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転生したらWですかぁ

作者: た〜

いかにも「なろう」なタイトルでそれほど「なろう」らしくない話にしてみたつもりです。

 異世界転生する時のお約束としては、前世で死ぬときは劇的なはず。曰くトラックに轢かれそうな美少女を助けて身代わりになるとか。だがしかし世の中そう甘くない。美少女が交通事故に会いそうな場面に遭遇するなんて宝くじを当てるくらいの確率だろう。さらに事故なんてものはぶつかりそうだと思ったときには手遅れ。終わっているものだ。オレ自身が良い例だ。横断歩道を渡っていたら信号無視の軽乗用車が突っ込んできた。ドライバーが急ブレーキを踏んでいれば助かったかもしれないが、あろうことかアクセルとブレーキを踏み間違えやがったようだ。エンジン音が高まって加速してきた。そしてオレは宙に待った。


 どういうわけか、事故に遭うとその様子は客観的に見えるらしい。あ、ヤバイ。ぶつかりそう。やっぱりぶつかった。撥ね飛ばされたぞ。これは頭から落ちる、受け身をとる訓練しとけばよかった・・・・いや、訓練しても受け身は無理か。アスファルトと頭がぶつかったところでブラックアウト。


 ここは・・・間違っても救急車の中や病院のベッドじゃないな。どうも回りは砂利っぽい。砂利?事故に遭ったのは町中だ。アスファルトではあってもこんな土つち砂利じゃりしてなかったはず。オレを轢いたやつが逃げたとしても、回りに通行人も自動車も少なからず通っていたはずでこんな風に放置されることもなかろう。と、いうことは・・・


異世界転生きたー


ここから始まる異世界ライフ。待っているのは獣耳美少女と一緒なチート冒険か?


 はい、なめてました。世の中そんなに甘くありませんでした。チート能力もらって美少女と出会って・・・なんて大それたイベント自分に縁があるなんて考えてごめんなさい(涙)現実は吹けば飛ぶような塵芥(ちりあくた)でした。いえ、現実風に飛ばされ転がっています。手も足も出ません。いえ、ありません。単なる小さな粒です。


 風まかせに転がっていると、やがて窪みに嵌りました。こうなるともう身動き取れません。いえ、これまでも自分の意志とは無関係に転がっていただけですが


 そのまま幾日か過ぎたある時、雨が降ってきました。久しぶりのイベント(?)であります。まあ、イベントとは言っても単に濡れるだけ、と思ったらなんか白いものが生えてきて、地面に潜って伸びていきます。根っこでしょうか?そして上の方にも何やら伸びていきます。茎、ですね。平べったいものが広がします。これは葉っぱ、と。


 俺の粒(オレ)はどうやら種だったようです。そして今のオレは


転生したら(くさ)ですかぁ


まぁ、草だわな。根、茎、葉はあるけど幹はないし

とりあえずタイトル回収しておきました


 あぁ、日の光美味しいぃー。雨が止めばやがて晴れ渡るわけでして、日差しを思う存分に浴びて俺の葉っぱ(オレ)はもう幸せいっぱいの気分。人間だった頃は日の光を暖かくて気持ちいい(逆に暑くて不快)と思ったことはあるけれど、美味しいと思う日が来るとは想像もしませんでした。植物ならではの感覚ですね。


 根っこ(オレ)葉っぱ(オレ)が作った養分を(オレ)から受け取り勢力を広げます。(オレ)を増やし葉っぱ(オレ)を広げていきます。

あれからどのくらい過ぎたでしょう。順調にオレは花を咲かせました。虫は寄ってきたようですが他所から花粉を運んでこなかったようで自花受粉ですね。

 なので俺の種(オレ)は、まんまオレです


 このままオレの勢力をどんどん広げていこうと思いました。フラグというやつでしょうか?都合の良い展開を予想すると不幸が訪れるようです。


 ヤツが来ました。そうです、(くさ)の天敵草食獣です。見た目は・・・

植物に視覚はありませんのでどんな見た目か知りようがありまえんね。でもなんとなく雰囲気的には馬っぽい?


 馬はいけません、馬は。牛ならば地上に出ている部分しか食べないので根は残ります。根が残っていれば復活可能です、それが(くさ)というものです。しかし馬はいけません。やつは引っこ抜いて根こそぎ食べてしまいます。

 案の定俺はまるごと食べられてしまいました。葉も茎も花も種も根も。噛み砕かれて胃袋に送られ胃液をぶっかけられて、小腸ではバクテリアに襲われます。もうすっかりお陀仏です。生き残ったのは種一粒(オレ)だけです。しかしもともと種一粒からのスタートだったので、最初からやり直すだけです。へこたれてなんかいられません。


 やがて小腸を通り過ぎ大腸を経て直腸に。それはつまり・・・・

う○こです。いや、伏せ字で詭弁を弄している場合じゃありません。ベンだけに・・・ いえ、ダジャレじゃありません。本当です信じてください。大便です、馬糞です


 元人間としては周り全体が糞だなんて、というか自分も糞の一部だなんて物凄く嫌なことの筈なのに、なぜかとってもいい気持ちです。ここまでくれば危機を脱したという安心感とともに周りが養分たっぷりであるという実感故でしょうか


