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第10話:成都に入る

 今、俺の前には一人のお爺さんがいる。ここは成都、目の前のお爺さんは劉焉(りゅうえん)である。因みに鑑定してみたら行軍というスキルを持ってたので、絶賛複写中です。


「ふむ、長安を通り洛陽に向かう途中だ、とな。じゃが、お主のような南蛮人が都に何の用じゃ? よもや謀反ではあるまいな?」


 ……なお、俺は成都に入って面会を願い出たら捕まってしまった。罪状は『南蛮人だから怪しい』とのことらしい。酷すぎる。


「滅相もございません。私の名は兀突骨と言いまして烏戈(うか)国の次期頭領でございます。頭領として即位する前に見聞を積もうと考え、次いで漢の皇帝に朝貢しようと考えて洛陽に向かってた次第……。その道中で天子様をも凌ぐ才覚をお持ちの劉焉様に是非一度お目通りしたく、登城面会を希望したのでございます」


「ほほう? では二心は無いと?」


「勿論、あるはずがございません。劉焉様のお膝元で叛乱を起こすなど言外でございます」


「よろしい」


 この劉焉という爺さん、かなりの曲者である。若い頃に成り上がったかと思えば天下の大乱をいち早く察知し保身の為に交州牧になろうとした挙げ句、従者から皇帝が益州を気にしていると聞いて益州の州牧になった。皇帝が益州を気にしていると聞いて益州牧になったのは、その方が皇帝からの信頼が得られるからだ。元々漢の王室の末裔であるわけだし、信頼さえ有れば皇帝になるのも難しくないと考えたんだろう。ただ、その後実際に諸侯が反乱を起こした時には漢との見切りをつけ、漢王室との連絡を断って独立した経緯を持つ。


 こう見ればやり手の凄い人のように見えるかもしれないが、この爺さんには一つ弱点(?)がある。劉焉が野望を抱く切っ掛けになったのはどれも配下の提言だと言われているのだ。一番のいい例が、確証も無いのに益州に皇帝の気があると告げた従者の言葉を丸々信じた事だろう。つまり簡単に言えば劉焉爺さん、煽ててやれば調子に乗る人なのである。あ、スキル行軍貰えた。


「して、何をして欲しいと?」


「朝貢への口添えとこれからの烏戈(うか)国との交易をお願いしたく」


「ふむ、お主の領地には何が?」


「熱帯の多種多様な果物――そして、砂糖をご用意できます」


「……砂糖じゃと?」


「ええ、甘き宝石とも言える貴重な品。これを都に流せば、莫大な利益が得られるかと」


 そう、いつか言った『あの件』とは砂糖栽培のことである。砂糖と言ってもなろうWEB小説お約束の甜菜ではなくサトウキビ。サトウキビは南蛮、交州等で栽培が行われているが蜀などの内陸部ではあまり作られていない。降水量もそこまで無いしね。


「よし、良いだろう。確かに砂糖であれば都の方に売りつけても利益が出る。代わりに何か交易して欲しい物はあるか?」


「絹と竹を安く仕入れたく。あとは上洛に際して熊猫を一頭献上させて頂きたいのです」


「熊猫?」


「はい、天子様は幼少であるとお聞き致しまして」


「ははは、お主、中々のやり手であるな」


「恐悦至極にございます」


 劉焉が面白そうに目を細める。煽てて貰って気分が良くなったのか、それとも感心したのか、どちらにしろある程度は認めてくれたということなのだろう。


「分かった。南蛮の果物も取引するんだろうな?」


「勿論でございます」


「なら良い。誰か来い! ここに益州、いや巴蜀と烏戈(うか)国の国交樹立を宣言する! 書類を書こう」


 奥の方から役人っぽい人が木簡を抱えてくる。そう言えばこの時代、まだ紙はかなりの高級品なのか。いつか改良した奴を作ってみても良いかもな。


 何はともあれ、劉焉さんはウチとの国交を樹立してくれた。しかもご丁寧に『巴蜀との樹立』って明記されてるから、もし劉備が来ても屁理屈言えるね! ちなみに熊猫はパンダのことね。


 大仕事を無事に終え、再び北に向かおう。兀突骨がそう思った矢先、巴蜀に激震が走った。

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