2話ードラグニアと名付け
とりあえず、あまり美味しくない果実を食べながら色々な話を聞く。
まずはここについてだ。
「古代龍種は全部で15人です。神龍王様、未来龍様、智世龍様、赫焔龍様、絶氷龍様、雷電龍様、嵐豪龍様、地大龍様、闇暗龍様、聖光龍様、天龍、破龍、創龍、理龍、そして私願龍と申します」
うーん、長い。
そしてかっこいいけど絶対忘れそう。普通の人の名前でも元々忘れやすい。頑張って覚えたいけど難しそうだ。
「であれば、名付けをしていただいた方がいいかもしれません。少しだけお力を頂きますが、忘れないように」
正直、人に名をつけるのもどうかと思うのだけど…。
「付けてくれれば我々はその名前で呼び合う。何も問題ない」
そうか…そうかぁ…。
何かみんな凄そうだけど、凄いさがよくわからない。
ちなみに西洋龍みたいな手足が太い龍はいないのだろうか。
「龍峰には居ませんが、他の世界には居たと思います」
そうなんだ…。何でもいるんだなぁ。
「それで名前の方は付けていただけるのでしょうか」
いいけど…時間かかると思うんだよなぁ。それでもいいなら…。
「我々は構いません。それと一つお伺いしたいことがあるのですが」
何だろう。変なことを言われなきゃいいけどなぁ。
「主様は何というお名前なんでしょうか」
…全然覚えてないんだよなぁ。
多分、あったんだろうけどそんなこと考える暇もなく激痛とかで一年過ごしてたから色々抜け落ちているような感じするんだよなぁ。何歳とか、何人とか全くわからない。
「そうですか…神の代行者というのであれば神代様とお呼びしてもよろしいでしょうか」
神って何か仰々しい気がするんだけど、なんか嫌だなぁ。
「神代殿、それでは休憩できる場所までお送りしましょう」
でも思ったんだけど、なんでみんな女の子なのかな。
男性が一人もいない気がするんだけど。
「我々は分身という形で子を産み落とす。上位になればなるほど女性の率は高まる。雌雄で交尾する種もいますが、そこまで多くはないです」
でも、何でだろうなぁ。君たちの服がさっきより乱れている気がするんだけどさ。
「強い種を保存するのは節理ですよ」
流石に15人相手はちょっと…。
何だろう。結構疲れるはずだったのに、全然疲れていない。
一応この世界にも太陽と月はあるみたいだ。
陽を浴びるとどうしても体を伸ばしたくなる。
うん、腰は痛くない。
かなり丈夫な体だなぁ。睡眠も多分3時間くらいしか取ってないんだけど、龍種の能力はどうやら凄いらしい。
それにしても毎日15人はやめてほしい。せめて一人か二人にしよう。じゃないといくら丈夫な体といえ体を壊す気しかしない。
宴で残っていた果実を食べながら辺りを見る。
龍峰というだけあって、ここはかなり高い場所にある。そして周りには山脈が円状に連なっている。
山の向こうは見えなかったが、神様?から見せられた箱庭の構造は六芒星状に水が流れていたことを思い出す。海のような感じなのか、川のような感じなのかはわからない。見てみなければそれはわからないだろう。
崖に座っていると何やら後から叩かれたような気がした。
攻撃自体は効かない。
なので後を見ると兎がいた。どうやら角が折れたのに驚いているようだった。
少し睨むだけで兎は失神する。
今日はこいつを料理してみるか…。
どうやって料理道具を作ろう。まずはそこからな気がする。
そこら辺に落ちている石を加工する。
石を石で研ぐ。
石器時代はこんな感じだったんだろうな。
皮を剥ぎ、血を抜く。
うん、臭い。
血抜きをしている間に火を起こそうとするが、みんなはどうやって火を起こしていたんだろうか。
そういえば、赫焔龍というのがいた気がする。焔を使えるのだろうか。
少し火を起こすように念じてみる。
人差し指から小さな火が出る。
どれくらいまで強くできるのだろうか、少しだけ興味が湧いたが、兎を焼くことに専念する。
器のような石があったのでその石の上に切った兎の肉を焼く。
うん、昨日よりはいい匂いだ。
炭っぽさは一切なさそう。
全部焼き終わる頃には全員起きてきた。
「美味しそう」
「なるほど…火加減…ですか」
それは焔を吐いたらそうなるね。むしろよく中身まで燃え尽きなかったね。
「強くなければここでは生きていけませんから」
納得。でもどうしても動物臭さが抜けない。
やはり臭い消しできるものや香辛料などが欲しい。
難しいだろうな…。世界を隔てる水が海であれば塩もできるだろうが…。
「そういえば名前を決めてくれたのだろうか」
研いだり、焼いたりしたときに考えはしたのだが…。
どうしても付けないとダメだろうか。
「付けて頂いた方が嬉しいです。大抵のテイマーは従者の名前をつけるものです」
だろうなぁ。でもカッコいい名前とか可愛い名前とか思いつかないんだよなぁ。
「そこまで深く考えなくてもいいです。直感で第一印象って感じですね」
ちなみに神代と名前をくれたが、みた時は何と思ったのだろうか。
「化け物ですね」
「化け物です」
少し、心が傷ついた。
一応考えてはいたが、あまり期待はしないでほしい。
「お願いします」