 やがて落下の感覚。どうやら排泄されたようです。ひゃっほーう、娑婆に復帰だぜ。今度は、やつが来ても食いきれないほどに音も茎も葉も伸ばして種もバンバン作ってやるぜ。幸い肥料はたっぷりだ。て、あれ?そういえば馬糞って直接肥料になったっけ?落ちなとかと混ぜて時間をかけて発酵させてからじゃないとダメだったような気がする。勉強不足だった。後悔先に立たず。まあ、わかっていてもどうすることも出来ないんですけどね。


 もともと馬糞を直接肥料にしても問題ないのか、実はここが異世界で法則が違っているのかは定かじゃありませんが、俺は馬糞を肥料にぐんぐん繁茂していきます。前回とは比べ物にならないくらいにしっかりと根を張り茎や葉も茂っていきます。どうやら前回はひどく痩せた土地だったようです。


 ところで、馬糞のなかの種は俺の種(オレ)だけじゃなかったようです。周囲にはオレ以外の草も沢山生い茂っています。


「どうもはじめまして、お隣さん。・・・(オレ)です。」返事がありません。

「おーい、聞こえますかー」まあ、こちらも声に出している訳じゃなく、念を送っているだけですが・・・

「無視するんじゃねー」凄んでみてもやっぱり返事はありません


 意識があるのがオレだけなのオレの声が届いていないのか、返事をしているのにオレに届かないのか、あるいは無視しているのかはわかりませんが、他のW(くさ)とコミュニケーションをとることはできないようです。


 オレも他の草もぐんぐん成長しやがて花が咲きます。前回のオレは自花受粉だけでしたが今回はそうは行かないようです。俺の花(オレ)雌蕊(めしべ)に他の草の花粉が受粉します。するとそこから出来た種はオレじゃありません。どうやら他の草の花粉が受粉してできた種はオレの子供ということになるようです。前世では子供を残すことは出来ませんでしたが、今世では母親(?)になってしまったようです。


 俺の花粉(オレ)も黙ってはいません。他の草の花の雌蕊に付着しましたので花粉管を伸ばします。この雌蕊に付着したのが俺の花粉(オレ)だけならのんびりしても大丈夫かもしれませんが、他の草の花粉もあります。こうなると競争です。競争となると必死であります。


勝ったぞー!!


 競争を勝ち抜いた俺の花粉(オレ)が他の花の種に受粉しまいた。しかし次の瞬間花粉(オレ)はオレでなくなりました。オレとしての役割を終えたということでしょう。まあ、何も成し遂げることなく無に帰した花粉(オレ)よりは良かったと言えるでしょうか。


 なにはともあれ、オレは父親(?)にもなりました。草生(人生)何が起こるかわからないものです。

 他の花の雌蕊に付着した花粉以上に自分の花の雌蕊に付着した花粉(オレ)は必死です。オレがオレであるために必至です。必至だけに必死です。いえ、何でもありません。忘れてください


 無事に自花受粉も済ませ、俺の種(オレ)も出来ました。これで当面は安泰でしょうか。安泰であってください。フラグだなんてことは言わないでください。


 そして季節が進み秋が過ぎて冬になります。葉も茎も草も枯れていきます。どうやら(俺の草)は一年草だったようです。しっかり自花受粉で(オレ)を残しといてよかったです。先見の明です


 春が来ました。芽吹きの季節到来です。と思ったら、火事です。枯れ草が燃えています。この危機を乗り越えられるのでしょうか?心配無用でした。どうやら()の種は耐火仕様みたいです。世の中にはそういう植物はいくらでもあります。燃えた後は萌えの番です。すみません、ごめんなさいまたやってしまいました


 草が燃えた後の灰は良い肥料です。しかも害虫も居なくなってとっても快適。(俺の草)もオレの子供の草も他の草(他人)もぐんぐん成長します。もう、ヤツ()が来ても食い尽くされることはないでしょう。数は力です


 こうして(くさ)は世代交代を重ねていきました。オレも頑張って自花受粉を繰り返します。ところがであります、自花受粉を繰り返すと(しゅ)としての力が弱体化していくようです

 「(たね)」と「(しゅ)」紛らわしいです。閑話休題


 どうやら(オレ)はへんな病気にかかってしまったようです。葉は光合成する力を失い根も葉も活力がなく、花を咲かれる事ができません。周りはオレの子孫の草も他の草(他人)も(全然区別できませんが)若干萎れてはいますが、問題なく花を咲かせています。どうやら自花受粉を繰り返した弊害のようで、オレだけがこの病気に弱かったようです。結構広範囲に勢力を広げた(俺の草)は全滅のようです。


 こうしてオレの草生(じんせい)は終演を迎えたのであります。まあ、沢山子孫を残したので良いのではない異でしょうか・・・


あれ、再び転生?


今度の体は・・・


 ブヨブヨ。ゲル状の物体が膜に覆われているようです。もちろん変形は自由自在、とは言っても確固とした人型にはなれません。あくまで不安定な変形です。要するにこれって、スライム?この今度こそ先愉快なドラゴンと友達になってゴブリンの守護者になってオークを従え魔王へと進化を遂げるチートスライム生(人生)開幕?


 もちろんそんな美味しい展開なんてありません。何やら巨大(小さな)生物が接近してきます。これはどうやらミジンコのようですね。ということはオレはアメーバだったようです。

 食われる食われる。・・・食われました


 転生を認識してからたぶん1分ありません。第三の(スライム)生、秒で終了です。


 次は何に転生するのでしょうか?人間から(くさ)ときて、次はアメーバ。急激に退化している気がします。これ以上の退化はできれば避けたいものです。

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