5話ー幻の果実とトンネル
「主様…気持ちがいいですね…」
モーセ…肉体までイケメンか…。
何だろう。この負けた感。
「主様ほどではありませんよ」
ハハッってハニカム姿はもう見てられないね。
それにしてもこっちは見ていて安心するな。
「そんなに見つめないでください」
こっちには少しだけイラってするのは間違いじゃないよね。
おじさんチラッて見ただけなのに。
「申し訳ございませんでした」
『主様―!気持ちいいですねー!』
今登ろうとかしてないだろうなぁ。
壊さないようにしてくれよ。気持ちがいいんだからさ。
『こちら小さくて全員が入りきれておりませんー!』
あ、大きさ同じで作っちゃったからか。
「クリート作ってやってくれ」
『か、かしこまりました!キャー!』
キャーってなんだ?見えちゃいけないものでも見えちゃったか?それとも間違えて誰か男が入ってきちゃったかな?
―
「いいなぁ、いいなぁ。主様から直接お言葉を賜ったなんて…」
「羨ましい…」
「クリート…お前…」
「ハクエ様、申し訳ございません。こればかりは私にしか出来ないもので」
「フレア様、温度を上げないでください。せっかく主様が作ってくださったものなのですから」
「…クソォ…」
「兎を焼くときはあなたの能力を使われていましたよ」
「何だと…」
「作ってもいいでしょうか。拡張する方向で作りますね」
クリートが唱える。
『禁断産生:温泉、女湯拡張』
―
「相変わらず無から有を作るのも凄い能力…」
「能力を使った後体力をごっそり持っていかれるのが難点ですけどね…」
そう言うことは先に言って欲しかったなぁ。通りで疲れると思った。
なんか色々あったけど疲れも取れたし、これでゆっくりできるかな。
でもどうしようか。この温泉は誰が管理してくれるんだろうか。
あと排水…とか。
「我々に管理を委ねてはいただけないでしょうか」
モーセ…風呂上がりもイケメンだな。でもどう言うことだ?
「我々は水を司る龍の種族。このような水を綺麗にするのも容易いことです」
あ、浄化的なね。
でも沸かすのは?どうするんだろう。
「問題ありません。水温の加減も可能です。霧にしたり、蒸気を吐いたりもするので」
あ、それならサウナとかできるのかな。
「そのサウナ?と言うのはどのようなものなんでしょうか」
―
「なるほど。一人居ればできるかもしれません。そしてその熱波師なるものもできるやもしれません」
まぁ、今すぐじゃなくていいんだけどさ…。
とりあえず…夜になったし寝ようかな。
龍峰に飛ぶ。
洞窟の中で一人眠る…。
眠りたかったなぁ。
でもなぁ。別に臭くはないからなぁ。添い寝まではいいけどさ、明日朝早いからさ。
寝かせてよ。いくら丈夫な体でもさ。
誰も話聞いてくれなかったよ。何でかな。
みんなグースカピーだよ。それに何でセルケトとバハムートもいるのかな…。17人は流石に辛い。
でも陽昇っちゃったし、温泉入ってこよ。
―
「お楽しみのようで」
モーセ…。変わらない?君も元気そうじゃん。
「我々は水の中に入れば食事や睡眠をあまり必要としません。それにこの水は龍脈水なのでずっと元気ですよ」
あー…。だから頑張れたんだ。この水普通にできないかな。
「難しいですね。こればかりは」
ふーん…。そういえば海龍種ってことは近くに海があったのかな。
「大陸を隔てているのは海ですね」
あぁ、やっぱりあれ海だったんだ。
川とかじゃなかったんだ。
「主様、温泉とは良いものですね」
龍脈水だからなのか、お腹が空かない。でも食べたい。でも美味しくない。
「魚で宜しければ獲って来させましょうか」
モーセ…良い男だ。
女の子だったらすぐに惚れちゃうかもね。
「頼む」
「かしこまりましたぁ!」
意気揚々と出ていったけど、服、着なくて大丈夫なのかな。
まぁ、基本的に裸見たいなものだし大丈夫なのかな。
それで何でみんなこっちに入ってくるのかな。おかしいな。こっち男風呂なんだけど。
第二ラウンド?嫌だなぁ。いや…マジで。
お風呂をさ、汚したくないから。
「外でなら?」
そう言う問題じゃない気がするんだけどなぁ…。
モーセ…早く戻ってきて…。
―
「主様、お魚用意できました」
あ、鮭だ。美味しそう。
内臓を取り出して、3枚におろして皮剥いで。皮は別途で炙ろう。
あー…ちゃんとした海水なのか美味い…。塩味が効いてて美味い。
ここにくる前はずっと点滴だったからなぁ。これで美味いってことは兎肉も果実も相当不味かったんだろうなぁ。
本来だったらこういう場所の木の実とかって美味しいイメージなんだけどなぁ。
