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第101話:発明

「さて、兵糧問題を考えるぞぉ!」

 

 謁見後屋敷に帰った兀突骨は早速賈詡(かく)や布岳を呼びつけて新しい物を作ろうとしていた。

 

「まーた何か思いついたんですか?」

 

「まぁ色々ね」

 

「兀突骨様は飽きませんねぇ……」

 

 そんなこと言われても俺は気にしない。というか狸爺達からの精神攻撃付き面会を凌いだ俺はもう無敵! え、無敵ならもう一度面会やれって? 嫌です。

 

「先ず今日開発したいのは食べ物だよ」

 

「あれ、てっきり火薬を改良するのかと思っていましたが」

 

「南蛮じゃ火薬が湿気って使えなくなることが多いからさ。あれの開発は林邑(りんゆう)とか扶南(ふなん)を降伏させたあとにやることにするよ」

 

「なるほど……」

 

「じゃ、今回は食べ物を作っていこう!」

 

 そう言って厨房に駆け込んでいく兀突骨の後ろを賈詡(かく)と布岳は慌てて追ったのであった。


 


 数刻後。机の上には多種多様な料理というべきか食べ物というべきか迷う物が並べられていた。

 

「ええと……これは?」

 

「それは芋羊羹。芋も有るし砂糖黍も有ったから作ってみたもので、兵糧に向いていると思う」

 

「では……これは?」

 

「それは卵黄醤。取り敢えず食べてみれば美味しさは分かる筈」

 

 卵黄醤とはマヨネーズのことである。ほら、西のマヨネーズ、東の醤油って言うだろ?言わない? 言わないか……。


「む、これは……」

 

「なんか、変な味がしますね……」

 

「え、変な味?」

 

 そんな筈は無いと思って兀突骨が一口食べる。

 

「うわ、何これ不味っ!」


 思わず顔を顰める。それもそのはず、出来たのは酸っぱい変な液体だったのだ。

 

「いつまで混ぜても固まらないからこんなもんかと思ったけど、絶対こんなもんじゃないな」


「これは何を使ったんですか?」

 

「卵と酢と油だよ。なんでこうなっちゃったんだろう」

 

「え、卵使ったんですか?」

 

「あぁ」

 

「な、生ですよね?」

 

「そうだけど……。なんかあるの?賈詡(かく)

 

「それ衛生面で大丈夫なんですか?」

 

「……あ」

 

 失念してた。生卵って鮮度とか衛生面とかに気を配らないといけないんだ。そりゃ冷蔵庫無いからな。この卵だって水に漬けて冷やしてたし。

 

「ま、まぁこの卵は今朝仕入れた物だし?」

 

「ならいいのですが……」

 

 多少困惑しながら賈詡(かく)が言う。そうか、生卵を食べる習慣はあまり根付いてないのか。でも先ずはマヨネーズを作り上げることが先決だな()

 

「何処で間違えたんだろうなぁ……」

 

 桶の中から新しい生卵を拾い上げる。そしてそれを割ってお椀の中に入れる。

 

「えーっと? ゆっくり入れればいいのかな?」

 

 WEBウィンドウを開けて間違いないように作業を進める。どうやら変なのが出来た原因は一気に入れてしまったからだということ。難しい……。怪訝そうな顔で賈詡(かく)や布岳がこっちを見てくるけど背に腹は代えられない。俺はマヨネーズを作るんだ!

 

「お?」

 

 途端、混ぜていた手に負荷がかかる。

 

「これは固まり始めたか?」

 

 その声に釣られて布岳がお椀の中を覗き込む。中では油と卵黄が互いに溶け始めて半透明の液体だった色が変わってきていた。

 

「ほぉ、これは……」

 

「出来た!」

 

 完全に混ぜきって油等が見えなくなったのでお椀を机に置く。すかさず賈詡(かく)が中の物を指で掬い取って舐めた。

 

「なっ!?」

 

 絶句する賈詡(かく)を横目に、布岳も一掬いして舐める。


「どれどれ……ほぉ?」

 

 目を見開いて驚く布岳。

 

「火薬でも驚きましたが、まさかこんな物まで作れるとは」

 

「えぇ、ですが衛生面等に不安が残りますね。出陣中には食べれないでしょうし、兵達の分は供給出来ないでしょう」

 

 そう言いながら手が止まってないぞ?賈詡(かく)さん?


