間違い
もう、どうしようもない。
私は決めた。ファンタジーなんてかけるもんじゃないもの。
自転車でスーパーに行く途中、決断した。
こうなったら、自分と雄二郎の話で投稿しよう。奈津子の話より、身バレしない程度の、物語を作る私の話を。
こうして、私は自分のしょぼい話を猛然と書き始めた。なろうファンタジーなんて簡単だと作り始めるところから、ここまでの物語を。
ちょうど、文芸作品を募集しているサイトがあったので、もうそれに投稿した。
いつもは、こう言ったログインまでの手続きは億劫なのだが、人間、やれば出来るのだ。
とりあえず、雄二郎は仕事を見つけたし、私は、力試しをすればいい。
結果は一ヶ月後に発表される。
とにかく、書く。
間違いなんて気にしていたら、先には進めない。
私は、奈津子の小説を読み返しながら、自分と雄二郎との出会いを思い出していた。
思えば、あれこれと要求ばかりの男だった。
急な雨でも、荷物を率先して持ったり、手伝ったりはしない奴。
そのくせ、私たちの知らない、仕事仲間に不用品を押し付けられて、フリマに持ってきたりしていた。
ふふっ( ´艸`)
つい、思い出し笑いが込み上げる。
その人は、段ボール二箱分のプロレス雑誌と、何か、ファギュアを雄二郎に持たせていた。
なんでも、家が手狭になって、奥さんに捨てるように言われたんだそうだ。
「あれ?この本、結構、保存状態が良いし、レアな雑誌じゃないかな?」
と、縦村は、雑誌を並べながら言った。
が、私達、女性陣にプロレスファンはなく、自分達の品物を黙々と並べていた。
否、雄二郎もまた、プロレスには興味がないようで、折角の縦村の話題を上手くキャッチ出来ずにいた。
「高田さん。ね、これ、古本屋に持っていったらどうですか?」
縦村は、いつになく粘った。が、雄二郎は面倒くさがりなので、それを嫌がる。
「でも…フリマで売れって言ってたし、売れなかったら捨てるから良いって言ってたから。」
雄二郎は、子供のようにそう言って、あとは綾子からジュースを貰って飲んでいた。
日用品や少女雑誌の付録の山の中、プロレス雑誌は、独特の存在感で客を集めていた。
その日、雄二郎は、2000円を稼ぎ、奴は、後にその2000円をまるまる依頼者に渡して、私達を不満にした。
その後のファミレスでの反省会のメインは、雄二郎になった。
「どうして、みんなあげちゃうのよっ。場所代だってあるし、取りに行ったり、ガソリン代もかかったでしょ?」
と、綾子に言われ、
「だって、悪いでしょ?たった2000円だし。」
と、口を尖らせて不満を言い、500円しか売り上げの無かった奈津子を不機嫌にした。
「悪くはないでしょ?手数料くらい取ればいいじゃん。
アンタ、格好つけられないほどお金無いんだから。」
と、奈津子はいつになく辛辣に雄二郎に言った。
「まあ…いいじゃないですか。あっ、ピザ、来ましたよ、食べてください。」
と、縦村が奈津子の機嫌を良くしようとしたが、いつも、お金の無い雄二郎に気を使って、ピザを頼むその姿が、逆に奈津子をヒートアップさせる。
「ほら、雄二郎、いつも、縦村さんにピザをご馳走になってるんだから、向こうから手数料くらい貰って、たまには、ピザ、おごり返したらよかったのよ。
それにしても、頼んだ男も失礼よね、ガソリン代くらいくれたって」
奈津子は、500円のピザを睨みながら怒る。
「まあ…高田さんも悪気はないし、俺も車に乗せてもらうから。」
と、縦村がフォローするなか、雄二郎は物欲しそうにピザを見つめていいわけをしていた。
「1000円くれるって言われたけど、俺が貰わなかったんだ。」
と、たまらず雄二郎は叫び、
「なんでよ?」
と、女性陣に一斉攻撃され、縦村は面倒くさそうにそのやり取りを見つめていた。
「いいじゃない。それで彼はとても喜んでいたんだから。」
雄二郎は仏様のように笑い、私達は般若のような顔で文句を言っていた。
「たまには、私達を喜ばそうとか、考えないのっ、あなたはっ!!」
フリマのエピソードなら、沢山飛びだしてくる。
名古屋にいきたい気持ちについても。
私は、それらを軽く書いて投稿した。
五万字は書いた。
が、500円なんて、夢のまた夢だと思い知った。
雄二郎が出稼ぎに行き、秋が来て、結果が発表された。
勿論、落選したし、100円にもならなかった。
しかし、ここで、私の文章の価値を実感した。
1万字で10円。
それは、ショックより、妙な安心感をくれた。
私の文章は、お金になる。それが1万字で10円だとしても、書けば金になる文章だと分かったからだ。
そして、私は、夕日のなか、深いカタルシスに身をおきながら思った。
働こう。
例え、貢いだと言われようと、1万字で10円。これで2万円を稼ぐより、体を動かすか、スーパーのポイントをためた方が早い(T-T)
そうして、私は、中断していた帽子を冬じゅう編んでいた。
春には雄二郎は帰ってきたけど、コロナは治まる気配はない。
そして、気がつけばオリンピックが開会し、疎遠だった雄二郎からメールがきた。
題 こんにちは
本文
去年のところから呼ばれたから、出稼ぎに行ってくる。
今度こそ、名古屋に行きたいね。
えっ…(°∇°;)
私は、しばらくメールを見つめていた。
雄二郎のメールの前には、去年、投稿したサイトから、公募のお知らせが届いていた。
アブラゼミの鳴き声に、既視感を感じる。
夏が来る。
また、新しい夏が。
そして、春には……名古屋の予感が…
読んでくれてありがとう。
1年経ってしまったので、2章を終わらせて、3章を書きます。
ファンタジー、難しいです。
しかし、新キャラの登場で、書いてる私はすこし楽しいです。
今度こそ、ファンタジーを書いて、名古屋へ行けるのか?なあ。
1万字10円に直しました(//∇//)
10倍ポイントupで10円相当だったので、普通なら1円?とか、考えていたのでつい、作品に出てしまいました。が、流石に1円は悲しいので、10円にしておきます。
この物語はフィクションです。ので、気にしないでください。




