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こちら異世界観光タクシー ~SSSSパーティーから追放されたマッパーのオッサンは辺境で観光ガイドを開業してみた~  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:オッサンは忙しくなった

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38.才色兼備(さいしょくけんび)

「おおーいてえ、全く後先考えねえんだから困っちまうよ。口から産まれたなんて言葉があるが、オメエさんの場合は魔法から先に生まれてきたんだろうな」


「どうも喰らい足りないみたいだねえ。まったくさあ、子供がいるんだからもうちょっと言葉には気を付けてもらいたいもんだよ」


「そう言われても今のはオレじゃねえからな。とんだとばっちりだぜ。あんちくしょうはさっさと逃げちまうし。それともなにか引っかかったんかな?」


「アタイたちが一般人に見えたなら可能性はあるし、そうでなくても住まいくらいは知っておきたいのかもしれないよ。手を出してきてくれればそのほうが面倒は無いけどさ」だが追跡されている様子は完全に確認できなかった。


『うーん、何者かが追ってきてたのは間違いないけど、途中で去ったのか別のやつに交代したのかまではわからないなあ。なんにせよ個人の仕業ってことは無いだろうぜ』通って来た道に空気魔法による探知罠を仕掛けていたクプルが戻ってきて報告した。


「それにしても荷車をくれるなんざ随分とやさしいんだねえ。あんまり疑うのも悪い気がしてきちまうさね。こっちを部屋型の安全な人力車にすればいいから助かっただろ?」


「そう言えばそんな話してたの忘れてたし、何なら広告を貼ってもらう話も忘れて帰って来ちまった。まあこんなぼろい荷車をよこしてオレたちが帰る脚を遅くしようと思ったんだろうが、まさか魔法で軽くして運ぶとは考えてなかっただろうな」


「なるほど、だから気前よくくれたってわけか。アンタは悪人側の考えだとすぐにわかっちまうんだねえ。アタイにはそれがいいのか悪いのか判断しづらいよ」


「けっ、褒めるなら褒めるだけにしとけっての。さてと、もうちとばかし飛ばすぜ? このままだと夜になっちまうからな」エンタクはそう言うと荷車を引きながら速度を上げた。



 急いだ甲斐があって完全な真夜中になる前にムサイムサ村へと帰りついたエンタクたちは、さっそく腹ごしらえだと酒場へ繰り出した。ここは毎日大体同じ面子が顔を突き合わせている。


 その中に新顔がいれば目立って当然であるのだが、酒場の婆は知らんぷりしてテーブルへジョッキを三つ置いた。二つは果実酒、一つは搾り汁である。エンタクは自分のジョッキから小皿へ少量移してクプルへと勧める。


「ほらミチュリ、これをお飲みなよ。ハンナ婆さんの料理はうまいから何か頼んでやろうね。あれがいいか、芋と肉の細切れをこねたやつ。アタイはいつもの鳥がいいな。アンタはどうせあの辛いやつだろ?」


 だがハイナは言われる前にすでにいろいろ作りはじめている。結局この酒場では出されたものを黙って喰うしかないのである。それでもハイヤーンが言っていた芋とひき肉の揚げ焼き(コロッケ)はちゃんと出てきたのだから大したものである。


 どうやらミチュリは周囲に人が大勢いてもなんとも思わないらしく、怯えることもなく食事に励んでいる。しかし片手はハイヤーンの袖を掴んだままだ。まずはこの状態をどうにかしないことには用をたすのも一苦労だと(かぶり)を振った。


「明日は大工へ行くんだろ? 箱型人力車の前に風呂を作っておくれよ? 部屋を一つ潰せば十分できるだろうしさ。問題は水だけど、井戸を掘るのは無理か? アタイは良く知らないけど、村に井戸があるんだからウチの庭に掘ったって水が出るんじゃないかねえ」


「どうだろうなあ。オレも井戸を掘ったことなんざねえからわからねえよ。明日にでも大工へ聞いてみることにすっか。オメエさんが捕まっちまってっから人力車を急いでも仕方ねえしな」


「それじゃアタイは部屋を二つ繋げてミチュリと一緒でも狭くないように模様替えしようかね。風呂場は庭に一番近い部屋がいいかね。それとも台所を潰して―― いや将来的にミチュリが料理するかもしれないしなあ。うふふふ、なんだか楽しくなってきたねえ、オマエさんもそう思うだろ?」


「おい、なんだかやけに興奮して盛り上がってるが声がデケエっての。周りから注目されちまってんじゃねえか。少し落ち着けってんだよ。オメエさんがそんなに子供好きだとは知らなかったから正直驚いてんだぜ?」


「まあまだ産んだことは無くても母性本能ってもんがあるんだろうね。それにアタイは子を産めることは女の特権だと思ってるのさ。男にはどれだけ頑張っても出来ないだろ? 身体能力ではどうあがいたって負けるだろうけど、これだけは絶対に負けないんだからな」


「なるほどねえ、そう言う考え方もあるのか。でもまあ勝ち負けじゃねえし、変にムキになったり意地を張ったりするわけじゃねえならいいんじゃねえかな」


 ハイヤーンの意外な一面を見たエンタクは、改めて本当にすごいヤツだと感心していた。冒険者としてただ強いヤツはいくらでもいるし、優しい女だって大勢見てきた。しかしこれほどなんでも兼ね備えていると感じる人間は他に知らない。


 それだけに、こんな冴えないオッサンと時間を無駄に過ごしていていいのかと言いたくなってしまう。とは言え、今はこの居心地いい時間を長く味わいたいと思っている自分の気持ちをどうすればいいのか、年甲斐もなく真剣に悩んでいた。




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さいしょく-けんび【才色兼備】

 すぐれた才能と美しい容姿の両方をもっていること。


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