魔剣の勇者
「お前に魔力の使い方を教える」
件の紙を見るとユーリがいきなりそんなことを言い出した。
「この世界での魔力の使い道は2つ。1つが魔術だ。魔術の使用には、魔力と魔術式、つまり詠唱を使う。詠唱とは魔術を簡単に扱う為に先人が生み出したものだ。お前の世界風に言うなら数学の公式のようなものだ。そして、もう1つが魔法だ。魔法とは、魔力を使い自分だけの法を、いや世界を作るものだ。その世界では、自分が絶対であり最強である。強力である故、魔力の消費も激しく、さらに、生み出した本人にしか扱えぬ為、決まった詠唱も存在しない。自分で編み出すしかないという、まあ超特大難度の最強魔術のようなものがある」
「あの、何故いきなりそのようなことを?」
「お前のステータスはサポート魔法に特化している。別に身体能力は低くない。むしろ高いぐらいだ。だがその細い身体では、前線は張れない。何よりお前は攻撃魔法への適正がない。サポート魔法は、他の人間の5倍以上の効果でつかえるのにだ。だからお前にはサポートをメインにして戦ってもらう。サポートの基本は、回復魔術と能力上昇魔術だ。ここまで言えば分かるだろう」
どうやら、私には華々しい主人公としての道は用意されていなかったようだ。いや、異世界に呼ばれてサポーターって。そんなことやってるの私だけだと思う。別にいいけどさ。
「分かりました。要は、魔術を使いこなすしか私が戦場に立つ術がないということですね。でも、一切攻撃魔術が使えないこととかありますか?」
「それが現実だ。だが、お前は一切、攻撃手段を持っていない訳じゃない。お前は、精霊魔術という希少な魔術を使用出来る。今の時代で使える者はお前くらいだろう」
「それを使いこなせれば私も攻撃魔術が使えるってことですね!」
これで私にもかっこいい戦闘が
出来る訳なかった。
「いつまでへこんでんだ。サポート魔術は使えるようになったんだから十分だろ」
精霊魔術は消費する魔力が半端ないらしく、今の私が使用すれば1時間も持たないらしい。そのため、大人しくサポート魔術を身につけ、街を出た。
「そろそろモンスターが出る区域に入る。気を引き締めろ」
ユーリがそう言うのとほぼ同時に熊の様な巨体に蟹の様なハサミが着いた、モンスターがぞろぞろと湧いてきた。
「我、命ず。彼の者を癒し、護り、強靭なる者にせよ!身体能力強化、行きます!」
先程習った詠唱を間違わず読み上げ、手の平をユーリに向け魔力を込めるイメージをする。すると彼の身体が一瞬優しく光った。ユーリにバフが掛かったのだろう。彼は、ゆったりと背中に収めていた剣を抜いた。それは、彼が着けている鎧の様な装飾が施されていた。全長130cmはあろうかという大きな剣。美しく、艶かしい。そして何処か禍々しいその剣に私は目を奪われた。だってあれは所謂、
「魔剣ティフォナス」
そう、魔剣。悪役が使う様な呪われた剣。それを使う勇者って一体何者?