伝説のバンドの伝説曲
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「こんなのずるいよ。今日は絶対に泣かないって決めてたのに。アネットの意地悪」
私は溢れ出る涙を抑えきれずステージに上がった。
「ヒメ先生!会いたかった!」
クリスティーナ姫は演奏を終えると私に抱き着いてきた。
「私ずっと練習したんだよ。いっぱい練習したんだよ。ヒメ先生が帰るまでに絶対に聴いてほしくて!」
号泣しながら私を抱きしめた。
「クリス。8点です。なにが足りないか分かりますか?」
私は家庭教師をしていた当時の口調でクリスティーナ姫に話しかける。
「え?ヒメ先生?え~っと、、、あっ!最後に弾かなきゃいけない曲が決まってたんだ!」
「そう、それは私と今から弾きましょう。そして最後の1点は?」
クリスティーナ姫は難しい顔をしながら考えていたが降参とばかりに肩をすくめる。
「ステージに上がったら常に笑顔よ。
さあ涙を拭いて一緒に弾きましょう」
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ドワーフ族の酒樽太鼓隊、エルフのオーケストラ、王国騎士団による円舞など音楽祭の熱気は上がり続けている。
インナも得意の竪琴を披露してくれていた。
夕焼けをバックにアカペラを披露していたサンドストレーム侯爵家の『かしまし四姉妹』神々しかったな。
早く結婚すればいいのに。
途中の食事休憩の時に屋台で買ったサーターアンダギーのような揚げパンもどきにリベンジしたら相変わらず不味くて懐かしくて思わず泣いてしまったのは内緒だ。
泣いても笑っても、いよいよ最後のライブ!
舞台裏でメンバー5人集まって円陣を組む。
どんな風に声を掛けたか覚えてないけど、最後に重ねた手の温もりは決して忘れない。
私たちが生きた証なんだから。
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