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第7話 赤髪の少女

「こ、ここが王都……」


僕は初めて見る王都に言葉を失った。

家や人の数が故郷の街と比べ物にならないほど多く遠くには大きい王宮がそびえ立っているのが見えた。


「えーっと……まずは宿屋を探さないとね」


入学試験が始まるのは3日後。

それまでは宿屋に泊まらなければならない。

王都外から受験する学生は試験会場の近くにある宿に泊まっていいらしい。

早速地図を見ながら歩き始めた。

しかし……


「街広すぎじゃない……?」


道が入り組みすぎていて全くたどり着けない。

というか自分が今どこにいるのかすら分からなくなった。

僕は今、王都の恐ろしさを感じていた。

どうしたものか、と考えていると突然声が上がった。


「スリだ!誰か捕まえてくれ!」


ん?スリ?

見るとカバンを持った男が走っていて後ろで持ち主と思われる人が転んでいた。

捕まえに行くかと思ってた僕は駆け出す。


「御用だね。──っ!?」


「捕まえた〜!」


僕が取り押さえようとした瞬間、違う方向から女の子が出てきて男を取り押さえた。

走って近づいてくるのは気づいてたけどまさか捕まえに来るとは……


女の子は荷物を取り返し持ち主に返して男を憲兵団に引き渡した。

そしてその様子を見ていた僕に近づいてくる。


「手伝ってくれてありがとね!おかげで楽に捕まえられたよ!」


「えっ?あ、うん」


僕は別に何もしていないんだが。

でもここで否定するのも何か違うと思ったのでとりあえず頷いておいた。


「私の名前はメアリー。よろしくね!」


メアリーと名乗る少女は一言で言ってしまうなら美少女だった。

愛嬌のある目と赤い髪をツインテールにしているのが特徴的である。


「僕の名前はアランだよ」


「アランくんかぁ……いい名前だね!」


それにしてもなぜこの子はこんなにも絡んでくるんだろうか。

僕から隠しきれない田舎者の雰囲気を感じ取っているとか?

僕の街も商業都市だからそこそこ都会の方だと思うんだけどなぁ……


「アランくんはノビリタス学園受けるんでしょ?」


「え!?なんでそれを……?」


「あはは!わかるって。だって手に推薦状の封筒持ってるじゃん」


「あ……」


確かに僕の左手には推薦状の封筒があった。

すっかり忘れていた。

ん?推薦状の見た目を知ってる……?


「もしかしてメアリーって……」


「うん!私も受けるんだ〜!」


そう言ってメアリーは自分のカバンから推薦状を取り出した。

そこには中等学校の名前と校長の名前が入っていた。


「で、アランくんはそんなに荷物持ってどうしてこんなところにいるの?」


「それが地図を見ながら宿屋を目指して歩いていたらいつの間にかここに……」


「宿屋って真逆だよ?」


「………」


「道案内してあげようか?」


「お願いします」


どうやら僕は地図が見られないタイプの人間だったようだ。

メアリーのありがたい提案に速攻で食いついた。

僕たちは並んで歩き始める。


「そういえばアランくんはどこの中等学校出身なの?」


「僕は学校出てないんだ。個人推薦だね」


「個人推薦!?」


推薦状には個人推薦と学校推薦の2種類ある。

個人推薦は学校ではなく貴族などのお偉いさんに推薦してもらう方法。

学校推薦は中等学校の優秀者に校長が与える推薦だ。

その性質から個人推薦はものすごく少ない。


「誰から推薦されたの?」


「ヘイマンさんって人。知ってる?」


「ヘイマン様!?」


近衛隊隊長の名は伊達ではないらしくメアリーも知ってる様子だった。

ヘイマンさん元気かなぁ……


ヘイマンさんは母さんから僕が山籠りをしていることを聞いたらしくよく遊び?に来ていた。

その時に修行と勉強を見てもらっていたのだ。

戦闘訓練も勉強もきつすぎてヘイマンさんが来ているときが一番しんどかった。

でもお陰で勉強のために修行を中断する必要がなかったから5年という月日のほとんどを修行に回すことができたのだ。


「ヘイマン様ってあの近衛隊隊長の!?」


「そうだね。修行とか勉強を見てもらってた。いいおじいちゃんだよね」


ヘイマンさんは教えるのがとても上手かった。

歴史とか色んな事柄を紐づけて教えてくれてすんなり頭に入ってきた。

ちょっと熱血的すぎるところはあるけど……


「いいおじいちゃんって……ヘイマン様と言えば王国史上最強の騎士として有名なお方だよ?」


「え!?」


確かにヘイマンさんはめちゃくちゃ強いことは知ってた。

修行中はそのあまりの強さに何度もドン引きしたほどだ。

でもそんな伝説みたいな存在だとは知らなかった。

いつもはただの気のいいおじいちゃんみたいな感じだからなぁ……

最初は敬語で話していたけどそれももうやめるくらいには仲良くなった。


「そんな人にどうやったら修行をつけてもらうことになったの?」


「うーんよくわからないけどいつの間にか気に入られてた」


僕がヘイマンさんにスカウトされた日、バルザックを倒したという真偽を確かめるために模擬戦をしたのだ。

その模擬戦は負けてしまったけど終わった時ヘイマンさんはものすごく上機嫌で僕を近衛に誘ってきた。

それからというもの近衛が休みの日はよく遊びに来るようになってついには魔の山まで来たというわけだ。


「アランくんってすごい人だったんだね……」


「僕がすごいってわけでもないよ。僕は至って普通の一般人さ」


「え〜……普通の人がそこまでヘイマン様に気に入られるわけないよ〜」


メアリーはそう言って唇を尖らせる。

とは言っても僕は何も心当たりが無いんだから答えられるはずもない。

そうこうしているうちに大きな建物が見えてきた。

メアリーいわくここが受験生たちの宿らしい。


「ここから少し歩いたところに試験会場があるよ」


「そっか。道案内してくれて本当にありがとう。助かったよ」


「ううん。私もアランくんとお話できて楽しかった!」


そこで彼女と別れ僕はチェックインをした。

宿の部屋はとても豪華でどれだけまだ入学が決まってもいない受験生たちにこんな部屋を無料で提供するなんていかにノビリタス学園が大きな学園かを思い知らされた。

僕は宿で勉強の最終確認をしたり軽く体を動かしたりして過ごす。


そして3日の時間が過ぎいよいよ入試の日を迎えた───!

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