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こちら異世界観光タクシー ~SSSSパーティーから追放されたマッパーのオッサンは辺境で観光ガイドを開業してみた~  作者: 釈 余白(しやく)
第二章:オッサンは起業する

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21.驚天動地(きょうてんどうち)

 ムサイムサ村へ戻った一行(パーティー)は、早速グノルスス洞穴の未発見領域について冒険者ギルドへと報告した。王都のギルドであればそれはもう大騒ぎになるところだが、この村ではのんびりしたものである。


「だからな? ヨマリマはことの重大さと言うのか珍しさと言うのがわかってねえからそんなにのんびりできてんだよ。そんなに気に入らねえなら自分たちで探索してくるべきだったじゃねえか。でもあのウニウニはオメエさんの苦手とする部類だろ? だったら仕方ねえってモンだぜ」


「いやアタイは文句があるんじゃなくて驚いてんのさ。だって経った今見つけてきた未発見領域だよ? 王都じゃなくてももう少しなにかあるだろ。調査方針を考えるでもなく冒険者を募るでもないってのは、いくら田舎の村でも信じられないことさね」


「だが知っての通りこの村を拠点としてる冒険者はオレとボンクラのみだ。そのオレが引き上げて来ちまったんだから後はボンクラしか居ねえ。だがアイツは薬草採取ばかりでよほどのことが無い限りダンジョンにはいかねえからなあ」


「だけどさ? 受付嬢の驚かなさと言ったらそうそう驚かないアタイでも驚かされちゃったねえ。でもさすがに王都のギルドへ繋ぎくらいつけるんだろうね?」驚いたのか驚いてないのかわからなくなるような物言いをしたハイヤーンは、エンタクへもっともな疑問を投げかけた。


「そりゃギルドの判断だから何とも言えねえが、村にいるギルド職員はヨマリマだけだし、さすがに王都のギルドへ報告は上げるんじゃねえのか? やけに気にしてっけどなにか気に―― ああそうか、そうだよなあ」


「そうなんだよ、こんな駆け出ししか行かないようなダンジョンの未発見領域の調査だろ? アイツが挽回のチャンスだと考えてもおかしくないさね」


 ハイヤーンの心配はもっともだった。中央のギルドへ報告が届けば、今まで通り駆け出し用の初級ダンジョンのままにしておくわけにもいかない。となれば危険度や難易度が上がっているのか調査するのが当然である。その上で難易度を再設定することで、事故を未然に防ぐのもギルドの大切な役割なのだ。


「まあ報告が届いてから調査パーティーを選定して、ここまでやってくるまでには二十晩じゃ効かねえ。三十や四十かかってもおかしくねえさ。それとも招集に備えて王都へ帰るか?」


「正直言ってアタイはもう『回廊の冥王』へ戻るつもりはないんだよ。このムサイムサ村みたいなのんびりしたとこで、自由気ままに暮らすのが性に合ってるような気がしてきてるのさ。それともアタイがいたら迷惑かい?」


『もちろん迷惑さ。わかってるなら気を使って遊びに行かせてくれよな』エンタクは妖精の口を押えてからハイヤーンへと向き直った。


「うるせえ、オメエはちと黙ってろってんだ。―― ああ、違う違う、コイツが余計なことを言うから…… んでオメエさんが村に残るって件だがな、オレは構わねえしなんなら―― 待てよ? 勘違いはするなよな? 残るなら嬉しいが、それはあくまで気の合う仲間が近くにいた方がいいに決まってるって意味だからな?」


「なんだよまったく、オッサンのくせにくねくねと煮え切らないねえ。アタイだってそれくらい百も承知さ。思わせぶりな台詞に一喜一憂するほど純情な乙女じゃないさね」そう言い返したハイヤーンの耳は赤く染まっている。


 大の大人が少年少女のようなやり取りでどうなることかと思ったが、それでも話はまとまり、ハイヤーンは村へ残りタクシイ観光の宿泊所へ住むことにした。広い意味ではエンタクと同居ではあるが部屋は十以上あるから問題は無い。それにいざという時には馬小屋へ身を隠すと決めていた。



 それから幾晩が過ぎて気持ちも落ち着いたころ、ムサイムサ村へと早馬がやってきてエンタクは大慌てで準備をする羽目になる。


「なんでそんなに噂が広まってるんだよ。ジョト村ってのはこないだ来たオメエの親類が住んでるとこだろ? ギルドからは王都へ連絡をしているだけだとばかり思ってたぜ」


「んにゃ、オラが教えたからな。ジョト村にも冒険者がいるはずじぇき、稼がせてやろうかと思うたんど。でもあっこの冒険者は若いのばかりじぇ、一番上のランクでもEランクだって返事が来たんど」


「そりゃ確かに厳しいかもしれねえなあ。なんせ何が起こるかわからねえんだから怖ええだろうし。でもそれとこれになんの関係があるんだってんだ?」


「おめは鈍いど、調査が来て村が混んで来たら、観光なんどゆるできんくなるじぇ? だかそうなる前に遊びに来たいってこじぇねいかい。商売になるんどよかたじぇねいか」


「まあそれもそうだな。もしかしたら逃げ切れずにオレやハイヤーンが道案内つって連れて行かれちまうかもしれねえし、やれるのはその前ってのは確かだぜ。んでいつなんだ?」


「ん? 早馬が来たんじぇき乗合ももすぐくんだろね。今晩か明日の朝か、んなもんじぇねかね?」


「だからなんでオメエはそうやって直前に言ってくるんだよ、このボンクラめ!」


「おめもなんども言うけんど、おらはボンクレじぇき!」


「いいんだよ、わざと言ってるんだから。それくれえわかれっての」


「なんだわざとならえかった。間違て覚えてん困るじぇきな」


 どうやら王都からの調査隊到着より先にバタバタする用事が出来たと言うことで、エンタクとクプルはさっそく馬小屋へと移動し手準備を始めた。




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きょうてん-どうち【驚天動地】

 世間を非常に驚かせること。世間をあっと驚かせる事件・出来事の形容。


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