「その通りですな。しかしこれは魚や肉によく合いそうです」

 

 苦笑いしながら布岳が言う。

 

「その他にもサラダとか茹で卵を入れても似合うよ。ちなみに白米にも合っちゃうんだよ?」

 

 悪魔の調味料を勧める。賈詡(かく)なんて目を輝かせながら白米調達しに行っちゃったよ。

 

「えっと……布岳しか居なくなっちゃったから芋羊羹は布岳が食べてくれない?」

 

「はい……おお、思ったより甘いですね」

 

「これでいて保存も効くんだ。兵糧としても使えるし申し分ないと思うよ?」

 

「陣中で甘い物を食べられるだけでも衝撃ですがね。甘い物なんて余程の高級品でも無い限り兵卒は食べれないんですから」

 

「いやだってまぁ……砂糖黍畑があるじゃん?」

 

「はぁ……そうですね。しかしこの前兀突骨様が言っていた士気の問題はこれで解決されたと思いますね」

 

「そう? ならそこまで心配しなくてもいいか」

 

 そう言いながら大きな樽を出す。

 

「……? それは何を?」

 

「こっちは新しく作ったお酒だよ。飲んでみな」


「では失礼して」

 

 樽からお椀で掬って飲む。その瞬間、布岳の目が再び見開かれた。

 

「これは……! 酒精が強く、雑味も少ない! 普通の酒の何倍も美味しく感じます!」

 

「実はそれ元のお酒から濁りを濾し取った物なんだよ。清酒って言うんだ。元々出陣前に成都で作ってたんだけど、ここでお披露目かな」

 

「私好みの味ですね。これが公開されれば大儲けは間違いないでしょう」


「じゃあこれは?」

 

 目を輝かせている布岳のお椀に対して赤い液体を注ぐ。それを布岳に飲むように促すと、布岳はそのままそれを口の中に注ぎ込んだ。

 

「これは飲んだことがありますな。葡萄酒でしたか?」

 

「普通の葡萄酒とは違って加工とかに拘ったんだけどね。多分酸味とかの強弱が丁度良くなってる筈だよ」

 

「いえ、ですが私、葡萄酒に関してはもっと美味しいのを飲んだことがありますので」

 

「えぇー……」

 

 もっと美味しいのを飲んだことがあると聞いてショックを受ける。これも喜んでくれると思ったのに辛い。

 

「まぁこれも好きですし、久々に飲めて嬉しいですよ。そもそもが高級品ですしね」


 残念そうな兀突骨を見て布岳が励ます。それを見て少し元気が出た兀突骨はそのまま布岳と談笑を続けることになり、賈詡(かく)が帰ってきた時には酔って寝てしまっていたという。

ちょっと何か作っておこう…と思ったんですけど、マヨネーズは張り切りすぎましたね。羊羹に関しては後々何かに飽きてくるかもしれません。

次話でこの章、南蛮編は終了となります。その後、幕間を一つ入れて、7月までお休m…あれれー?おっかしぃなぁ、なんで幕間の投稿予定日時が7/2になってるんだぁ?

7/4の一回だけ休みつつ、次の章に入っていきたいと思います。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 マヨはなぁ…日本の卵の衛生管理あってこその調味料(キユーピ○さんのマヨは特に、世界の方が「日本のマヨやるじゃない」と『北斗○拳』のアイ○みたいなスマイルを浮かべるレベルらしいです…
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