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こちら異世界観光タクシー ~SSSSパーティーから追放されたマッパーのオッサンは辺境で観光ガイドを開業してみた~  作者: 釈 余白(しやく)
第二章:オッサンは起業する

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18.咄咄怪事(とうとつかいじ)

 ハイヤーンにとっては、ロッソマがどこかへ飛ばされてしまったテレポーターの罠が発動した光景が頭をよぎる。だがあの時とは違って人工物のような雰囲気は無く、あくまで岩肌の一部が光っているだけだ。


「なあこれってハイヤーンが魔法でやってることなのか? オレの眼には岩が光ってるように見えるんだが……」


「アタイはなにも知らないよ? 光ってるのは間違いないけど……」


『なーんか嫌な予感しかしないな。無視してさっさと出ようぜ?』


 どうやら三人の意見は一致したようだ。いずれは調査の必要があるかもしれないが、今はその時ではない。なんせ裏の森へちょいと遊びに行く程度の装備で来ているのだから。


 エンタクは久しく手にしていなかった、このグノルスス洞穴の地図を取り出して光っている位置を追記した。オッサンが産まれながらに持っていた唯一の能力(非スキル)絶対的方向感覚(コンパス)』によって方角は正確に把握できている。


 それによると、どうやら入り口の真反対に位置する部分が光っているようだ。これはつまりさらなる地下階層があることを示唆しているのだろう。


「こりゃ大発見かもしれないが、調べるにせよ進むにせよ一旦装備を整えてきた方がいいだろうな。長丁場になるなら食料も必要だぜ。それにしてもまさか未踏破領域らしき形跡にぶち当たるなんてなあ」


『おいオッサン、岩が光ってるだけなのになんでそこまでわかるんだ? ただ光ってるだけで終わりかもしれないだろ?』


「まあクプルは知らなくても仕方ねえがな、ダンジョンには一定の法則みてえなもんがあるのよ。次の階層へ進むために必要な仕掛けの中に、ボスを倒して何か条件を満たすと次への道が示されるってやつさ」


『つまりはそれを満たしたらしいと? いったい何なんだ? 蛇なら今まで何度も倒してたじゃないかよ』


「これはオレの予想にしかすぎねえけどな? 多分かなり強めの魔法なんじゃねえかと思うんだ。それだとこの初級ダンジョンで条件が揃わなかったことも頷ける」


「チビちゃんがなに言ってるかわからないけど、新階層への道が開く条件はいろいろなのさ。火を焚くってのも聞いたことがあるし、アタイらが見つけた中には、壁を何度も蹴飛ばすだとか、ボスを倒さずに逃げ回って時間経過を待つなんてのもあったんだぜ?」


『へえ、なかなか面白いもんだな。ちょっとした謎解きってわけか』


「うむ、謎解きとはいい表現だな。オレには向かねえヤツだから解き方自体に興味はねえが、そんな場所がまだまだ眠ってるどころか、こんな探索されまくったところにもまだ残ってたなんざ面白えよなあ」


「あんまり長居して吸いこまれたりすると困るからさ。早く引き上げようさね。荷造りでき次第もっかい来るとしてギルドへの報告も入れといた方がいいだろうよ」


「そうだな、行きがけに伝えていきゃ横取りされることもねえ。とは言っても冒険者自体、オレたちの他にはあのドワロクのボンクラか、流れの駆け出しくれえしかいねえから心配はねえが」


「アタイは戻って風呂に入っておきたいよ。もしかしたら長くなるかもしれないもんな。食料も相当持って行った方がいいかもしれないぞ?」


「それもそうだ、帰りしなに獣を狩って行ってハイナ婆に作ってもらうとするか。よしよし、こりゃ楽しくなってきたぜい」


『オレサマはダンジョンよりむにむにのが良かったけどなあ。まあ仕方ない、オッサンたちに付き合ってやるとするか』


 こうして突如訪れた興味そそられる出来事の攻略に向け、一行は準備を整えるために帰宅することにした。もちろん帰りもハイヤーンは接待されるかの如く人力車に乗り、それをクプルの魔法無しで引いていくエンタクだった。




ー=+--*--*--+=-ー=+--*--*--+=-


とつとつかいじ【咄咄怪事】

 きわめて意外で、また恐ろしく奇っ怪な事件。



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