ガラスの小瓶
触れると壊れそうだからと
触れないままでいるのは優しさ
けれど
触れると壊れそうだからと
遠巻きに見ているのは優しさか
傷つきひび割れた硝子の小瓶に
水を貯めることは出来ない
どこからか染みだした水滴は
小瓶の足下を濡らして溺れる
それでも
手放せなくてと飾り置く
それは誰のための感傷だろう
ひび割れたから
もう使えないから
そう言って手放すことは
無情なのかもしれないけれど
そうして遠巻きに眺められるだけの小瓶は
果たして幸せなんだろうか
それでも幸せなのかもしれない
持ち主の側にいることが出来る、そのことが
本当は終わらせたいかもしれない
在るべき姿でないままに無為に過ごすその時を
だとしても
触れると壊れそうだからと
触れないままでいるのは優しさ、なんだろう