神龍王=ハクエ、未来龍=グレール、智世龍=オウギ、赫焔龍=フレア、絶氷龍=ブルーガ、雷電龍=メリー、嵐豪龍=ソウエ、地大龍=アスナ、闇暗龍=オスカ、聖光龍=テンノ、天龍=アマネ、破龍=レイク、創龍=クリート、理龍=ワダチ、願龍=ナガレにしようと思ったけど、実際自分で覚えられるか心配だから。
「私の名前はナガレですね。ありがとうございます」
そうだけど…何だろう。体の力が抜けるような…。
「名付けは少しお力を頂きますと先に言わせて頂いたと思いますが」
そういえば…そんなこと言ってたなぁ…。
やばい。眠い。
瞼が閉まった。
これ死ぬやつかな。
何か名前つけたら死ぬとか少し悲しいかな。
どうしようかな。みんな心配してないかな。してないか。
あ、瞼開きそう。
「神代様、おはようございます」
どれくらい寝てたんだろう。ほんの数分くらいだと思うんだけど。
「1ヶ月寝ておられました」
どうしてかな。なんで服が乱れているのかな。動けない体で変なことしてないよね。ね。
返事が誰からも返ってこなかった。
倒れている人間にすることじゃないと思うけど。それでも1ヶ月くらいか…ん?この世界には時間の感覚があるのか。一応陽を見たり月を見たりしていたから時間の概念はあると思ったんだけど。
「人間の世界では日が30回落ちれば1ヶ月という風になっているらしい」
なるほど。いろんな種類の生物がいればそうなるか。
それじゃ、本当に1ヶ月立ったのか。困ったもんだ。
もう名付けしないぞ。
多分することになるんだろうなぁ…。そうだろうなぁ。
「人間、魔族、天使、亜人などはすでに親などから名前を頂いているので基本的には名付けは不要です。孤児、名無しの魔物などは名付けを必要としますが」
それじゃこうなることはもう少ないかな。
「よっぽどじゃない限りは」
君たちより強い生物はここにはいるのだろうか。
「龍種の中では我々より強いものなどはいないでしょう。しかし、ここにずっと住み続けているのでどのような進化をしているかは的確に把握はできかねます」
それじゃ一応居るっちゃいるのか。ふーん。
「知っているものでは魔物の狼族、蜘蛛族、亜人の獣人、人間のエルフ、魔族の古代種悪魔辺りでしょうか」
意外といるじゃん。意外と強い敵多いんだなぁ。
「どれも神龍王様…いえ、ハクエ様には敵いません。なので必然的に神代様は大丈夫かと」
そうなのか…。
そういえば、みんなってどんな力を持っているんだろうか。
少し気になる。
「我々の能力についてですか。わかりました」
神龍王=ハクエ:無に帰す。白髪、未来龍=グレール:未来を見る。灰髪
智世龍=オウギ:毒や呪い系。紫髪、赫焔龍=フレア:焔系。赤髪
絶氷龍=ブルーガ:氷系。青髪、雷電龍=メリー:電気系。黄髪
嵐豪龍=ソウエ:風系。緑髪、地大龍=アスナ:土系。茶髪
闇暗龍=オスカ:闇系。黒髪、聖光龍=テンノ:光系。金髪
天龍=アマネ:天候系。銀髪、破龍=レイク:壊す系。プリン髪
創龍=クリート:創る系。逆プリン髪、理龍=ワダチ:契約系。橙髪
願龍=ナガレ:星系。水髪。
「という形ですかね。簡単にですが」
本当に簡単だけど、それでも色々な能力があるんだなぁ。
これが全部使えるっていうのも色々怖いなぁ。
土と焔の能力を掛け合わせて…。
できた。マグマ。うん。危ないから戻しておこう。
氷を調整すればいいかな。
よし。大丈夫そうだ。
「さすがですね。この大地は我々古代龍種でもなかなか傷つけることができないのに」
…ふーん。
そういえば、ここ1ヶ月ご飯食べてなかったけど、どうしてたの?
「龍脈水を飲まさせて頂きました」
唇に手を触れないでほしいな。何か変な想像が。
「間違えではないですよ」
間違えであって欲しかった。でも、それしかないよね…。はぁ…。
でも、その龍脈水とかって言うやつ結構やばいやつじゃないの?
「普通の人間であれば死にます」
…。
「大丈夫です。すでに我々との契約が終わっていたので大丈夫だと思いました」
…。いやぁ。怖いことするなぁ。
「自然回復能力が上がる飲み物です。普段は飲みませんが」
そんなものを飲ませるなよ…。
まぁ。飢餓では死ぬのかな。
「他の世界では蘇りの水と言われていますが、そのようなことはありません」
…。この世界って世界樹とかってある?
こう…葉っぱで傷が治るとか。
「世界樹…何か聞いたことありますね」
これあれだ。世界樹関係と龍脈水を掛け合わせたら死んだ人も復活するんじゃないかなぁ。
ま、また今度だ。
今はどうしようか。
「他の世界へ行くと?」
できれば色々な世界を見てみたい。
まずは美味しいものを食べたい。どうやったら外の世界に行けるのだろうか。
「見てわかる通り、飛べでもしない限りは山脈を越えることができません」
誰かに乗って…。
「外の世界に龍種が来たらそこに住む者たちはどう思うでしょうか?」
あー…。侵略かなぁ。
「ですよね。なので飛ぶのは無理です。一番はトンネルを作るのが一番でしょうが…あ…。そういえば神代様はこの土地を弄ることができますからできるのではないでしょうか」
こうして外の世界への道を作る仕事が始まった。と思ったけど、やることがまだあった。