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第103話:手紙

興平元年(西暦194年)11月

 

 成都にて様々な工作に手を染めて忙しく駆けずり回っていた兀突骨の元に、二通の手紙が届いていた。

 

「ふむ……? 一つはヴァンから、もう一つは劉璋様からかな?」


 そう言ってヴァンからの手紙を広げ始める兀突骨。現在劉焉と兀突骨の共同開発により益州の内部や兀突骨領での連絡手段として紙は広く普及しており、政府の中では戦時中を除いて専ら木簡を使うことはなくなっていたのである。質の良い紙を大量生産する体制を成都の住民から人を募って整えたことが大きく、このことを無事成功裏に収めたことが劉焉の内政能力の高さを表していると言えるだろう。

 

「どれどれ……道がほぼ全部整ってきた。そしてビエンチャンが完成した、と」

 

 劉焉の能力の高さはさておき、その手紙には工事などの進捗具合や近頃扶南(ふなん)との間で起こった小競り合いについて書かれていた。

 

「そうか、扶南(ふなん)が度々ちょっかいを掛けてきてるのか。ただビエンチャンがあるお蔭で川を越えられてはいないようだしまぁ大丈夫かな」

 

 そのまま筆を執りヴァンを労うような返信を書く。あ、そういえば領土を拡張したのに漢名とか決めてなかったな。範囲は大体決まってるけどもあそこら辺をなんて言えばいいんだ? 越南郡か? まぁ次の出兵とかも考えて南交州と北越南とかにしとけばいいよな。


 いや、でもそうすると越南郡が大きすぎるかな? 郡というよりかは州、そうだな、越州とかにするか。ヴァンには越州月都郡太守になるように今度上奏する、っと。俺は今国相だし流石に同格なのは拙いから、今度越州牧になれるように上奏することになりそうだけど……。


 そんなことを考えながら兀突骨は返信を書き終える。いいよな? なんか変な約束しちゃったけど。きっと劉璋とかに地図を見せて領有を主張したりすれば大丈夫……なはず! 気にしない! それよりも劉璋からの手紙だ!

 

「あー……これ公式な手紙か……」

 

 手紙の書き方を見てすぐに察する。これ自分以外にも宛名だけ変えて送っている物だと。

 

「要件は……興平二年(西暦195年)元旦に主要文官・武官が集まる宴を開催する、ね。なるほど……?」

 

 恐らく劉焉がもう先長くないことと自分がその跡を継ぐこと、そして漢中に対する姿勢を発表するんだろうな。

 

 それにしても宴か。自分が美味しい物を食べたいという気持ちが透けて見えなくもないが、それ自体は悪くない選択だと思う。劉璋は史実だと食べ物に凄い拘っていたとか言われるし実際に会ってみてもそう感じたものの、宴自体は普通の手段なのだ。まぁ他国との関わりが少ないために国庫に余裕ができやすい益州に合っていて劉焉も度々取っていた手段であるし、戦争による兵糧の消費を考慮しなければ間違っていない選択である。でも劉璋さん、貴方これから多分ですけど漢中攻めるんですよね? 兵糧の分を考えないといけませんよね? 平時であれば本当に良き君主であった。劉璋がそう評される理由の一端を垣間見た気がして、人知れず兀突骨は溜め息を吐くのだった。

ビエンチャンは月都郡という名前を付けることにしました。

再度告知?ですが、8月1日より毎日更新を行います。一気に五章終了まで駆け抜けてしまおうと思っていますので、何卒宜しくお願いします!

あと誤字報告、本当にありがとうございます…!


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 武官と文官が集まる宴ですか…。多分出席する張任と厳顔と呉懿辺りとはこの機会に知り合いになっておきたいですね。 ちょっと出席するかは分からない法正とも顔合わせしときたいですが…うっ…
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