第100話:劉焉への従属
「「これより我らは主上陛下、そして劉焉様に従属いたします」」
広間に兀突骨と士燮の声が響き渡る。それに玉座に座っている献帝と後ろに立つ劉焉がゆっくりと頷く。
「……あれを持って来てくれ」
献帝が手振りを交えて周りの文官に言う。前に会ったときより貫禄が有るように感じるのは、長安から必死に逃げたり元服を経験したりしたことに依るものなのだろうか。というか元服13歳なんだな本当に。転生したときに大人のような扱いをさせられてたからちょっと困惑したけど、そんなもんなのか。
「卒衆王兀突骨を新たに国王として任命、興古郡国相としての位も授ける。交州刺史士燮においては引き続き刺史として任命すると共に、平南将軍としての権限も授ける。各々職務に励むように」
「「はっ」」
本当は行く行く征南将軍になりたかったのだが、流石に南蛮族では一気に征南将軍になることは叶わなかったか。というか叶うわけ無いわ。征南将軍は平南から数えても安、鎮、征と3つ目だし、そもそも南蛮族では国相ですら大出世なんだから。え? 俺は南蛮族じゃなくて蛮族だって? チョットナニイッテルカヨクワカリマセン。
「下がってよい」
「「はっ」」
献帝に向かって礼をしてから退出する。士燮を連れてきたからか、その時に劉焉がチラッとこっちを見たような気がしたけど気にしない気にしない。
「兀突骨殿、謁見の際は中々様になっておりましたな」
「士燮様……?」
「いやはや、土地柄のせいか粗雑な方と接することが多くてな。失礼じゃが数年前は南蛮一のうつけと呼ばれていた兀突骨殿がこのようなことに慣れているとは思わず」
「私のこと何だと思っていたんですか……」
兀突骨の言葉に答えず士燮が笑う。事実なので何も言い返せないが、ステータス欄にあった『知力5』の文字が思い浮かべられて悲しい気持ちになってくる。
「そういえば兀突骨殿は数年前に一度上京したとか? その頃に身に着けたのでしょうな」
「そう言う士燮様も若い時は上京したと伺っておりますが?」
「遠い昔のことじゃよ。それにしても良くその事を知っておりますな」
「いえ……」
「大方洛陽の誰かから聞いたんじゃろ。まぁ向こうに余り未練は無いから何とでも言うがいいわ」
いやそりゃあ権力争いから逃げようとしたアンタに未練は無いでしょうねぇ!?
「いやぁ、儂は老いたが見る目は間違っていなかった。これからもよろしくしますぞ、兀突骨殿」
「え、えぇ、こちらこそよろしくお願いします」
固く手を握り合う二人であったが、兀突骨も士燮も互いに鋭い眼で相手を見ていたことに気づいた人は本人以外に居なかったかもしれない。
遂に100話到達です。ここまで来れたのも読者の皆様方のお陰で、本当に有難いと思ってます。読みづらい、見苦しい文章など色々有った中、ここまで読んでいただけて感謝の気持ちで一杯です。
正直、筆者自身、「もう100話かぁ」と思いつつ、話によっては1000文字にすら到達していないものもあり、話毎に質が全然違うので気を引き締めなきゃなと思っています。そもそも話自体、現在の南蛮編の所は始まりでしかありませんし、もっと綺麗に流暢に、コンパクトに纏められた方が良かったなという感じです。ただそれでも100話まで到達できたこと自体は嬉しい限りですね。反省もありつつ、多少の達成感もあるものです。
今後とも、本作を何卒よろしくお願いします!
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