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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
89/111

トレンディドラマは突然に…4

それは、デザートのアップルパイと共にテーブルを飾ることになった。


奈津子はコーヒーを一口含み、そして、何かを思い出したかのような、甘く優しい笑顔で私を見た。


「そう言えば、クッキーありがとね(^_-)


美味しかったよ、壊れてなかったし。」

と、ククッと笑う。

「壊れる?私、いいやつを選んでいれたのよ?」

私は、不可思議な奈津子の台詞にモヤッとした。

私は、ちゃんと、いいクッキーを奈津子に渡し、壊れたものを雄二郎に渡したはずだった。

雄二郎は、形より量が必要で、「いいよ、壊れていても味は同じだから。」と、ホクホクしながらクッキーを私から受け取っていた。


!(@_@)忘れてた。


私は雄二郎であのフリマの夜を思い出していた。


そう、私たちと別れてから、奈津子と雄二郎に何があったのか?それが知りたかったのよ。


「うん。ありがとう。私が言いたいのは、スミレの事じゃないんだ。」

奈津子の説明が、もどかしく感じる。


そう、分かるわ、雄二郎でしょ?


「で、何があったの?」

私は、コーヒーを含みながら、冷静に見えるように気を引き締める。

「夕方、うちの事務所の方に雄二郎がフラりとやって来て、フリマの報告をしてくれたんだ。」

奈津子は笑いの含まれた渋い顔で私を見た。


なんか、面白い…と、いうか、衝撃的な何かがあったに違いない。


昔から、こういう顔の奈津子が話す物語を思い出し、なんだかワクワクしてきた。

「何があったのよぅ。」

私はジラされてイライラしてくる。

奈津子はそんな私にため息をつく。

「そんなに期待されても…困るけど、雄二郎は事務所のカウンターにいた私に、その日のフリマの話をしたわ。

指輪が7つ売れたとか、天気が良かったとか。」

と、遠くを見る目で言ったかと思うと、急に奈津子は思い出し笑いをする。

「なによ〜」

私は不服な気持ちを全面に膨れっ面をする。

「ごめん、なんか…説明が難しいんだけど、雄二郎(やつ)、話しながら小銭を入れた巾着をカウンターに置いたんだ。」

「うん。」

私は言いづらそうな奈津子を励ますように相槌をうつ。

「そして、少し険しい顔で捲し立てるように、いや、あれは…青年の主張をする…みたいな感じなんかな。

まあ、そんな感じで私を諭すように雄二郎は話しはじめたのよ。」


奈津子の説明とやや、ものまねの入った雄二郎の台詞に状況が浮かぶ。


お父さんが亡くなってから、事務所は奈津子のアトリエみたいなものになっていた。

だから奈津子は、フリマのあった日曜は、外仕事を終わらせて、資料整理によったのだそうだ。


電気がついていたので、雄二郎は事務所に向かう。

で、その日の出来事を奈津子に、はじめはボツボツと、エンジンがかかると、青年の主張をするように、カウンターから体をを乗り出して奈津子に話しはじめる。


「確かに、オレは不器用だよ?場所とりもうまく出来ないし、田村さんのように器用に指輪を20個とか作れないよ?

でも、オレだってやれば出来るんだ。

7つじゃ、田村さんの半分も売れてないけれど、でもっ。


オレだって、やれば出来るんだっ!! 」

と、日頃、おとなしい雄二郎はシャウトした。


shoutしながら巾着を奈津子の方にぶん投げて、カウンターに小銭をぶちまけた。


ビックリして雄二郎を見上げる奈津子。


その驚いた顔に、自分の力を再認識してイイ気になる雄二郎。


雄二郎はつづける。


「確かに、オレはバカだし、遅刻したけど、悪いとも思ったんだ。だから、昼飯を奢ってやろうと思ってメールしたんだっ!!

なんだよっ、縦村さんと昼飯にいってるじゃないか!

田村さんは知らなかっただろうけど、オレは、あのとき、駅前にいて、喫茶店から二人で出てくるのを見たんだからなっ。


オレ、縦村さんに誘われた事ないんだからな。」

と、雄二郎が叫び、状況を理解できない奈津子は話しかけようと口を開くと、

あれだけ勢いの良かった雄二郎がビビりながら後ろに下がる。そして、カウンターに散った小銭を丁寧に集めはじめる。


集めるなら、投げなきゃいいじゃない。


と、奈津子は思ったようだが、びびりはじめた雄二郎を驚かさないように沈黙した。


「850えんくらいあると思う。それと、これが売れ残りの指輪。」

雄二郎はぶっきらぼうに言いながら、奈津子に彼女の作った指輪の残りをカウンターにおく。

「別に、使って良かったのに。」

奈津子は自分の代わりにフリマに出た雄二郎にハンバーガーでも食べろと言っていた。

が、雄二郎は、その台詞を無視して、私のクッキーを巾着とは全く違う、バカ丁寧な感じでカウンターにおいた。


しばらく、沈黙があり、全ての作業が終わると、雄二郎は奈津子を見て、任侠映画の捨てぜりふのように、低く物静かな感じでこう言った。


「オレだって男だっ。」





「で、さ、その男、雄二郎、私が話す前に急いでドアまで戻ってさ、それで、戸を開けながら、

『わかったかっ。』

って、叫んで逃げるように帰ったんだよね…(-_-;)


フリマのお金だから、10円玉が多くて拾うのたいへんだったし、

男はわかったけど、何がしたかったのか、分からなかったわ。


でも…ほとんど外食しない雄二郎と、駅前の喫茶店で偶然であうなんて…そんなドラマのような事、あるのね。


あれから、なんか、昔のドラマの主題歌が聞きたくなってさ。


なんか、あったよね?そんなドラマ。」

奈津子は難しそうな顔で私に聞いた。

「うーん。喫茶店は知らないけど、シティホテルとか、マンションから出てくるのを見かける話はあったわね。」

私も昔のドラマが頭を回る。


文章だけならそんなドラマと同じく絵になるスチュエーションに身をおいた奈津子と雄二郎に笑いが込み上げる。


私と奈津子は、なんだかそこで笑いあった。

で、落ち着いたところで奈津子は言った。


「雄二郎、もう、フリマしないってメールしてきたよ。」


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