秘境にある幻の果実とかじゃないんだなぁ。
もう一枚…。
あれ…?無くなっているなぁ。どうしてだろうなぁ。
何でハクエが両手に持って食べているのかなぁ。骨ボリボリいっているけど大丈夫かなぁ。
皮炙りで食べるしかないかなぁ。
「そんなに美味しかったのですか」
「かなり。美味い」
「定期的に届けさせますけど…」
「他に迷惑がかからないくらいに頼む」
「か、かしこまりましたー!」
「モーセ…何故あやつばかり…」
こればかりは得手不得手があるからね。
それじゃ堂々と魔族の世界行けるかな。
えーっと…どこだっけ。魔族の世界は…。
「魔族の世界は南東ですね。行きましょう」
あ、案内してくれるのね。バハムートは優秀だなぁ。
「そ、それほどでも…」
「私も参ります!」
「私も!」「私も!」「私が!」……。
えーっと。とりあえずバハムートだけでも良いかな。トンネル掘るだけだし。
『…』
あーわかった。わかった。ついて来たい方はどうぞ。
羽を生やして、バハムートの後ろを飛ぶ。
このまま山脈を越えても何かを持ってくる時にはトンネルは必要だろうなぁ物資運輸する時くらいは…。
「あの!危ないです!」
え?何が…
山に突っ込んだ。痛みはなかったけど。飛行中に考え事するのは良くないなぁ。
「主様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。気にしないでくれ」
「あ…主様…凄い後から冷たい視線があるのですが、気のせいでしょうか」
気のせいじゃないだろうなぁ。
俺の不注意だからバハムートを怒るなよー。仲間なんだから怪我とかさせるなよー。
「主様…ありがとうございます」
いいよ。仲間内で争っていたらキリないし。
さて、それにしても激突したらだいぶ削れた。それでもどれくらいなんだろうなぁ。
「ごく一部ですかね」
だろうなぁ。向こうまで行ったことがある人いるのかな?
「一度だけ」
えーっと…。誰?
「我がドラゴン族の一体ですね」
人化できるやつまだいたんだ。
「まだ名前を頂いておりませんが、一度だけ山脈を超え魔族の世界に行った事があります。大体山の長さは10kmくらいです。その後に大海原があり、幼龍の時には丸20日くらい飛び続けた覚えがあります」
今だと10日くらいになるのかな。結構遠いなぁ。
それと10kmくらいのトンネルってよくわからないなぁ。ちょっとずつでも掘っていくような感じにしようかな。
どうやって掘ろう…。
アスナの能力の土変動は綺麗に掘れるわけじゃないみたいだ。割る。とかならできるみたいだけどここの土が異常すぎて変に罅がはいるみたいだ。
フレアの焔でも溶かせるが、溶けたものが下に溜まってしまっている。
何かいい方法がないかなぁ。
「私の能力なんてどうでしょうか」
レイク…破壊系の能力か。ハクエに似た能力だけどハクエの攻撃は一直線上ずっと無にしちゃうからなぁ。直線上に人なんて居たら危ないからなぁ。
「私の能力は触れているものを見える範囲ですが無制限に破壊が可能です。やろうとすれば山を破壊することも可能ですか…」
いやぁ、そうしちゃうと雪とか雨に濡れちゃうからトンネル状でいいや。
「私の能力でもこの土、岩は破壊できませんが…」
ここの土地って異様なんだなぁ。
ハクエの能力も無効みたいだし。なんかこの土地は曰くがあるのかな。
壁に触れて、能力を発動させる。
高さ3m横幅5mくらいで半球上に掘ればいいかな。
塵となり、風に運ばれる。
一応、能力封じ見たいな感じで使えそうかな。
いやぁ。ソウエの能力も扱い上手くいけば推進力にもなるだろうし、ゴミ集めにも使えるなぁ。
一度に掘れるのもおそらく1cm強。
範囲が範囲だからだろうか。
「やはり主様は異様なようです」
「同じ能力なのに…名を頂いてほんの少しだけ削れるようにはなったみたいですが…」
レイクも1mmくらいは掘れていた。1mmくらいの範囲だったけど。
少し涙になっているけど、できなかったことができるようになったのって凄いことだからね。もう少し喜んでいいと思うけどね。
「が、頑張ります!」
それにしてもこの能力相当消費するなぁ。
まぁ1割くらいかぁ…えっと…10kmくらいだっけ…?
どれくらいかかるんだ?計算は苦手なんだよなぁ。
「これ食べてください」
あ、マズイやつだ。
でもお腹も空いて来たところだし。
…。あれ、甘さを感じる。これ消費しないと美味しく感じないやつなのかな。
それに疲れも無くなる。
「これ美味かったんだ」