかく)。彼らと敵として当たることに思う所が無いわけでは無い賈詡(かく)だったが、人の才を測り違えて他勢力に引き抜かれてしまったことを精々悔いてもらおうと感じた賈詡(かく)だったのであった。ちなみに彼自ら兀突骨の陣にやってきて降伏していたことをここで口にするというのは野暮という物である。

 

 そうしている内に、歩兵が詰めている陣の周りでも騎兵同士の戦いが始まる。どちらが勝つにしても、長安の夜明けは近い。

更新忘れていて申し訳ありません。取り急ぎ2話を投稿いたしますが、少々立て込んでおり更新以外については暫くお待ちいただけますと幸いです。


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