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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
92/111

アメフラシ

パソコンのキーボードを叩く。

思い出が文字となってよみがえる。

雄二郎が小銭をぶちまけてフリマに来ない事を決め、私達は本来の昔の女子会のようなフリマを楽しもうとしていた…

雄二郎は、奈津子がたまたまつれ来たイレギュラーな参加者なのだ。

だから、女だけで集まり、フリマをする事に抵抗もないし、雄二郎がいなくなる事も誰も気にしてなかった。

雄二郎が消えてからのはじめのフリマが雨で中止になる頃までは。


しかし、それが3週間続くと、話は変わってくる。

日曜にファミレスに集まって私達はお茶をしながら話をする。

その時、奈津子がこんな話を始めたのだ。


「やっぱり、あの噂、本当だったのかな?」


オカルトの枕台詞である。

今時だと、ホラーフラグとか言うのかしら?

嫌な予感に綾子が早口で奈津子にその理由を追求する。

「なによ?それ。」

「いや…雄二郎、あだ名がアメフラシって言うんだよ。」

「アメフラシ?でも、今まで、雨なんて降ったこと無かったじゃない。悪口にしては酷いわよ。」

私は奈津子をにらむ。

雄二郎は、大きな手を不器用に動かしながら、ビーズを八の字編みをして指輪を作っていた。確かに、小銭をぶん投げたのは悪いけど、妖怪みたいな悪口は良くないと思った。

そんな私の抗議を奈津子は黙って聞いていた。

そして、くくっ…と笑い、質問で返してきた。

「アメフラシ…検索してみ?」


はっ(゜ロ゜)?


私は、少し不機嫌にスマホを取り出して検索した。

アメフラシ

別名ウミウシ。

無楯類…むたてるい?むじゅんるい(?_?)の軟体生物…

どうも海に住む、殻の無いカタツムリのような生物らしい。


「これがどうしたの?」

私はナメクジの大きくしたような生物の写真を奈津子に見せる。

「あれ?アメフラシ…しらない?海にいるやつなんだけど、これくらい?少し大きめのサバくらいの大きさのナメクジみたいなやつ。」

奈津子は嬉しそうに不気味な生物について語る。

「知らないわ。」

私は、嫌な顔で言った。

「あ、私は、知ってるよ。苛めると紫の液をプシュッてだすやつでしょ?」

綾子は楽しそうに笑う。

「そう、あれを苛めると雨が降るっていわれてる。」「え?そんなの都市伝説でしょ?」

綾子が非難するように奈津子を見、奈津子はため息をつく。

「そう、都市伝説…みたいなものだけど、雄二郎もそんな感じだったよ。

アイツ、不器用だから、色々叱られて、真っ先に戦力外通告されるんだけど、不思議な事に、アイツが苛められて居なくなると雨が続くんだよね(-_-)

で、ついたあだ名がアメフラシ。」

奈津子は皮肉を込めて笑う。

「でも、いじめてないわよ。私は。アメリカンクッキーを袋一杯あげたのに、雨を降らせるなんて、やりきれないわよ。」

私は不満を奈津子にぶつける。

「それは、私も一緒だよ。大体、遅刻したのは奴なんだから。

まあ、怒らずに。噂なんだし……。」

奈津子は慌てるように私をなだめる。

「じゃあ、ゆーちゃん呼んじゃえば、来週、晴れる?

だったら、私が呼ぼうかな?こんな雨ばっかりじゃ、夏休みが終わっちゃうし…。

うち、商売してるから、遠出できないけど、フリマでごまかせてたけど、さすがに子供たちも、3週間は我慢の限界だわ。」

綾子がそう言って、いきなり雄二郎にメールする。

なんだか、会いづらい私と奈津子は、綾子の行動力にギョッとする。


が、雄二郎から返信はなく、イラついた綾子は雄二郎に電話をかけ始める。

「ちょ、ちょっと…」

心の準備が出来ない奈津子は慌てたが、心配はいらなかった。

しばらくして、綾子が悔しそうにスマホの受話器のアイコンを消した。


「全く…電話くらいでればいいのに。」

綾子は不満そうにスマホを睨み、私はそんな綾子を呆れてみていた。


とはいえ、このままと言うのも良くないので、私も一応、メールしてみたが、やはり、返信は来なかった。


そうして、次の週の水曜日の天気予報が台風なのを見て、都市伝説と化した男に会うことを決めた。


雄二郎の天候スキルはともあれ、長い付き合いの私達にメール一つくれずに消えるなんて、大人としてどうかと思ったからだ。


その日、私は、雄二郎が職安で求職したあとに立ち寄るスーパーへ買い物に行くことにした。


田舎の良いところは、こんな時、行動を予測できると言うことだろう。


スーパーの水曜バザールで、3時くらいに焼きたてパンの100円市がある。

雄二郎は、ここのジャムパンが好物なのだ。


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