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第5話 私の覚悟(シャーロット視点)

「あ、アランくん!」


目の前でアランくんが倒れてしまった。

その体は傷だらけでいたるところから出血していた。


「ど、どうしよう……!アランくんが死んじゃう……」


アランくんは私にとって光だった。

気味が悪い髪だから、とイジメられて一人ぼっちだった私を救ってくれた男の子。

アランくんがいない世界なんて考えられない。


「血……血を止めなきゃ……!」


肩の傷からの出血が多すぎる。

医療や生物の知識があるわけではなかったが明らかに危険な状態であることはわかる。


「お願い!誰かいないの!?」


しかしここは街から離れている。

神隠しの噂がある小屋が近くにあるのだから人は寄り付かない。

アランくんは重体だから移動することもできない。

絶望に顔が染まりかけたその瞬間──


「み、見つけましたぞ!」


「こちらです!」


後ろから騒がしい声が聞こえてきた。

涙を拭き振り返ると4人の大人と1人の男の子がこっちに向かってきていた。

もはやその人たちの正体はどうでもよかった。


「怪我してる人がいるんです……!助けてください……!」


「怪我?ん?こ、これは!」


一番先頭にいたお爺さんが驚く。

そして慌てて救急セットを持ってくるように指示をした。

素早い手つきで傷を止血していく。


「アラン……?なぜこの男がここにいるんだ……?シャーロットを助け出すのは私のはずだったんだが……」


男の子がアランくんを見てつぶやく。

なんでこの人私の名前を知ってるんだろう……

それに私を助けるはずだったってどういうこと?

聞こうとしたけど何か不気味で聞けなかった。


「た、隊長!こいつはバルザックです!」


「な、なんだと!?」


隊長と呼ばれたお爺さんは手はそのままに顔をそちらにやって確認する。

その倒れている男の姿を確認した瞬間、目が驚きで見開かれた。


「ま、まさかこの少年が倒したというのか?」


隊長さんが聞いてくる。

私は首を小さく縦に振った。


「ばかな……バルザックは王国最強と言われる近衛隊に属していた男だぞ……それをこんな幼い少年が?」


隊長さんはアランくんへの止血をする手を早める。

数分後、全て止血を終えたけど隊長さんの顔は明るくなかった。


「アランくんは!?アランくんは大丈夫なんですか!?」


「……血を流しすぎてしまっている。このままでは失血死してしまう」


そ、んな……

アランくんが死んじゃう……?

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

このままアランくんとお別れなんて絶対に嫌だ。

まだアランくんとやりたいことがたくさんあるのに。

まだアランくんに好きだと言えていないのに。


「神様!どうかアランくんを守って……!」


アランくんの手を握り神様に祈る。

もう私にできることはそれしか残っていなかった。

すると──


「……!!」


「……!?これは……奇跡か……?」


空から光が降ってきて優しくアランくんを包み込む。

アランくんの顔色はみるみる良くなっていった。

な、何が起こったの……?


「ま、まさか……!君、いや、あなたは……!」


「その話は後だ、ヘイマン。先に撤退するぞ」


「はっ!撤退するぞ!」


男の子の命令で隊長さんが撤退の指示を出し始める。

私はアランくんの手を握りアランくんが助かったことに涙を流していた。


◇◆◇


「あ、あれ……?ここは……」


「アランくん!」


私は目を覚ましたばかりのアランくんに思わず抱きついた。

あれからアランくんは隊長さんたちによって家に送り届けられた。

しかし命に別状はなくなったものの、アランくんは熱を出して目を覚まさずにいたのだ。

丸2日も寝込んでいたため不安でしかたなかった。


「よかった……目を覚まさなかったらどうしようって思った……」


涙が溢れてきて止まらない。

アランくんは私を押しのけることなく優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。


「心配かけてごめん」


「ううん……私を助けてくれたんだもん。私には責められないよ……」


「僕さ、シャーロットが笑顔でいられるように頑張るよ。今度はシャーロットにこんな顔をさせなくて済むように次はもっと圧倒的に勝ってみせる」


心配をかけないように戦わない、とは言わなかった。

私はアランくんの言葉にチクリと少し胸が痛くなった。


「それは……私が聖女だから?だからそんなにも守ろうとしてくれるの?」


「……!?どこでそれを……」


アランくんはやはり知っているようだった。

いつからかは分からないけど私自身も知らなかったのにアランくんは知っていた。


「アランくんが気を失ってから私達は王子様たちに助けられたの。それで私は聖女なんだって教えてくれた……」


王子様たちは私にそれだけ伝えお城に戻っていった。

また会いに来るとの伝言を残して。


「そっか……王子が……」


「うん」


私達の間に重い沈黙が流れる。

でも、私は彼を突き放さなくてはならなかった。


「もう、私のことは守らなくていい」


「え……?」


「私のせいで傷つくアランくんを見たくないの!アランくんには平和で幸せな生活を送ってほしいから……」


泣くつもりはなかったのに再び涙が流れ始めていた。

私の一番大切な人、そんな人を突き放してお別れするのは心が痛くて苦しかった。

でも大切だからこそ戦いに巻き込んではいけない。


「シャーロット」


「な、なに?──!」


私はアランくんに抱き寄せられていた。

顔の距離が一気に近づき顔が熱くなる。

そんな私に対してアランくんの目は真剣そのものだった。


「僕はシャーロットが聖女だから守りたいんじゃないよ」


「へ……?」


「シャーロットだからなの。聖女だろうが町娘だろうが関係ない」


そのとき、私はアランくんの本心を本当の意味で知った。

アランくんは私が聖女であることを知りながらも1人のシャーロットとして接してくれていたのだ。

そのうえで守りたいと言ってくれた。


「本当に……?本当にいいの……?」


「もちろん。シャーロットじゃないとだめだよ」


「そっか……ありがとう……」


今、私の中で一つの覚悟が決まった。

アランくんが命を懸けて私を守ってくれるならば私だってそれに応えなければいけない。


私は身も心も、一生の全てをアランくんに捧げる。

アランくんになら私の全てをあげても後悔しない。

だから、ずっと一緒にいてね……?

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